机を片付けると集中できるのか。散らかった部屋と脳の研究

机の上が書類や物でいっぱいで、なかなか作業に集中できない。そんなとき、片付けたら頭もすっきりするのでしょうか。研究を見ると、視界に入るものが多いと脳の中で注意の奪い合いが起きることがわかっています。一方で、散らかった環境の方がアイデアが出やすいという実験もあり、片付けの効果は目的によって変わりそうです。
3行でわかる
- 脳の研究では、視界に同時にいくつものものがあると、それらが脳の中で互いに処理を奪い合い、注意を向けて整理する必要があることがわかっている。
- 整った部屋と散らかった部屋を比べた実験では、整った部屋の人は健康的なおやつを選び、多く寄付した。一方、散らかった部屋の人の方が創造的なアイデアを出した。
- 共働きの夫婦60人の研究では、家を「散らかっている」と表現した妻ほど、1日のストレスホルモンの変化が平坦で、気分の落ち込みも強かった。
01目に入るものが多いほど、脳は忙しくなる
視界に入るものは、見ようとしていなくても脳で処理されます。物が多いほど、目の前の作業に注意を向けるための負担が増えると考えられます。
人の視覚には、一度に処理できる量に限りがあります。視界にいくつものものがあると、それらは脳の視覚の部分で互いの反応を抑え合い、いわば処理の奪い合いが起きます。
そのため、見たいものに集中するには、注意の力でこの奪い合いを整理する必要があります。机の上に物が多いほど、その整理にエネルギーを使うことになります。
ただし、整った環境がいつも良いとは限りません。研究では、環境が整っているか散らかっているかで、引き出される行動の種類が違っていました。
02科学的にわかっていること
視界の物は注意を奪い合い、散らかった家はストレスや落ち込みと関係していました。一方、散らかった部屋は創造的なアイデアを後押ししていました。
McMains & Kastner(2011)[1]
視界に同時にいくつかのものがあると、それらは脳の視覚の部分で互いの反応を抑え合っていた。見るものがまとまりとして整理されていない状況ほど、注意によってこの奪い合いを調整する必要が大きかった。
対象: 脳画像を使った実験の参加者 / 限界: 単純な図形を使った実験で、実際の机の上の状況とは異なる。
Vohsら(2013)[2]
整った部屋と散らかった部屋で3つの実験を行った。整った部屋の人は健康的なおやつを選び、多く寄付し、「定番」と書かれた選択肢を好んだ。散らかった部屋の人は、より創造的なアイデアを出し、「新しい」と書かれた選択肢を好んだ。
対象: 3つの実験の参加者 / 限界: 短時間の実験で、長期的な影響はわからない。
Saxbe & Repetti(2010)[3]
共働きの夫婦60人に自宅を案内しながら説明してもらい、使った言葉を分析した。家を「散らかっている」「片付いていない」と表現した妻ほど、その後3日間のストレスホルモン(コルチゾール)の1日の変化が平坦で、1日を通して気分の落ち込みが強まっていた。
対象: 共働きの夫婦60人 / 限界: 家の実際の散らかり具合ではなく、本人の表現を分析している。
Rosterら(2016)[4]
アメリカとカナダの成人約1,400人を調べた。持ち物に愛着を持つことは「我が家」という感覚や幸福感と結びついていたが、物があふれて散らかっていると、その感覚や幸福感が損なわれていた。
対象: 片付けの専門団体の利用者を中心とした約1,400人 / 限界: 片付けに悩む人が多い集団で、一般の人とは異なる可能性がある(内容は大学の発表で確認)。
03今日からできる小さな一歩
集中したい作業の前は、視界に入る範囲だけを片付けます。アイデアを出したいときは、多少散らかっていても気にしすぎなくて大丈夫です。
視界に入る範囲だけ片付ける
部屋全体ではなく、座ったときに目に入る机の上だけを片付けます。今の作業に使わない物は、引き出しや箱にしまいます。
所要 5分
作業に必要な物だけを出しておく
作業を始める前に、使う物だけを机に出します。終わったら元に戻します。
所要 1分
作業によって環境を使い分ける
ミスなく進めたい作業は片付いた机で、アイデア出しは少し散らかった場所でも気にせずに行います。
所要 切り替えるだけ
04続けるためのコツ
完璧に片付けることを目指す必要はありません。集中したいときに、視界を少しだけすっきりさせる習慣をつくると続けやすくなります。
- 1日の終わりに、机の上を1分だけ元に戻す習慣をつけると、翌朝すぐに作業を始められます。
- 物を減らすのが難しいときは、「見えない場所にしまう」だけでも視界はすっきりします。
- 片付けそのものがストレスになるなら、まずは1か所だけから始めます。
- 物を捨てられず生活に支障が出ているときは、専門の相談窓口や医療機関に相談するのも一つの方法です。
05よくある質問
片付けと集中力について、よく検索される疑問に研究の範囲で答えます。
机が散らかっていると集中できないのはなぜ?
視界にいくつものものがあると、それらが脳の中で処理を奪い合い、見たいものに集中するために注意の力を使うためと考えられています。
散らかった机の方がアイデアは出る?
その可能性があります。実験では、散らかった部屋の人の方が、整った部屋の人より創造的なアイデアを出していました。
部屋が散らかっているとストレスになる?
共働きの夫婦60人の研究では、家を散らかっていると表現した妻ほど、ストレスホルモンの1日の変化が平坦で、気分の落ち込みも強い傾向がありました。
どこから片付ければいい?
集中したい作業があるなら、座ったときに目に入る机の上から片付けるのがおすすめです。
出典
- McMains, S., & Kastner, S. (2011). Interactions of top-down and bottom-up mechanisms in human visual cortex. Journal of Neuroscience, 31(2), 587-597. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3766-10.2011
- Vohs, K. D., Redden, J. P., & Rahinel, R. (2013). Physical order produces healthy choices, generosity, and conventionality, whereas disorder produces creativity. Psychological Science, 24(9), 1860-1867. https://doi.org/10.1177/0956797613480186
- Saxbe, D. E., & Repetti, R. (2010). No place like home: Home tours correlate with daily patterns of mood and cortisol. Personality and Social Psychology Bulletin, 36(1), 71-81. https://doi.org/10.1177/0146167209352864
- Roster, C. A., Ferrari, J. R., & Jurkat, M. P. (2016). The dark side of home: Assessing possession 'clutter' on subjective well-being. Journal of Environmental Psychology, 46.(内容は研究成果を伝えるScienceDailyの記事で確認) https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160720170449.htm