集中力

画面だと長い文章が頭に入らないときは? 紙と画面の読み比べ研究でわかった、集中して読むやり方

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夜の本と紙の店のショーウインドウ
Photo: Jens Cederskjold / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

PDFやタブレットで資料を読んでいると、目は文字を追っているのに中身が残らない。紙なら読めるのに、と感じる人は少なくありません。研究のまとめでは、説明文を時間に追われて読むとき、画面は紙より理解が少し下がりやすいことがわかっています。一方で、時間に余裕があるときは差が見られなかった実験もあります。紙に印刷する場面の選び方と、画面のまま集中して読むやり方を紹介します。

3行でわかる

  1. 画面で読むと紙より理解が下がる差は、全体では小さい。説明文や時間制限のある読み方で目立ち、物語ではほぼ差がなかった。
  2. 大学生140人の実験では、時間に追われると紙で読む人は上の空が減ったが、画面で読む人は減らず、理解も下がった。時間に余裕があれば差はなかった。
  3. 大事な説明文は紙で読む。画面なら時間に余裕を取り、通知やテレビ・音楽を止め、読み終えて少し時間をおいてから要点を書き出す。

01 悩みの正体画面で読むと、頭に入りにくいのはなぜ?

画面に向かうと、ざっと拾い読みする浅い読み方に流れやすいからだと考えられています。特に急いでいるとき、画面では集中を取り戻しにくいことが実験で示されています。

紙より画面のほうが内容の理解が下がる現象を、研究者は「画面の劣位(スクリーン・インフェリオリティ)」と呼んでいます[1][4]。理由として、主に2つの説が調べられています[1]。

ただし、どんな文章でも画面が不利というわけではありません。どんな条件で差が出るかを知ると、紙に印刷する場面を絞れます。

02 科学的にわかっていること紙と画面で、理解はどれくらい違う?

差は小さく、条件しだいです。説明文を読むときや時間制限があるときに紙が有利になりやすく、物語や時間に余裕がある読み方では、ほとんど差がありませんでした。

140人

約3,000語の科学記事を、雑誌(紙)かPDF(画面)で読んだスペインの大学生の人数。時間に追われた条件でだけ、画面の人の理解が下がった[1]

Delgado & Salmerón(2021)[1]

大学生140人が、人の学習と人工知能についての3,010語の記事を読みました。紙の雑誌かパソコンのPDFで読み、自分のペースか、時間に追われる条件(16分30秒)に分かれました。時間に追われると、紙の人は上の空になる割合が減りましたが、画面の人は減りませんでした。その結果、時間に追われた画面の組だけ、理解のテストの点が低くなりました。自分のペースで読んだ場合は、紙と画面で差がありませんでした。自分の理解をどれだけ正確に見積もれるかは、どの組でも差がありませんでした。

対象: スペインの大学生140人(平均20.5歳) / 限界: 1本の長い説明文と、机の上のパソコン画面だけで調べています。読書の途中で「いま何を考えていたか」を尋ねる方法が、読む妨げになった可能性もあります。

Fontaineら(2021)[2]

医療系の学生や研修医を対象に、紙とデジタルで読んだ文章の理解を比べた10件の研究をまとめました。全体では、紙がわずかに上でしたが、統計的な差はありませんでした(SMD=−0.08)。ただ、自分の専門分野に関わる文章に限ると、紙で読んだほうが理解が高くなりました(SMD=−0.36)。

対象: 医療系の学生など817人(10件の研究) / 限界: 研究ごとの偏りのリスクがあり、著者らは証拠の質を「低い」と評価しています。

Shen(2025)[3]

デジタル環境で読んでいるときの「気をそらすもの」が理解に与える影響を、32件の研究(124の実験)でまとめました。気をそらすものがあると、理解の点ははっきり下がりました(g=−0.64)。下がり方が大きかったのは、テレビと音楽でした(どちらもg=−0.82)。紙かパソコンかによる違いは、統計的にははっきりしませんでした。

対象: 小学生から大人までの32件の研究 / 限界: 1人の著者によるまとめで、研究ごとの結果のばらつきが大きくなっています。

Wangら(2023)[4]

中国の大学生に推理の問題を紙か画面で解いてもらう実験を2回行いました。選択式でも記述式でも、画面のほうが正答の成績が低くなりました。選択式では、画面の人のほうが自分の答えに自信を持ちすぎていました。

対象: 大学生34人と35人(2つの実験) / 限界: 文章の読解ではなく推理の問題で、人数も少ない実験です。

Delgado & Salmerón(2021)は、それまでの2つのメタ分析(多くの研究をまとめた分析)の結果を、次のように紹介しています[1]。数字はマイナスが大きいほど、画面が紙より不利だったことを表します。

条件画面の不利数字
全体小さいg=−0.21、−0.25[1]
説明文(教科書・資料など)やや大きいg=−0.27、−0.32[1]
物語(小説など)ほぼなしg=0.01、−0.04[1]
時間制限のある読み方はっきり不利g=−0.26[1]

03 今日からできる小さな一歩画面の文章を、集中して読むには?

