自分の言葉で説明しながら覚えると、記憶に残りやすいのはなぜ?「自己説明」と「生成効果」の研究

教科書をそのまま読み返すより、「つまりこういうこと」と自分の言葉で言い直したほうが覚えている。そう感じたことはないでしょうか。研究では、自分で答えや説明を作ると、読むだけより記憶に残りやすいことが、何十年も確かめられてきました。理由の1つは、自分で作るときに頭をより多く使うことです。ただし、いつでも効くわけではないこともわかってきています。
3行でわかる
- 自分で答えを作った情報は、読んだだけの情報より覚えやすくなります(生成効果)。86研究のまとめでは、差は標準偏差の約0.4倍でした。
- 大学生の実験では、自分で答えを作るときは瞳孔が大きく開き、頭をより多く使っていました。この「頭の使い方の差」が、記憶の差の一部を説明していました。
- 医学生47人の研究では、自分の言葉で説明しながら読むと、半年後の成績が20%から29%に上がりました。ただし、自分にテストするほうがさらに効果的でした。
01 悩みの正体言い換えると覚えやすいのはなぜ?
自分の言葉で言い換えるとき、人は書いてある文をなぞるのではなく、答えを自分で作り出しています。自分で作り出した情報は、読んだだけの情報より記憶に残りやすいことが、多くの実験で確かめられています。
文章を読み返しているとき、頭はあまり働いていません。目で文字を追うだけでも、なんとなくわかった気になれるからです。この「わかったつもり」の仕組みは読んだ本の内容を覚えていない理由の記事にまとめています。
一方、自分の言葉で言い直そうとすると、頭の中で文を組み立て直す必要があります。心理学では、自分で作り出した情報のほうがよく覚えている現象を生成効果と呼びます。1978年に報告されて以来、何度も再現されてきました。
学んでいる内容を、自分に向けて説明しながら理解しようとすることを自己説明と呼びます。自己説明は、この生成効果を勉強に生かしたやり方の1つと考えられます。
02 科学的にわかっていること自分で作ると覚えやすいのは、本当?
本当です。86研究をまとめた分析で、自分で作った情報は読んだだけの情報より覚えやすいと確かめられています。理由の一部は、作るときに頭をより多く使うことだと、瞳孔を測った実験が示しています。
Bertschら(2007)[1]
「同じ意味の言葉を自分で考える」など、答えを自分で作り出す課題と、答えを読むだけの課題を比べた研究をまとめました。86研究・445の効果量を合わせた結果、自分で作ったほうが記憶に残り、差は0.40でした。論文は「標準偏差の半分近い」差と表現しています。
対象: 86研究のメタ分析 / 限界: 研究の条件による効果の差が大きく、どの条件でも同じだけ効くわけではない。単語など短い材料の実験が中心。
GrudzienとUnsworth(2026)[2]
アメリカの大学生が、2つの単語の組み合わせを覚えました。後の単語をそのまま読む場合と、ヒントから自分で考えて答える場合を比べています。同じ人が両方を行った実験では、自分で考えた単語の正答率は54%で、読んだ単語の49%より高くなりました。自分で考えるときは瞳孔が大きく開いており、頭をより多く使っていたことがわかりました。この頭の使い方の差は、記憶の差の一部を説明していました。
対象: 4つの実験に参加した大学生219人(平均19歳) / 限界: 「読むだけ」の人と「考えるだけ」の人を別々のグループにした実験(各41人)では、正答率はどちらも56%で差が出なかった。
Larsenら(2013)[3]
医学部1年生が、授業の後の4週間、毎週同じ学び方で4つのテーマを復習しました。半年後のテストで、まとめシートを読むだけの学び方は20%でした。読みながら自分で説明を考えた学び方は29%に上がりました。ただし、自分にテストする学び方は36%、テストと説明を組み合わせると40%で、さらに高い成績でした。
対象: 医学部1年生47人 / 限界: 1つの医学部での研究。テーマによって効き方に違いがあった。
McEldoonら(2013)、Rittle-JohnsonとLoehr(2017)、KuhnとKatz(2009)[4][5][6]
小学2〜4年生69人の算数の研究では、説明を促すと、何もしない場合より理解が深まりました。ただし、同じ時間で練習問題を多く解いた場合と比べると、差は小さく、一部の項目でしか見られませんでした。説明の研究をまとめた論文は、説明に注意が向くぶん、ほかの大事な点への注意が減ることがあると指摘しています。4年生が8回の授業で原因を調べる練習をした研究では、説明を考えなかったグループのほうが、別の課題でよい成績でした。
対象: 子どもを対象にした研究と、研究のまとめ / 限界: 大人の勉強にそのまま当てはまるかは、まだわかっていない。
| 学び方 | 半年後の成績 | 頭の使い方 |
|---|---|---|
| まとめシートを読むだけ | 20% | 少ない |
| 読みながら自分の言葉で説明する | 29% | 説明を自分で作る |
| 自分にテストする | 36% | 答えを思い出して作る |
| テスト+説明 | 40% | 思い出して、説明も作る |
この表は、医学生47人の研究[3]の結果を、このサイトで「頭の使い方」の観点から並べたものです。自分で作り出す量が多い学び方ほど、半年後の成績が高い傾向がありました。
03 今日からできる小さな一歩自分の言葉で覚えるには、どうする?
