先延ばしぐせは生まれつきなのか。双子研究と改善の研究でわかったこと

子どもの頃から、宿題はいつもギリギリ。大人になっても、締め切り前に慌てる毎日。「自分は生まれつきこういう性格だから」とあきらめていないでしょうか。研究を見ると、先延ばしのしやすさには確かに遺伝の影響があります。それでも、やり方を変えることで大きく改善した人がいることもわかっています。
3行でわかる
- 双子を調べた研究では、先延ばしのしやすさの個人差の約46%が遺伝の影響で説明された。衝動性とは遺伝的にほぼ同じ根っこを持っていた。
- その共通の根っこは、大事な目標を思い出して行動をコントロールする力(目標を管理する力)と関わっていた。
- 先延ばしに悩む大学生92人への研究では、8週間の認知行動療法で先延ばしが大きく改善し、半年後には46.7%が「改善した」と判定された。
01「遺伝の影響がある」と「変えられない」は別の話
先延ばしのしやすさには遺伝の影響がありますが、それは「変えられない」という意味ではありません。遺伝の影響は、あくまで個人差の一部を説明するものです。
双子研究では、遺伝子がすべて同じ一卵性双生児と、約半分が同じ二卵性双生児を比べることで、性格の個人差のうち遺伝で説明できる割合を推定します。
先延ばしの場合、その割合は約46%でした。裏を返せば、残りの半分以上は、育った環境やその後の経験など、遺伝以外の要因で説明されることになります。
また、遺伝の影響を受けるのは、先延ばしそのものというより、「大事な目標を思い出して行動を切り替える力」だと考えられています。この力は、工夫で補うことができます。
02科学的にわかっていること
先延ばしには遺伝の影響があり、衝動性と根っこを共有していました。それでも、行動を変える治療で大きく改善することが確かめられています。
Gustavsonら(2014)[1]
双子を対象に、先延ばし、衝動性、目標を管理する力の関係を調べた。先延ばしの個人差の46%、衝動性の49%が遺伝の影響で説明された。2つは見た目には別の性格だが、遺伝的にはほぼ同じ根っこを持ち、その多くは目標を管理する力の個人差と関わっていた。
対象: 双子の成人 / 限界: 遺伝の影響の割合は集団の平均で、個人の運命を示すものではない。
Rozentalら(2018)[2]
先延ばしに強く悩む大学生92人に、インターネットで自分で進める認知行動療法か、グループでの認知行動療法を8週間受けてもらった。どちらでも先延ばしは大きく改善し(効果量 d=1.29、1.24)、うつや不安も少し軽くなった。治療直後に33.7%、半年後に46.7%が「改善した」と判定された。
対象: 先延ばしに強く悩む大学生92人 / 限界: 治療を受けない比較群は設けていない。
Steel(2007)[3]
先延ばしに関する691の相関をまとめたメタ分析。先延ばしと強く結びついていたのは、作業の嫌さ、締め切りまでの遠さ、自信のなさ、衝動性、自己コントロールや計画性の低さだった。神経質さとの関係は弱かった。
対象: 691の相関をまとめたメタ分析 / 限界: 多くは相関の研究で、因果は確かめられていない。
van Eerde & Klingsieck(2018)[4]
先延ばしを減らす取り組みを調べた24件の研究(1,173人分)をまとめた分析。取り組みの後、先延ばしは大きく減り、その効果は追跡調査でも保たれていた。種類別では、認知行動療法が最も強く先延ばしを減らしていた。
対象: 24件の研究、1,173人 / 限界: 研究の数がまだ多くない。
03今日からできる小さな一歩
「目標を思い出す力」を仕組みで補います。作業の嫌さを小さくし、締め切りを近くに感じられるようにするのがポイントです。
作業を「最初の5分」に切り分ける
嫌な作業ほど先延ばしされやすくなります。「資料を開いてタイトルだけ書く」など、すぐ終わる最初の一歩を決めます。
所要 1分
目標を目に入る場所に置く
机の前に「今日やる1つ」を書いて貼ります。目標を思い出す力が弱くても、目に入れば行動に移しやすくなります。
所要 1分
誘惑を物理的に遠ざける
作業中はスマホを別の部屋に置くなど、衝動に反応しにくい環境をつくります。
所要 数秒
04続けるためのコツ
先延ばしを性格のせいにして自分を責めるより、仕組みを1つずつ増やす方が続けやすく、効果も期待できます。
- 遺伝の影響があるのは、目の色のように変えられないという意味ではありません。
- 「自分は先延ばしする人間だ」と決めつけると、工夫を試す前にあきらめやすくなります。
- うまくいった仕組みは、メモしておくと次の作業にも使えます。
- 先延ばしで生活や仕事に大きな支障が出ているときは、認知行動療法を行う医療機関や専門家に相談するのも一つの方法です。
05よくある質問
先延ばしぐせについて、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
先延ばしは遺伝するの?
遺伝の影響はあります。双子の研究では、先延ばしのしやすさの個人差の約46%が遺伝で説明されました。ただし、残りの半分以上は遺伝以外の要因です。
生まれつきなら、先延ばしは直らない?
直らないわけではありません。92人の大学生を対象にした研究では、8週間の認知行動療法で先延ばしが大きく改善し、半年後には46.7%が改善と判定されました。
先延ばしと衝動性は関係あるの?
関係があります。双子の研究では、先延ばしと衝動性は遺伝的にほぼ同じ根っこを持っていました。目の前の誘惑に反応しやすいことが、遠い目標を後回しにさせると考えられています。
どんな人が先延ばししやすいの?
691の相関をまとめた分析では、作業が嫌だと感じるとき、締め切りが遠いとき、自信がないとき、衝動性が高いときに、先延ばししやすい傾向がありました。
先延ばしを直すには、どんな方法が効くの?
24件の研究をまとめた分析では、先延ばしを減らす取り組みの効果は大きく、その中でも認知行動療法が最も効果的でした。
出典
- Gustavson, D. E., Miyake, A., Hewitt, J. K., & Friedman, N. P. (2014). Genetic relations among procrastination, impulsivity, and goal-management ability: Implications for the evolutionary origin of procrastination. Psychological Science, 25(6), 1178-1188. https://doi.org/10.1177/0956797614526260
- Rozental, A., Forsström, D., Lindner, P., et al. (2018). Treating Procrastination Using Cognitive Behavior Therapy: A Pragmatic Randomized Controlled Trial Comparing Treatment Delivered via the Internet or in Groups. Behavior Therapy, 49(2), 180-197. https://doi.org/10.1016/j.beth.2017.08.002
- Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65-94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
- van Eerde, W., & Klingsieck, K. B. (2018). Overcoming procrastination? A meta-analysis of intervention studies. Educational Research Review, 25, 73-85. https://doi.org/10.1016/j.edurev.2018.09.002