先延ばし

大事な作業の前に、すぐ終わる用事から片づけてしまうのはなぜ?「早く終わらせたい」心理(プレクラスティネーション)を研究で調べた

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色とりどりの付箋
Photo: Ramesh NG / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

大事な資料に取りかかる前に、つい返信や片づけを済ませてしまう。気づけば、本命の作業は手つかずのまま。これは、あなたがなまけているからとは限りません。研究では、人には「すぐ終わることを早く終わらせたい」傾向があり、余計な手間がかかっても先に片づけてしまうことがわかっています。

3行でわかる

  1. 大学生にバケツを1つ運んでもらうと、多くの人は「近くにあるバケツ」を先に手に取り、かえって長い距離を運びました(Rosenbaumら, 2014。9つの実験)。
  2. 研究者はこれを「プレクラスティネーション(前倒しのしすぎ)」と名づけ、頭の中の「やることリスト」を早く減らしたいためだと考えています。覚えておくことが多いほど、前倒しは起きやすくなりました。
  3. 一方、8,655件の記録を調べた研究では、前倒しする人も先延ばしする人も、期限内に終えるのに苦労していました。早く手をつけることが、いつも得になるわけではありません。

01 悩みの正体すぐ終わる用事を先にやってしまうのはなぜ?

人には、すぐ終わることを早く片づけて、頭の中の「やることリスト」を減らしたい傾向があると考えられています。そのせいで、大事な作業より小さな用事が先に選ばれやすくなります。

先延ばしの反対に見える行動にも、名前があります。プレクラスティネーション(前倒しのしすぎ)です。必要以上に早く手をつけ、そのために余計な手間まで払ってしまう傾向を指します。

「メールを片づけてから本番に入ろう」と思うのは、悪い考えではありません。ただ、小さな用事は次々にやって来ます。片づけるたびに少しすっきりするので、本命の作業はそのぶん後ろへずれていきます。

さらに、本命の作業は「重い」「難しい」と感じるものであることが多いです。嫌だと感じる作業ほど先延ばしされやすいことは、メタ分析でも示されています[6]。気分を守るために作業を避ける仕組みは先延ばしと感情の研究にまとめています。

02 科学的にわかっていること「早く片づけたい」心理は、実験で確かめられている?

確かめられています。手間が増えても近い物を先に片づける行動は、複数の実験で見られました。ただし、注意が必要な作業や、手間が大きい作業では起きにくくなります。

Rosenbaumら(2014)[1]

大学生に、通路の左右に置かれた2つのバケツのどちらかを選び、通路の端まで運んでもらいました。「楽なほうを選んで」と伝えたので、研究者はゴールに近いバケツが選ばれると予想していました。ところが参加者は、スタート地点に近いバケツを手に取り、かえって長い距離を運びました。9つの実験と参加者の話から、研究者は「少しでも早く一区切りをつけたい」傾向があると結論し、その理由を頭の作業スペース(ワーキングメモリ)の負担を減らすためだと考えました。

対象: 大学生(9つの実験) / 限界: バケツ運びのような体を使う課題。仕事や勉強の順番を直接調べたものではない。

Fournierら(2019)[2]

2つの物を拾って一緒に持ち帰る課題で、参加者は近い物を先に拾いました。別に数字などを覚えておく課題を足すと、前倒しする確率が上がりました。一方、こぼれやすい水入りのカップを運ぶ実験では、近い物を先に拾う傾向は消えました。運ぶのに注意が必要で、前倒しするとかえって頭が疲れるからだと考えられています。

対象: 実験室の参加者(2つの実験) / 限界: 物を運ぶ課題での結果。

Patterson・Kahan(2020)[3]

48人にバケツ運びを、覚えておく課題の量を変えながら行ってもらいました。前倒しは、覚えておく課題の量によって変わりました。早く片づけるほど頭の余裕が早く戻るときは前倒しが増え、かえって長く覚えておく必要があるときは減りました。著者らは、頭の「やることリスト」から項目を消そうとする行動だと考えています。

対象: 48人 / 限界: 小さな実験。1種類の課題。

VonderHaarら(2019)[4]

122人に、頭を使う課題(あるカテゴリーの言葉を思いつく)と、頭をあまり使わない箱運びを、好きな順番で行ってもらいました。ちょうど半数が、頭を使う課題をすべて先に終えてから箱運びをしました。言葉の課題を後回しにするほど、箱運びは遅くなりました。頭に残る課題を先に片づけて「頭をすっきりさせたい」という考え方に合う結果です。

対象: 122人 / 限界: 実験室の課題。報酬の差がない条件での結果。

Vangsness・Young(2020)[5]

大学の研究参加の電子記録(8,655件)を調べました。課題の進め方を細かく分けて見ると、先延ばしする人だけでなく、前倒しする人も、期限内に終えるのに苦労していました。

