記憶・学習

聞いたばかりの番号や用事を、すぐ忘れるのはなぜ?「一度に覚えられるのは4つほど」の短期記憶の研究

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電話機の数字のボタン
Photo: Lexlexlex / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

言われた番号を打ち込もうとしたら、もう思い出せない。頼まれた3つの用事のうち、1つを忘れている。そんなとき、記憶力が落ちたのかと心配になるかもしれません。でも、聞いたばかりのことを頭に置いておける量は、もともと3〜5個ほどしかありません。しかも、別のことを考えたとたんに押し出されやすいのです。短い記憶の仕組みを研究から整理しました。

3行でわかる

  1. 聞いたばかりのことを頭に置いておける量は、若い大人で3〜5個ほど。昔から言われてきた「7個」は、頭の中でくり返したり、まとめたりできる条件での数字だった。
  2. 3文字のアルファベットでも、18秒間ほかの作業(数を逆に数える)をさせると、ほぼ忘れてしまった。
  3. 忘れる原因は「時間がたつこと」より「ほかの情報との混ざり合い」が大きいとする研究が多い。ただ、時間による消え方もあるのかは、まだ決着していない。

01 悩みの正体聞いたばかりのことを、すぐ忘れるのはなぜ?

聞いたばかりのことは、ごく小さな「作業用の記憶」に置かれるからです。ここに一度に置けるのは3〜5個ほどで、くり返さずに別のことを考えると、すぐに押し出されてしまいます。

私たちの記憶には、長く残る記憶とは別に、いま使っている情報を一時的に置いておく場所があります。心理学では「短期記憶」や「ワーキングメモリ(作業記憶)」と呼びます。

机にたとえると、長く残る記憶は大きな本棚で、作業用の記憶は小さな机の上です。机の上には少ししか置けず、新しいものを置くと、前のものが落ちてしまいます。

02 科学的にわかっていること一度に覚えられるのは、本当に4つほど?

若い大人が一度に頭に置けるのは、意味のあるまとまりで3〜5個ほど、平均すると4個前後と考えられています。「7個」という有名な数字は、頭の中でくり返したり、まとめたりできる条件のものでした。

Cowan(2001・2010)[1][2]

さまざまな実験をまとめ直すと、一度に頭に置ける量は3〜5個、平均で約4個でした。1956年にMillerが示した「約7個」は、頭の中でくり返したり、いくつかを1つのまとまりにしたりできる条件での数字です。くり返しを止めるため、ずっと「the」と言わせながら覚えさせると、残ったのは約3個でした。

対象: 多くの実験研究の総まとめ(レビュー) / 限界: 何を1つの「まとまり」と数えるかで数字は変わる。なぜ4個ほどなのかは、まだはっきりしていない。

LuckとVogel(1997)[3]

目で見たものでも同じような限界がありました。色や線の向きは、一度に4つほどしか覚えておけませんでした。ただ、色と向きを持つ物なら、4つの物の両方の特徴を覚えておけました。限界は「特徴の数」より「物の数」で決まっていたのです。

対象: 画面に色の四角などを一瞬見せる実験 / 限界: 実験室の単純な図形の課題で、日常の物の記憶とは条件が違う。

PetersonとPeterson(1959)[4]

アルファベット3文字を見せたあと、数を逆に数えてもらいました。頭の中でくり返せない状態にすると、18秒後には3文字のほとんどを忘れていました。

対象: 1959年の実験室の実験 / 限界: のちに「時間で消えたのではなく、前の回の文字と混ざったのが原因」という反論が出た。その反論にも批判があり、決着していない[6]。

Bermanら(2009)・Rickerら(2016)[5][6]

頭の中でくり返せない条件で比べると、時間がたつだけで消える分はごく小さく、ほかの情報との混ざり合いのほうがずっと大きく記憶を弱めていました[5]。一方、別の研究者たちは、時間で消える仕組みも「おそらくある」とし、決着はまだついていないと書いています[6]。

対象: 言葉の短い記憶の実験と、60年分の研究の振り返り / 限界: 原因が時間か混ざり合いかは、研究者の間で今も議論が続いている。

3〜5個

若い大人が、聞いたり見たりしたばかりのことを一度に頭に置いておける量(意味のあるまとまりで)[2]

覚えておける数は、条件によって次のように変わりました[2]。

条件覚えておけた量
ばらばらの短い言葉を順番にくり返す(Millerのまとめ)約7個まで
くり返しやまとめる工夫を防いだとき(若い大人)3〜5個
「the」と言い続けて、頭の中でくり返せないとき約3個
ことわざや短い文など、長いまとまり3〜4個
7歳の子ども(色のついた図形の配置を覚える課題)約1.5個(年長の子どもや大人は約3個)

頭の中でくり返したり、まとめたりできるかどうかで、覚えておける量は大きく変わります。逆に言えば、この2つが今日からできる工夫になります。

03 今日からできる小さな一歩聞いたことをすぐ忘れないためには?

