先延ばしを減らすには、始める時刻まで決める?「いつ・どこで」を決める計画を研究で調べた

「今週中にやろう」と決めたのに、気づけば週末になっている。そんな経験は多くの人にあるはずです。研究でわかったのは、「やる」と決めるだけでなく、始める日付と時刻、場所まで決めておくと、実行される割合が上がることでした。ただし、予定を詰め込みすぎた実験では、効果は出ませんでした。
3行でわかる
- 「いつ・どこで・何をするか」を先に決める計画(実行意図)は、94件の検証をまとめた分析で、目標の達成を中程度以上に高めた(d=0.65)。
- 3,272人の職場の実験では、予防接種の日付と時刻を書いた人の接種率は37.1%で、案内だけの人(33.1%)より4.0ポイント高かった。日付だけでは、はっきりした差は出なかった。
- 2週間で平均7回の運動を計画したジム会員は、実際には平均2.3回しか行かず、計画しない人と変わらなかった。計画は1つに絞り、つまずく場面への対策も決めておく。
01 悩みの正体「やるつもり」なのに始められないのはなぜ?
「やる」という目標だけでは、いつ始めるかの合図がないからです。「今日のどこかで」は、いつでも後回しにできます。始める時刻と場所を先に決める計画は「実行意図」と呼ばれ、目標と行動のすき間を埋める方法として研究されてきました。
実行意図は「もし〇〇の場面になったら、△△をする」と、きっかけと行動をセットで決めておく計画です[3]。
きっかけを決めておくと、その場面が来たことに気づきやすくなります。そして、決めた行動が自然に出やすくなると考えられています[3]。
先延ばしは、意志の弱さより「いやな気分を避けたい」気持ちと深く関わっています(先延ばしと感情の研究)。だからこそ、その場で「やるかどうか」を決めずに済むよう、始める瞬間を先に決めておく方法が役立ちます。
02 科学的にわかっていること始める時刻を決めると、本当に取りかかれる?
多くの研究で、決めた人のほうが実行しやすくなりました。ただし効果の大きさは場面で違います。「日付だけ」より「日付と時刻」のほうがはっきり差が出て、運動をたくさん計画した実験では効果がありませんでした。
GollwitzerとSheeran(2006)[1]
「いつ・どこで・どうするか」を決める計画の効果を、94件の検証でまとめたメタ分析です。勉強や仕事、人間関係、健康などの目標の達成が高まり、効果の大きさはd=0.65(中程度〜大きめ)でした。
対象: 94件の独立した検証 / 限界: 数値は2021年のメタ分析(Wangら)の整理で確認しました。研究ごとに効果の大きさには差があります。
Milkmanら(2011)[2]
アメリカの電力会社で、社内の無料インフルエンザ予防接種の案内を送りました。一部の人の案内には、接種する日付を書く欄、または日付と時刻を書く欄をつけました。接種率は、案内だけで33.1%、日付の欄で35.6%、日付と時刻の欄で37.1%でした。時刻まで書く欄は4.0ポイント(条件をそろえると4.2ポイント)高く、日付だけの差は、はっきりしませんでした。
対象: 50歳以上か持病のある社員3,272人(2009年秋) / 限界: 男性の多い1つの会社での結果です。接種会場が1日しか開かない職場で、効果が大きく出ました。
Carreraら(2018)[4]
ジムの会員に、これからの13日間で運動する日と時刻を表に書き込んでもらいました。計画した回数は平均7.04回でしたが、実際に行ったのは平均2.3回でした。計画しなかった人(平均2.6回)と比べて、通う回数は増えませんでした。
対象: アメリカの1つのジムの会員877人(約6割が学生) / 限界: くり返す行動での結果です。著者は、計画を詰め込みすぎたことや、運動はいつでも「あとで」にできることを理由に挙げています。
Wangら(2021)[3]
望む結果と、それを邪魔する障害を思い浮かべてから「もし〜なら〜する」を決める方法を、24の研究でまとめました。目標の達成は高まり、効果の大きさはg=0.336(小〜中程度)でした。人と対面で取り組むと0.465、紙や画面だけだと0.277でした。
対象: 21本の論文、計15,907人 / 限界: 効果のなかった研究が発表されにくい偏りがあり、実際の効果はもう少し小さい可能性があると著者は述べています。
+4.0ポイント
予防接種の日付と時刻を書いた人の接種率の上がり方(37.1%と33.1%。3,272人のランダム化比較試験)[2]
| 計画の立て方 | 研究の結果 |
|---|---|
| 案内を受け取るだけ(目標のみ) | 接種率33.1%[2] |
| 日付だけ書く | 35.6%。はっきりした差は出なかった[2] |
| 日付と時刻を書く | 37.1%。4.0ポイント高い[2] |
| 13日分の運動を表に詰め込む | 平均7.04回の計画に対し2.3回。回数は増えなかった[4] |
03 今日からできる小さな一歩先延ばししている作業の始め方は、どう決める?
