記憶・学習

英単語は身ぶりをつけて覚えると覚えやすい? ジェスチャーで覚えるやり方と、効かなかった場面を研究で調べた

約8分で読めます

本と単語カードが置かれた勉強机
Photo: brewbooks from near Seattle, USA / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

単語帳を何度めくっても、英単語がなかなか頭に残らない。そんなときに試す価値があるのが、単語の意味に合った身ぶり(ジェスチャー)をしながら覚えるやり方です。体を動かして覚えたことは、読んだだけのことより思い出しやすいという結果が、145件の実験のまとめで示されています。ただし、外国語の単語では効果がはっきりしない場面もありました。やり方と限界をあわせて紹介します。

3行でわかる

  1. 「拍手する」などの言葉を、実際に動作しながら覚えると記憶に残りやすい。145件の実験をまとめた分析で、読むだけより成績がよかった。
  2. 外国語の単語でも、意味に合った身ぶりをつけると覚えやすくなった実験がある。一方で、訳語を答えるテストでは差が出なかった実験もある。
  3. 意味に合った身ぶりを選び、声に出しながら動き、最後は思い出すテストで確かめる。動けない場所では、身ぶりを見るだけでも近い効果が出た分析がある。

01 悩みの正体身ぶりをつけると、なぜ単語を覚えやすくなる?

身ぶりをつけると、単語の記憶に「音」と「意味」だけでなく「動き」の手がかりも加わるからです。思い出す道すじが増えるため、読むだけより思い出しやすくなると考えられています。

単語帳で覚えるとき、手がかりは文字と音だけです。初めて見る外国語の単語には、知っている言葉とのつながりがほとんどありません。

そこで研究者が試してきたのが、覚えるときに別の情報を足す方法です。絵を添える方法と、身ぶりをつける方法がよく比べられてきました[3]。

脳の研究では、身ぶりをつけて覚えた単語を聞くと、体の動きに関わる脳の場所(運動野)が働くことが報告されています[3][6]。言葉の記憶に、動きの記憶がつながっていると考えられています。

「自分は体を動かして覚えるタイプ」だから効く、という話ではありません。学び方のタイプに合わせると覚えやすい、という考えは研究で支持されていません。詳しくは学習スタイルの研究で紹介しています。

02 科学的にわかっていること身ぶりで覚えると、どれくらい違う?

動作を表す言葉では、実際に動いて覚えると、読むだけより記憶に残りやすいことが145件の実験で示されています。外国語の単語では、効果が出たテストと出なかったテストがあります。

145件

動作を表す言葉を「実際に動いて覚える」と記憶に残りやすいかを調べた行動実験の数。まとめると、読むだけより明らかに成績がよかった[1]

Robertsら(2022)[1]

「手をたたく」のような言葉を、読むだけでなく実際に動作して覚えると、記憶に残りやすくなります。この「実演効果」を調べた145件の行動実験をまとめると、効果の大きさは平均でg=1.23でした。心理学の研究ではかなり大きな値です。比べる相手は、読むだけ、人の動作を見るだけ、頭の中で思い描くだけ、などでした。

対象: 145件の行動実験と、脳画像の研究7件、患者の研究31件 / 限界: 母語の動作の言葉を覚える実験が中心で、外国語の単語の研究ではありません。著者らは、効果の主な理由は「動きを計画すること」で、実際に体を動かすことは2番目の理由だと考えています。

Mayerら(2015)[3]

外国語の単語を、身ぶりをしながら覚える方法、絵を見ながら覚える方法、言葉だけで覚える方法で比べました。身ぶりをしながら覚えた方法が、よく使われる絵を使う方法より効率がよく、どちらも言葉だけより成績がよい結果でした。

対象: 外国語の単語を学んだ大人 / 限界: 実験室で、決められた単語のセットを覚えた研究です。

Repettoら(2017)[4]

抽象的な意味の単語30語を、約35分の練習で覚えてもらいました。身ぶりをつけた単語は、母語の訳を書き出すテストで、読むだけや絵を見た場合より多く思い出されました。一方、外国語の単語そのものを書き出すテストや、母語から外国語に訳すテストでは、覚え方による差は出ませんでした。

対象: イタリアの大人20人(17〜47歳) / 限界: 人数が少なく、練習の直後しか測っていません。著者ら自身が「部分的な」支持だとしています。

Macedoniaら(2019)[5]

女性の演者が身ぶりをするのを見ながら、作られた言語の単語30語を覚えてもらいました。身ぶりを見て覚えた単語は、母語の訳を書き出すテストで、文字だけで覚えた単語より多く思い出されました。しかし、単語と訳を組にして書くテストや、訳すテストでは差がありませんでした。

対象: オーストリアのグラーツ大学の学生31人(母語はドイツ語) / 限界: 後日のテストでは、どの覚え方でも思い出せた割合が約2〜22%と低く、はっきりした差は確かめられませんでした。

Oppiciら(2023)[2]

外国語の単語を「自分で身ぶりをして覚える」場合と「人の身ぶりを見て覚える」場合を比べた7件の研究をまとめました。309人分のデータで、2つの覚え方の差はほとんどありませんでした(標準化平均差0.05)。身ぶりは、見るだけでも効果が出る可能性があります。

対象: 参加者309人(7件の研究。研究ごとの平均年齢は11.5〜25.5歳) / 限界: 研究の数が少なく、証拠の確かさは「低い」と評価されています。覚えた単語は8〜45語でした。

