先延ばし

「追い込まれた方がはかどる」は本当? 先延ばしと成績・ストレスの研究で調べた

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ストップウォッチ
Photo: Ansgar Koreng / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「自分は追い込まれないとやれないタイプ」と思っている人は少なくありません。研究で調べると、先延ばしする人ほど成績はやや低い傾向でした。締め切りまでの間は気分が楽になりますが、学期の終わりにはストレスと体調不良が増えるという研究もあります。うまくいく「追い込み型」は、実は始める日を計画している人だと考えられています。

3行でわかる

  1. 33件の研究をまとめたメタ分析では、先延ばしと成績の間に小さなマイナスの関係があった(相関−0.13)。行動で測ると関係は強まった(−0.39)。
  2. 先延ばしする学生は、学期の初めはストレスが少なめだが、終わりには多くなった。大学生3,525人の研究でも、9か月後の心身の不調と小さく結びついていた。
  3. うまくいく「追い込み型」は、始める日を逆算して決めている人に近い。研究者はこれを先延ばしとは別の「計画した待ち時間」と考えている。

01 悩みの正体締め切り直前のほうがはかどる気がするのはなぜ?

締め切り前は、やる理由がはっきりして迷いが消えるからです。一方で、それまでの間は「やらなくていい」ので気分が楽になります。この2つが重なり、追い込み型がうまくいっているように感じやすくなります。

先延ばしの研究691件の相関をまとめたSteel(2007)は、先延ばしと強く結びつく要因として、作業のいやさ、成果が出るまでの遠さ、衝動のままに動きやすいことなどを挙げました[1]。締め切りが遠いうちは、いやな作業を避けたほうが気分は楽です。締め切りが近づくと、やらない理由がなくなり、急に手が動きます。

そのため「自分は追い込まれた方が力が出る」と感じます。ただ、その感覚が正しいかは、実際の成績やストレスを測った研究で確かめる必要があります。締め切り前に集中できる脳の仕組みは締め切り直前に急に集中できるのはなぜかで紹介しています。

02 科学的にわかっていること追い込み型のほうが成績はいい?

いいえ。多くの研究をまとめると、先延ばしする人ほど成績はやや低い傾向でした。最初は楽でも、学期の終わりにはストレスと体調不良が増えるという研究もあります。

KimとSeo(2015・メタ分析)[2][3]

33件の研究をまとめると、先延ばしと成績の間には、小さいながら一貫したマイナスの関係がありました(相関の平均−0.13)。行動で測った先延ばし(提出の遅さなど)と、実際の成績を比べた場合は、関係がより強くなりました(−0.39)。

対象: 学生を対象にした33件の研究 / 限界: 相関の研究で、先延ばしが成績を下げたとまでは言えません。数値は、この論文を詳しく紹介した2つの論文から確認しました。

−0.39

先延ばしも成績も「行動」で測ったときの相関。自己申告どうしより強い結びつきが出た[2][3]

この差は大事な点を示しています。「追い込み型でもうまくいっている」という自己申告と、実際の行動や成績は、ずれることがあるのです[3]。

TiceとBaumeister(1997)[4]

大学生を学期の初めから終わりまで追った2つの研究です。先延ばしする学生は、学期の初めはストレスや体調不良が少なめでした。ところが学期の終わりには、ストレスも体調不良も多くなりました。課題の成績も低めでした。著者は先延ばしを「短期の得と長期の損」の行動とまとめています。

対象: 健康心理学の授業を取る大学生(2つの研究) / 限界: 1つの授業の学生だけを調べた、小さな研究です。

Johanssonら(2023)[5]

スウェーデンの大学生3,525人を追い、先延ばしの度合いとその9か月後の健康を調べました。先延ばしが強い人ほど、9か月後の抑うつ・不安・ストレスがやや高く、腕や肩の強い痛み、睡眠の悪さ、運動不足、孤独感も少し多くなっていました。

対象: 8つの大学の学生3,525人(平均24.8歳) / 限界: 観察研究のため、因果関係は言えません。結びつきは小さく、測っていない性格の違いで説明できてしまう可能性を著者自身が挙げています。

ここまでを判定表にすると、次のようになります。

よく言われること研究でわかったこと判定
追い込まれた方が成績がいい先延ばしする人ほど成績はやや低い(33件の研究)[2]当てにならない
ギリギリまで休めるから楽初めは楽だが、終わりはストレスと体調不良が増えた[4]短期だけ当たる
先延ばししても体には関係ない9か月後の心身の不調と小さく結びついた[5]小さな関係あり
わざと遅らせる人は大丈夫計画的な人は先延ばししない人に近かった。ただし「先延ばし」とは別物という批判も[6][7]条件しだい

02 科学的にわかっていること「計画的に遅らせる人」はうまくいくのでは?