大事な説明文は紙で読み、画面なら時間に余裕を取って読みます。通知やテレビ・音楽を止め、読み終えて少し時間をおいてから要点を書き出すと、浅い読み方を防ぎやすくなります。

1

「あとで使う説明文」だけ紙に印刷する

差が出やすいのは、教科書や仕事の資料のような説明文でした[1]。自分の専門に関わる文章でも、紙のほうが理解が高い結果があります[2]。小説や軽い記事は、画面のままで構いません。

所要 2分

2

画面で読むなら、時間に余裕のある枠を取る

自分のペースで読んだときは、紙と画面で差がありませんでした[1]。締め切り直前の「すき間」で読むのをやめ、読むための時間を予定に入れます。

所要 1分(予定を決める)

3

通知を切り、テレビと音楽を止める

気をそらすものがあると理解ははっきり下がり、テレビと音楽で特に大きく下がっていました[3]。ほかのタブやアプリも閉じておきます。

所要 1分

4

読み終えて少し時間をおき、キーワードを書き出す

Wangら(2023)が紹介しているLautermanとAckermanの研究(2014年)では、読み終えて時間をおいてから要点のキーワードを書かせると、画面の不利を埋める方法として示されました[4]。5つほど、紙かメモに書きます。

所要 3分

04 続けるためのコツ画面で読むとき、気をつけることは?

「わかったつもり」になりやすい点に気をつけます。一方で差は小さいので、すべてを紙にする必要はありません。大事な文章と急ぐ場面に絞って工夫すれば十分です。

05よくある質問

電子書籍やタブレットでも、紙より頭に入りにくいですか?

はっきりとはわかっていません。大学生140人の実験は、机の上のパソコン画面でPDFを読む条件でした。著者らは、手に持てるタブレットなら結果が変わるかもしれないとして、タブレットでの確認が必要だと書いています(Delgado & Salmerón、2021)。気をそらすものの影響を調べたまとめでも、紙かパソコンかによる違いは統計的にははっきりしませんでした(Shen、2025)。

時間がないときは、画面でざっと読むしかありませんか?

時間に追われると、画面で読む人は上の空が減らず、理解も下がりました(Delgado & Salmerón、2021)。大事な資料なら、全部を急いで読むより、必要な部分を決めて紙で読むほうが向いています。画面で読むなら、通知とテレビ・音楽を止め、読み終えたら要点を書き出してください。

紙に印刷すれば、それだけで覚えられますか?

いいえ。紙と画面の差は全体では小さく、医療系の学生10件の研究のまとめでは、全体で統計的な差がありませんでした(Fontaineら、2021)。覚えるには、読み返すより何も見ずに思い出す練習が向いています。詳しくは思い出す練習(テスト効果)の研究で紹介しています。

出典

  1. Delgado, P., & Salmerón, L. (2021). The inattentive on-screen reading: Reading medium affects attention and reading comprehension under time pressure. Learning and Instruction, 71, 101396. https://doi.org/10.1016/j.learninstruc.2020.101396
  2. Fontaine, G., Zagury-Orly, I., Maheu-Cadotte, M. A., Lapierre, A., Thibodeau-Jarry, N., de Denus, S., Lordkipanidzé, M., Dupont, P., & Lavoie, P. (2021). A meta-analysis of the effect of paper versus digital reading on reading comprehension in health professional education. American Journal of Pharmaceutical Education, 85(10), 8525. https://doi.org/10.5688/ajpe8525
  3. Shen, Y. (2025). Distractions in digital reading: A meta-analysis of attentional interference effects. Frontiers in Psychology, 16, 1671214. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1671214
  4. Wang, X., Chen, L., Liu, X., Wang, C., Zhang, Z., & Ye, Q. (2023). The screen inferiority depends on test format in reasoning and meta-reasoning tasks. Frontiers in Psychology, 14, 1067577. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1067577