ホワイトノイズで集中できるのか。「人によって逆になる」研究

カフェのざわめきや、雨の音のような「ザー」という音を流すと集中できる。ホワイトノイズやピンクノイズを作業用に使う人が増えています。研究を見ると、ホワイトノイズで集中しやすくなる人がいる一方で、かえって成績が下がる人もいることがわかってきました。
3行でわかる
- ADHDやその傾向がある若い人を対象にした13件・335人の研究をまとめた分析では、ホワイトノイズやピンクノイズで課題の成績が少し上がった(効果量 g=0.249)。一方、ADHDでない人では成績が下がっていた。
- 中等学校の生徒51人の実験では、ホワイトノイズで、注意がそれやすい生徒の記憶の成績は上がり、注意が続く生徒の成績は下がった。
- 一方、健康な成人80人の実験では、ホワイトノイズを聞きながら新しい単語を覚えた人の方が、思い出す成績が良かった。
01「ちょうどいい雑音」は、人によって違う
ホワイトノイズの効果は、聞く人の「もともとの注意の状態」によって変わります。注意がそれやすい人には役立つことがあり、そうでない人には邪魔になることがあります。
ホワイトノイズは、すべての高さの音を同じくらい含んだ「ザー」という音です。ピンクノイズやブラウンノイズは低い音が多く、雨や滝の音のように聞こえます。
研究者は、脳の覚醒にはちょうどよいレベルがあり、適度な雑音がそのレベルに近づける可能性があると考えています。脳の中のドーパミンという物質が少ない人ほど、より多くの雑音が必要だという考え方です。
そのため、もともと注意がそれやすい人には雑音がプラスに働き、注意が保てている人にはマイナスに働く、という逆の結果が出ると考えられています。
02科学的にわかっていること
ホワイトノイズは、注意がそれやすい人の成績を少し上げる一方、そうでない人の成績は下げていました。ただし、健康な成人の単語学習で効果が見られた研究もあります。
Niggら(2024)[1]
ADHDやその傾向がある子どもや大学生を対象にした13件の研究(335人)をまとめた。ホワイトノイズやピンクノイズは、注意や実行機能の課題の成績を少し上げていた(g=0.249)。一方、ADHDでない人では、成績が下がっていた。
対象: 13件の研究、335人 / 限界: 実験室での課題が中心で、効果は小さい。適切な音量もまだわかっていない。
Söderlundら(2007)[2]
ADHDの子どもと、そうでない子どもに、ホワイトノイズありとなしで記憶の課題をしてもらった。ADHDの子どもは雑音で成績が上がり、そうでない子どもは成績が下がった。
対象: ADHDの子どもと、そうでない子ども / 限界: 子どもを対象にした小規模な実験。
Söderlundら(2010)[3]
中等学校の生徒51人に、ホワイトノイズ(78デシベル)を流す条件と流さない条件で、文を覚えて思い出す課題をしてもらった。注意がそれやすい生徒は雑音で成績が上がり、注意が続く生徒は成績が下がった。その結果、両者の差がなくなった。
対象: 中等学校の生徒51人 / 限界: 人数が少なく、1つの音量でしか調べていない。
Angwinら(2017)[4]
健康な若い成人80人に、20個の見慣れない物の名前を覚えてもらった。半分はホワイトノイズを聞きながら、半分は静かな中で覚えた。ホワイトノイズを聞いた人の方が、時間とともに思い出す成績が良くなった。この効果は、もともとの注意の力とは関係がなかった。
対象: 健康な若い成人80人 / 限界: 単語を覚える1回の学習で、ほかの作業に当てはまるかはわからない。
03今日からできる小さな一歩
ホワイトノイズが自分に合うかは、試してみないとわかりません。小さめの音量で、ありとなしを比べてみます。
小さめの音量で試す
ホワイトノイズやピンクノイズを、会話の邪魔にならない程度の小さな音量で流します。耳を守るため、大きな音は避けます。
所要 1分
「あり」と「なし」で作業のはかどりを比べる
同じような作業を、音ありの日と音なしの日でやってみて、はかどり方をメモします。
所要 数日
合わなければ、静かな環境に戻す
かえって気が散る、疲れると感じたら、無理に使わず静かな環境で作業します。研究でも、人によっては逆効果でした。
所要 判断するだけ
04続けるためのコツ
ホワイトノイズは、合う人には手軽な集中の助けになります。ただ、誰にでも効くわけではないので、自分の感覚を優先してください。
- イヤホンで長時間大きな音を聞き続けると、耳に負担がかかります。
- 雨の音やカフェの音など、自分が心地よいと感じる音を選びます。
- 騒がしい場所では、周りの音をかき消す目的でも使えます。
- 集中できない状態が続き、生活や仕事に支障があるときは、医師や専門の医療機関に相談してください。
05よくある質問
ホワイトノイズと集中力について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
ホワイトノイズで本当に集中できる?
人によります。13件の研究をまとめた分析では、ADHDやその傾向がある人には小さな効果がありましたが、そうでない人ではかえって成績が下がっていました。
ADHDの人にはホワイトノイズが効くの?
小さな効果が確認されています。ただし実験室での課題が中心で、適切な音量もまだわかっていないため、治療の代わりになるものではありません。
ピンクノイズやブラウンノイズとの違いは?
ホワイトノイズはすべての高さの音を同じくらい含み、ピンクノイズやブラウンノイズは低い音が多く、雨や滝のような音に聞こえます。研究ではホワイトノイズとピンクノイズで似た効果が見られました。
勉強のときに使ってもいい?
合う人には役立つ可能性があります。健康な成人80人の実験では、ホワイトノイズを聞きながら単語を覚えた人の方が成績が良くなっていました。自分に合うか試してみましょう。
出典
- Nigg, J. T., Bruton, A., Kozlowski, M. B., Johnstone, J. M., & Karalunas, S. L. (2024). Systematic Review and Meta-Analysis: Do White Noise or Pink Noise Help With Task Performance in Youth With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder or With Elevated Attention Problems? Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 63(8), 778-788. https://doi.org/10.1016/j.jaac.2023.12.014
- Söderlund, G., Sikström, S., & Smart, A. (2007). Listen to the noise: noise is beneficial for cognitive performance in ADHD. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 48(8), 840-847. https://doi.org/10.1111/j.1469-7610.2007.01749.x
- Söderlund, G. B., Sikström, S., Loftesnes, J. M., & Sonuga-Barke, E. J. (2010). The effects of background white noise on memory performance in inattentive school children. Behavioral and Brain Functions, 6, 55. https://doi.org/10.1186/1744-9081-6-55
- Angwin, A. J., Wilson, W. J., Arnott, W. L., et al. (2017). White noise enhances new-word learning in healthy adults. Scientific Reports, 7, 13045. https://doi.org/10.1038/s41598-017-13383-3