研究くらべたこと結果
Robertsら(2022)動作して覚える/読むだけ等動作したほうが記憶に残る(145件)
Mayerら(2015)身ぶり/絵/言葉だけ身ぶりが最もよく、絵も言葉だけよりよい
Repettoら(2017)身ぶり/絵/読むだけ母語の訳を書き出すテストで身ぶりが上。母語から外国語に訳すテストは差なし
Macedoniaら(2019)身ぶりを見る/音つき/文字だけ直後の母語の書き出しで差。訳すテストは差なし
Oppiciら(2023)自分でする/見るだけほぼ同じ(7件、309人)

まとめると、身ぶりは「思い出す手がかり」を増やす方法として期待できます。ただし、外国語の単語では、訳語を正確に答えられるところまで効果がはっきり出ない実験もあります。身ぶりだけに頼らず、思い出すテストと組み合わせるのが安全です。

03 今日からできる小さな一歩身ぶりで英単語を覚えるには、どうする?

体で表しやすい単語を選び、意味に合った身ぶりを決めます。単語を声に出しながら身ぶりをくり返し、最後に日本語を見て英語を思い出すテストで確かめます。

1

体で表しやすい単語を5〜10語選ぶ

「飲む」「投げる」「重い」のような動作や物の単語が向いています。まとめの研究でも、多くは具体的な単語を使っていました[2]。

所要 2分

2

意味に合った身ぶりを1つ決める

たとえば「drink(飲む)」なら、手をコップの形にして口に運びます。研究でもよく使われた例です[2]。意味と合わない身ぶりは、合う身ぶりより成績が下がった研究があります[7]。

所要 1語10秒

3

単語を声に出しながら、身ぶりをくり返す

「drink」と言いながら手を口に運ぶ、を数回くり返します。まとめの研究に入った実験では、1語あたり平均17回ほどを、1〜4回の練習に分けてくり返していました[2]。

所要 5分

4

日本語を見て、英語を思い出すテストをする

訳すテストでは身ぶりの差が出なかった実験もあります[4][5]。日本語を見て英語を言えるかで確かめ、言えなかった単語だけもう一度身ぶりをつけて覚えます。

所要 3分

04 続けるためのコツ電車の中など、体を動かせない場所ではどうする?

身ぶりを見るだけでも、自分で動くのと近い効果が出たという分析があります。家で決めた身ぶりを、外では頭の中で思い出すだけにしても、まず続けることを優先します。

05よくある質問

ジェスチャーで覚えた英単語は、長く覚えていられますか?

長期の効果は、まだはっきりしていません。Macedoniaら(2019)の実験では、後日のテストでどの覚え方でも思い出せた割合が約2〜22%と低く、差は確かめられませんでした。Oppiciら(2023)も、長い期間で調べる研究が必要だとしています。身ぶりで覚えた後も、日をあけて思い出す練習を続けるのがおすすめです。

抽象的な単語にも身ぶりは使えますか?

効果は部分的です。Repettoら(2017)は抽象的な単語30語で調べ、母語の訳を書き出すテストでは身ぶりをつけた単語がよく思い出されましたが、母語から外国語に訳すテストでは差がありませんでした。抽象的な単語は、意味を連想させる身ぶりを工夫するか、ほかの覚え方と組み合わせます。

自分で動くのと、人の身ぶりを見るのとでは、どちらがいいですか?

大きな差は見られていません。Oppiciら(2023)が7件の研究、309人分をまとめた分析では、自分で身ぶりをする場合と見るだけの場合で、成績はほぼ同じでした。ただし研究の数が少なく、証拠の確かさは低いと評価されています。動ける場所では自分で動き、動けない場所では見る、と使い分けられます。

出典

  1. Roberts, B. R. T., MacLeod, C. M., & Fernandes, M. A. (2022). The enactment effect: A systematic review and meta-analysis of behavioral, neuroimaging, and patient studies. Psychological Bulletin, 148(5-6), 397-434. https://doi.org/10.1037/bul0000360
  2. Oppici, L., Mathias, B., Narciss, S., & Proske, A. (2023). Benefits of enacting and observing gestures on foreign language vocabulary learning: A systematic review and meta-analysis. Behavioral Sciences, 13(11), 920. https://doi.org/10.3390/bs13110920
  3. Mayer, K. M., Yildiz, I. B., Macedonia, M., & von Kriegstein, K. (2015). Visual and motor cortices differentially support the translation of foreign language words. Current Biology, 25(4), 530-535. https://doi.org/10.1016/j.cub.2014.11.068
  4. Repetto, C., Pedroli, E., & Macedonia, M. (2017). Enrichment effects of gestures and pictures on abstract words in a second language. Frontiers in Psychology, 8, 2136. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.02136
  5. Macedonia, M., Repetto, C., Ischebeck, A., & Mueller, K. (2019). Depth of encoding through observed gestures in foreign language word learning. Frontiers in Psychology, 10, 33. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00033
  6. Mathias, B., Waibel, A., Hartwigsen, G., Sureth, L., Macedonia, M., Mayer, K. M., & von Kriegstein, K. (2021). Motor cortex causally contributes to vocabulary translation following sensorimotor-enriched training. Journal of Neuroscience, 41(41), 8618-8631. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.2249-20.2021
  7. Macedonia, M. (2025). Your body as a tool to learn second language vocabulary. Behavioral Sciences, 15(8), 997. https://doi.org/10.3390/bs15080997