記憶・学習

覚えたことを人に説明すると記憶に残るのか。「教える効果」を調べた研究

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黒板の前で説明している様子
Photo: Yulia Meshkova / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「人に説明できて、はじめて本当にわかったことになる」とはよく言われます。この感覚は、思い込みではなく研究でも支持されています。実際には誰にも教えていなくても、「あとで人に教える」と思って学ぶだけで、記憶の整理のされ方が変わることが実験でわかっています。どんな形の「教える」が効果的なのかを、研究から見ていきます。

3行でわかる

  1. 実験では、「あとで人に教える」と思って文章を学んだ人は、「あとでテストされる」と思って学んだ人より、内容をまとまりよく思い出せていた。実際には誰も教えていない。
  2. 「教えるつもり学習」を集めた28件の比較の分析では、教えるとだけ知らされた場合より、実際に対話形式で教える場面を想定した場合の方が、効果が大きい傾向だった。
  3. 教材を作るという形の学習だけに絞った23件・62比較の分析では、効果は確認されたものの小さめだった。「教える」の中でもやり方によって効果の大きさは変わる。

01 悩みの正体「人に教えると覚えられる」は本当?

複数の研究で支持されています。ただし効果の大きさは一定ではなく、「教えるつもりで覚える」だけの場合と、実際に対話しながら教える場合とでは差があります。

勉強したことを友人や家族に説明しようとして、うまく言葉にできず「実はちゃんとわかっていなかった」と気づいた経験がある人は多いはずです。これは、読んで「わかったつもり」になるのと、人に説明できるくらい理解するのとでは、頭の使い方が違うために起きます。

心理学ではこの現象を「教える効果」や「教えるつもり学習」と呼び、実際に教える機会がなくても、「教えるつもりで学ぶ」というだけで効果が出るのかが調べられてきました。自分で思い出そうとするだけで記憶が強まる「テスト効果」と近い仕組みが働いていると考えられています。

02 科学的にわかっていること研究ではどこまで確かめられている?

「教えるつもりで学ぶ」だけでも記憶の整理に効果があり、実際に対話形式で教えると、さらに効果が大きくなる傾向が報告されています。

Nestojkoら(2014)[1]

2つの実験で、文章を「あとでテストされる」と思って学ぶ条件と、「あとで人に教える」と思って学ぶ条件を比べた。実際には全員がテストを受けただけで、誰も教えていない。結果、教えるつもりで学んだ人の方が、文章の内容をより完全に、まとまりよく思い出せていた(実験1)。全体の正答数も多く、とくに文章の要点についての質問で差が大きかった(実験2)。

対象: 文章を学習した大学生のグループを複数条件に分けた実験 / 限界: 実際に人に教えた場合の効果ではなく、「教えるつもり」という心構えだけの効果を調べたもの。

Kobayashi(2018、2019年の論文で再分析)[2][3]

「教えるつもりで学ぶ」研究と、学ぶだけ(テストのため)の研究を比べた28件の比較をまとめた分析。教える相手との対話を伴わない「知らされるだけ」の教えるつもり条件(18件)では効果量g=0.27、実際に対話形式で教える場面を想定した条件(10件)ではg=0.50と、対話的であるほど効果が大きい傾向が示された。

対象: 「教えるつもり学習」に関する28件の比較研究 / 限界: 研究ごとに「教える」の条件がかなり違い、まとめて平均すると効果が見えにくくなるという指摘がある。

Ribosa & Duran(Kobayashi, 2023の論文で紹介)[4]

口頭での説明ではなく、「教材を作る」という形の学習だけに絞った23件・62比較の分析。効果量はg=0.17(95%信頼区間0.04〜0.31)で、ゼロより大きいとはいえ小さい効果だった。この分析は条件の異なる研究を混ぜている可能性があるとの指摘も紹介されている。

対象: 教材作成を伴う学習に関する23件の研究・62比較 / 限界: 効果は小さく、「教えるつもりで学ぶ」研究ほど明確な効果ではない。

03 今日からできる小さな一歩今日から何を試せばいい?

覚えたい内容を「あとで誰かに説明する」つもりで読むだけでも効果があります。実際に声に出して説明できると、さらに効果が期待できます。

1

「あとで人に教える」つもりで読む

勉強を始める前に「この内容をあとで誰かに説明する」と心の中で決めるだけです。やり方や時間は今までと変えなくてかまいません。

所要 0分(心構えだけ)

2

家族や友人に、実際に声に出して説明してみる

相手は専門家でなくてかまいません。「これってこういうことだよね」と自分の言葉で話してみると、説明に詰まった所が理解の穴だとわかります。

所要 5〜10分

3

説明の流れをメモにしてみる

一問一答の暗記カードではなく、「まず〇〇、だから△△になる」という説明の順番をメモに書き出します。全体のつながりを意識した復習になります。

所要 10〜15分

04 続けるためのコツ教える相手がいないときはどうする?

説明する相手が見つからなくても、「なぜ」「どうやって」を自分の言葉で声に出すだけで、同じような効果が期待できます。

05よくある質問

実際に人に教えなくても効果はあるの?

あります。実験では、実際には誰にも教えていなくても、「あとで教える」と思って学んだ人の方が、テストのためだけに学んだ人より、文章の要点をまとまりよく思い出せていました。

教材を作るのと、口で説明するのはどちらが効果的?

はっきりとした優劣はまだわかっていません。教材を作る研究だけを集めた分析では効果は小さめでした。一方、教えるつもりで学ぶ研究や、実際に対話形式で教える研究では、より大きな効果が報告されています。

誰に説明すればいい?家族や一人でもいい?

研究の多くは、相手が専門家である必要はありません。家族や友人に説明する、架空の生徒を想定して声に出すだけでも、読み返すだけの勉強より記憶の整理に役立つ可能性があります。

出典

  1. Nestojko, J. F., Bui, D. C., Kornell, N., & Bjork, E. L. (2014). Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages. Memory & Cognition, 42(7), 1038-1048. https://doi.org/10.3758/s13421-014-0416-z
  2. Kobayashi, K. (2018). Learning by preparing-to-teach and teaching: A meta-analysis. Japanese Psychological Research. https://doi.org/10.1111/jpr.12221
  3. Kobayashi, K. (2019). Interactivity: A Potential Determinant of Learning by Preparing to Teach and Teaching. Frontiers in Psychology, 9, 2755. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.02755
  4. Kobayashi, K. (2023). Learning by creating teaching materials: Conceptual problems and potential solutions(Ribosa & Duranのメタ分析を紹介). Frontiers in Psychology, 14, 1095285. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1095285