締め切りから逆算して始める日を決めている人は、困りにくいと考えられています。ただ、それは「先延ばし」ではなく「計画した待ち時間」だ、という見方が研究者の間で強まっています。

ChuとChoi(2005)[6]

先延ばしする人を2つに分けました。迷って動けなくなる「受け身の先延ばし」と、プレッシャーの中で働くのが好きで、わざと遅らせる「積極的な先延ばし」です。後者は、時間の使い方や自信、成績などで、先延ばししない人に近い結果でした。

種類: 大学生へのアンケート調査(一時点) / 限界: 成績も含め、多くを自己申告で測っています。

ChowdhuryとPychyl(2018)[7]

「積極的な先延ばし」の測り方を検証し、2つの別の中身が混ざっていると指摘しました。目的のある「計画的な遅らせ」と、ギリギリの興奮を求める「刺激のための遅らせ」です。役に立つのは前者で、それは先延ばしとは別物だとしています。

種類: 質問紙の妥当性を調べた研究 / 限界: 先延ばしの定義をめぐる議論で、決着はついていません。

03 今日からできる小さな一歩追い込み型をやめずに失敗を減らすには?

「始める日」を先に決めて、ギリギリを計画に変えることです。締め切り前の集中力はそのまま使い、準備だけを前に出します。

1

締め切りから「始める日」を逆算する

かかる時間を見積もり、余裕を足してから始める日を決めます。人は作業時間を短く見積もりがちだからです(見積もりがずれる理由)。

所要 5分

2

最初の10分だけ、今日やる

資料を開く、見出しを3つ書く、などの準備だけ先に済ませます。やり方は大きな作業の分け方の研究にまとめています。

所要 10分

3

終わった後に「本当に間に合ったか」を書く

「出来は満足か」「睡眠を削ったか」を1行ずつ書きます。自己申告と実際の結果がずれやすいことを、自分の記録で確かめられます[3]。

所要 2分

04 続けるためのコツそれでもギリギリになってしまうときは?

自分を責めすぎないことです。先延ばしは「いやな気分を避けたい」気持ちから起きやすく、責めるとかえって次も避けたくなります。

先延ばしで仕事や生活に大きな支障が続く場合は、ひとりで抱えず、専門家に相談することも選択肢です。

05よくある質問

締め切り直前のほうが集中できるのは本当ですか?

締め切りが近づくと集中しやすくなる仕組みを示した研究はあります。ただ、先延ばしする人の成績はやや低いという結果が多く、集中できることと、良い結果が出ることは別だと考えるのが研究に沿います。

追い込み型の人は、直したほうがいいですか?

わざと遅らせていても、始める日を決め、毎回間に合っていて、体調も崩していないなら、困りごとは小さいかもしれません。研究者はそれを「計画した待ち時間」と呼び、先延ばしとは分けて考えています。毎回睡眠を削るなら、始める日を前に出すことから試してください。

先延ばしは健康にも悪いのですか?

大学生3,525人の研究では、先延ばしが強い人ほど9か月後の抑うつやストレス、睡眠の悪さなどがやや多くなっていました。ただし結びつきは小さく、観察研究なので、先延ばしが原因だとまでは言えません。

出典

  1. Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65–94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
  2. Kim, K. R., & Seo, E. H. (2015). The relationship between procrastination and academic performance: A meta-analysis. Personality and Individual Differences, 82, 26–33. https://doi.org/10.1016/j.paid.2015.02.038
  3. Vangsness, L., Voss, N. M., Maddox, N., Devereaux, V., & Martin, E. (2022). Self-report measures of procrastination exhibit inconsistent concurrent validity, predictive validity, and psychometric properties. Frontiers in Psychology, 13, 784471. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.784471
  4. Tice, D. M., & Baumeister, R. F. (1997). Longitudinal study of procrastination, performance, stress, and health: The costs and benefits of dawdling. Psychological Science, 8(6), 454–458. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.1997.tb00460.x
  5. Johansson, F., Rozental, A., Edlund, K., et al. (2023). Associations between procrastination and subsequent health outcomes among university students in Sweden. JAMA Network Open, 6(1), e2249346. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2022.49346
  6. Chu, A. H. C., & Choi, J. N. (2005). Rethinking procrastination: Positive effects of "active" procrastination behavior on attitudes and performance. The Journal of Social Psychology, 145(3), 245–264. https://doi.org/10.3200/SOCP.145.3.245-264
  7. Chowdhury, S. F., & Pychyl, T. A. (2018). A critique of the construct validity of active procrastination. Personality and Individual Differences, 120, 7–12. https://doi.org/10.1016/j.paid.2017.08.016