作業を1つだけ選び、始める日付と時刻、場所、最初の動作を1行で書きます。つまずきそうな場面への対策も1つ決めます。全部で5分ほどです。
先延ばししている作業を1つだけ選ぶ
あれもこれも計画しないことが大切です。予定を詰め込んだジムの実験では、通う回数は増えませんでした[4]。
所要 1分
日付だけでなく、時刻まで書く
「水曜」ではなく「水曜の20時」と書きます。予防接種の実験では、時刻まで書いたときに差がはっきり出ました[2]。
所要 1分
つまずく場面に「もし〜なら」を1つ足す
「もし20時にスマホを見ていたら、充電器に置いて机に向かう」のように書きます。障害を考えてから計画を立てる方法は、24の研究で効果が確かめられています[3]。
所要 2分
04 続けるためのコツ決めた時刻に始められなかったら、どうする?
計画を捨てずに、次の時刻を1つだけ決め直します。計画は、機会が限られた作業ほど効きやすく、数を増やすほど効くわけではありません。始められなかった自分を責めすぎないことも大切です。
- 締め切りや機会が限られた作業から使う。会場が1日しか開かない職場で効果が大きかった[2]。
- 予定は現実的な数にする。計画は平均7.04回、実際は2.3回だった[4]。
- 時刻を過ぎたら、次の日時を1つだけ書き直す。何本も同時に立て直さない。
- できなかった後は、自分を責めるより許すほうが次に動きやすい(先延ばしの後の立て直し方)。
- やる気が出るのを待たない。動き始めてから気分がついてくることも多い(行動が先の研究)。
05よくある質問
「今日中にやる」と決めるだけでは足りませんか?
日付だけでは足りないことがあります。3,272人の予防接種の実験では、日付だけを書いた人の接種率は35.6%で、案内だけの人(33.1%)とのはっきりした差は出ませんでした。日付と時刻まで書いた人は37.1%で、4.0ポイント高くなりました。
予定をたくさん立てるほど、たくさん実行できますか?
そうとは限りません。ジム会員に13日分の運動の日時を書いてもらった実験では、計画は平均7.04回、実際に行ったのは平均2.3回で、計画しなかった人と変わりませんでした。まずは1つの作業に絞って、始める時刻を決めるのがおすすめです。
「もし〜なら〜する」という計画は、誰にでも効きますか?
平均すると効果はありますが、大きさは研究によって違います。障害を考えてから計画を立てる方法の24研究のまとめでは、効果の大きさは小〜中程度(g=0.336)で、実際はもう少し小さい可能性も指摘されています。習慣づくりに使う方法はif-thenプランの記事で紹介しています。
出典
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69-119.(数値はWangら, 2021 の整理で確認) https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1
- Milkman, K. L., Beshears, J., Choi, J. J., Laibson, D., & Madrian, B. C. (2011). Using implementation intentions prompts to enhance influenza vaccination rates. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(26), 10415-10420. https://doi.org/10.1073/pnas.1103170108
- Wang, G., Wang, Y., & Gai, X. (2021). A meta-analysis of the effects of mental contrasting with implementation intentions on goal attainment. Frontiers in Psychology, 12, 565202. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.565202
- Carrera, M., Royer, H., Stehr, M., Sydnor, J., & Taubinsky, D. (2018). The limits of simple implementation intentions: Evidence from a field experiment on making plans to exercise. Journal of Health Economics, 62, 95-104. https://doi.org/10.1016/j.jhealeco.2018.09.002