数字や用事は、3〜4個のかたまりにまとめ、声に出さずに頭の中でくり返します。そして、別のことを始める前に書き留めます。頭の中に長く置いておこうとしないことが大切です。

1

数字は、区切ってかたまりにする

11けたの番号を1けたずつ覚えると、置ける量をすぐ超えます。3〜4けたずつのかたまりにすれば、置く数は3つほどに減ります。

所要 数秒

2

使うまで、頭の中でくり返す

頭の中でくり返すと、短い記憶は保ちやすくなります。くり返せる長さは、声に出して約2秒分の言葉と考えられています[2]。長いものは区切って覚えます。

所要 使うまでの数秒〜数十秒

3

頼まれた用事は、1つの絵にまとめる

パン・牛乳・こしょうを買うなら、「こしょうの効いた牛乳にパンが浮かぶ」絵を思い浮かべる。こうすると3つが1つのまとまりになります[2]。

所要 10秒

4

別のことを始める前に、書き留める

ほかの情報が入ると、短い記憶は押し出されやすくなります[5]。スマホのメモや紙に、その場で残します。

所要 10〜20秒

04 続けるためのコツすぐ忘れるのは、記憶力が悪いから?

記憶力が特別に悪いからとは限りません。一度に頭に置ける量が少ないのは、多くの人に共通する仕組みです。忘れる前提で、まとめる・くり返す・書き留める習慣をつけるほうが確実です。

ついさっきの出来事を丸ごと忘れる、同じことを何度も聞き返すと周りに言われる、といった変化が続くときは、医師に相談してください。

05よくある質問

人が一度に覚えられるのは7個までではないのですか?

「7個前後」は1956年のMillerのまとめで有名になった数字です。その後の研究では、頭の中でくり返したり、まとめたりする工夫を防ぐと、若い大人で3〜5個ほど、平均で約4個になると考えられています。

聞いたことは何秒くらいで忘れますか?

条件しだいです。1959年の実験では、アルファベット3文字でも、数を逆に数えて頭の中でくり返せない状態にすると、18秒後にはほとんど忘れていました。くり返せる状態なら、もっと長く保てます。

忘れるのは、時間がたつからですか?

時間よりも、ほかの情報と混ざることのほうが大きいとする研究が多いです。くり返しを防いだ実験では、時間だけで消える分はごく小さいものでした。ただ、時間で消える仕組みも「おそらくある」とする研究者もいて、議論は続いています。

一度に覚えられる量は、人によって違いますか?

違います。一度に頭に置ける量には個人差があり、7歳の子どもでは大人より少ないという推定もあります。ただ、まとめ方やくり返し方を工夫すれば、多くの人が扱える量を増やせます。

出典

  1. Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87-114. https://doi.org/10.1017/S0140525X01003922
  2. Cowan, N. (2010). The magical mystery four: How is working memory capacity limited, and why? Current Directions in Psychological Science, 19(1), 51-57. https://doi.org/10.1177/0963721409359277
  3. Luck, S. J., & Vogel, E. K. (1997). The capacity of visual working memory for features and conjunctions. Nature, 390(6657), 279-281. https://doi.org/10.1038/36846
  4. Peterson, L. R., & Peterson, M. J. (1959). Short-term retention of individual verbal items. Journal of Experimental Psychology, 58(3), 193-198. https://doi.org/10.1037/h0049234
  5. Berman, M. G., Jonides, J., & Lewis, R. L. (2009). In search of decay in verbal short-term memory. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(2), 317-333. https://doi.org/10.1037/a0014873
  6. Ricker, T. J., Vergauwe, E., & Cowan, N. (2016). Decay theory of immediate memory: From Brown (1958) to today (2014). Quarterly Journal of Experimental Psychology, 69(10), 1969-1995. https://doi.org/10.1080/17470218.2014.914546