対象: 8,655件の参加記録 / 限界: 1つの大学の、研究参加という特定の課題の記録。

研究わかったこと
Rosenbaumら(2014)手間が増えても、近いバケツを先に運んだ
Fournierら(2019)覚えることが多いと前倒しが増え、注意が必要な物では消えた
Patterson・Kahan(2020)頭の余裕が早く戻るときに前倒しが増えた
VonderHaarら(2019)半数が、頭に残る課題を先に全部終えた
Vangsness・Young(2020)前倒しする人も期限に苦労していた

この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。前倒しは「頭を軽くしたい」ときに強まり、手間や注意が大きいときには弱まると言えます。なお、Foxら(2025)は、前倒しのしやすさは「目先の得を選ぶ衝動性」とは関係がなく、運ぶ物が重くなるほど減ったと報告しています[7]。

03 今日からできる小さな一歩用事に流されず、大事な作業から始めるには?

大事な作業そのものを「すぐ終わる一区切り」に変えるのが近道です。用事は時間の上限を決め、頭の中の用事は紙に出してから本命に入ります。

1

気になる用事を、紙に書き出してから始める

研究では、覚えておくことが多いほど前倒しが増えました[2][3]。頭に置いたままにせず、メモに移してから本命に向かいます(研究の結果からの提案です)。

所要 2分

2

本命の作業を「5分で終わる最初の一区切り」にする

「資料を作る」ではなく「見出しを3つ書く」のように、すぐ終わる単位にします。早く一区切りをつけたい傾向を、本命の側に向ける工夫です。分け方は大きな作業の分け方の研究にまとめています。

所要 5分

3

小さな用事には「上限」を決める

「返信は15分まで」のように時間で区切ります。小さな用事は次々に来るので、全部終わるのを待つと本命が始まりません。

所要 1分

4

本命を始める時刻を先に決めておく

「10時から資料」と決めておくと、用事に流されにくくなります。方法は始める時刻を決める計画の研究にまとめています。

所要 2分

04 続けるためのコツ用事を先にやるくせは、直したほうがいい?

無理に直す必要はありません。前倒しは、頭を軽くするために役立つこともあります。問題になるのは、本命の作業が毎回後ろへずれていくときだけです。

05よくある質問

プレクラスティネーションって何?

必要以上に早く手をつけ、そのために余計な手間まで払ってしまう傾向です。Rosenbaumら(2014)がバケツ運びの実験で見つけ、名づけました。頭の中の「やることリスト」を早く減らしたいためだと考えられています。

すぐ終わる用事を先にやるのは悪いこと?

悪いとは限りません。頭が軽くなり、そのあとの作業が進むこともあります。ただ、8,655件の記録を調べた研究では、前倒しする人も期限内に終えるのに苦労していました。本命の作業が毎回後回しになるなら、順番を見直す合図です。

先延ばしとプレクラスティネーションは反対のもの?

向きは反対ですが、同じ人に両方が起きることもあります。すぐ終わる用事は前倒しし、重い作業は先延ばしする、という形です。嫌だと感じる作業ほど先延ばしされやすいことは、691の相関をまとめたメタ分析でも示されています。

出典

  1. Rosenbaum, D. A., Gong, L., & Potts, C. A. (2014). Pre-crastination: hastening subgoal completion at the expense of extra physical effort. Psychological Science, 25(7), 1487-1496. https://doi.org/10.1177/0956797614532657
  2. Fournier, L. R., Coder, E., Kogan, C., Raghunath, N., Taddese, E., & Rosenbaum, D. A. (2019). Which task will we choose first? Precrastination and cognitive load in task ordering. Attention, Perception, & Psychophysics, 81(2), 489-503. https://doi.org/10.3758/s13414-018-1633-5
  3. Patterson, E. E., & Kahan, T. A. (2020). Precrastination and the cognitive-load-reduction (CLEAR) hypothesis. Memory, 28(1), 107-111. https://doi.org/10.1080/09658211.2019.1690001
  4. VonderHaar, R. L., McBride, D. M., & Rosenbaum, D. A. (2019). Task order choices in cognitive and perceptual-motor tasks: the cognitive-load-reduction (CLEAR) hypothesis. Attention, Perception, & Psychophysics, 81(7), 2517-2525. https://doi.org/10.3758/s13414-019-01754-z
  5. Vangsness, L., & Young, M. E. (2020). Turtle, task ninja, or time waster? Who cares? Traditional task-completion strategies are overrated. Psychological Science, 31(3), 306-315. https://doi.org/10.1177/0956797619901267
  6. Steel, P. (2007). The nature of procrastination: a meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65-94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
  7. Fox, A. E., Khatun, A., & Mooney, L. A. (2025). Precrastination: the potential role of trait impulsivity and physical effort. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 51(9), 1224-1233. https://doi.org/10.1037/xhp0001348