1段落読んだら本から目を離し、「つまり何が言いたいか」を自分の言葉で1〜2文にします。そのあと、何も見ずに思い出すテストを組み合わせると、研究の結果に合ったやり方になります。
1段落ごとに「つまり」を1文で書く
本の文をそのまま写さず、自分の言葉に言い換えます。言い換えられない所は、まだ理解できていない所です。
所要 1段落につき1分
「なぜそうなるのか」を自分に説明する
結果だけでなく、理由を自分に説明します。ただし、細かい点の暗記が目的なら、説明ばかりに時間を使わないようにします[5]。
所要 3〜5分
04 続けるためのコツ説明しても覚えられないときは、どう考える?
自己説明はすべての勉強に効く万能のやり方ではありません。時間がかかるわりに効果が小さい場面もあるので、理解したい所に絞り、暗記には思い出す練習を組み合わせるのが現実的です。
- うまく言い換えられないのは失敗ではない: 言葉に詰まった所が、理解の穴の場所です。そこだけ読み直せば十分です。
- 時間がないときは練習問題を優先してもよい: 同じ時間を練習問題に使った場合と比べると、説明の上乗せは小さめでした[4]。
- 人に教えるつもりで説明するのも1つの手: 人に説明する学び方は教える効果の記事にまとめています。
05よくある質問
自分の言葉で言い換えると、なぜ覚えやすい?
答えを自分で作り出すと、読むだけより記憶に残りやすいからです(生成効果)。86研究をまとめた分析で確かめられています。作るときに頭をより多く使うことが、理由の一部だと考えられています。
自己説明とは?
学んでいる内容を、自分に向けて説明しながら理解しようとする学び方です。「つまり何が言いたいか」「なぜそうなるのか」を自分の言葉にします。
自己説明と自分にテストする勉強法は、どちらがいい?
医学生47人の研究では、半年後の成績は、説明しながら読む学び方が29%、自分にテストする学び方が36%でした。テストと説明を組み合わせると40%で最も高くなりました。
出典
- Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A. (2007). The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35(2), 201-210. https://doi.org/10.3758/BF03193441
- Grudzien, A. M., & Unsworth, N. (2026). Investigating a mental effort explanation of the generation effect using pupillometry. Memory & Cognition, 54(3), 980-996. https://doi.org/10.3758/s13421-025-01791-0
- Larsen, D. P., Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2013). Comparative effects of test-enhanced learning and self-explanation on long-term retention. Medical Education, 47(7), 674-682. https://doi.org/10.1111/medu.12141
- McEldoon, K. L., Durkin, K. L., & Rittle-Johnson, B. (2013). Is self-explanation worth the time? A comparison to additional practice. British Journal of Educational Psychology, 83(4), 615-632. https://doi.org/10.1111/j.2044-8279.2012.02083.x
- Rittle-Johnson, B., & Loehr, A. M. (2017). Eliciting explanations: Constraints on when self-explanation aids learning. Psychonomic Bulletin & Review, 24(5), 1501-1510. https://doi.org/10.3758/s13423-016-1079-5
- Kuhn, D., & Katz, J. (2009). Are self-explanations always beneficial? Journal of Experimental Child Psychology, 103(3), 386-394. https://doi.org/10.1016/j.jecp.2009.03.003


