記憶・学習

覚えたい言葉は絵に描くと覚えやすい?「描画効果」の研究でわかった描き方のコツ

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鉛筆で描いた家並みのスケッチ
Photo: Members of the Lines family tbc / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

単語や用語を覚えるとき、ノートに何度も書き写していませんか。書いた量のわりに、あとで思い出せないこともあります。研究では、覚えたい言葉の意味を自分で絵にすると、書き写すより思い出しやすくなることが、複数の研究室の実験で確かめられています。ただし、落書きや見本の書き写しでは効果が弱く、順番を覚えたいときには向かないこともわかってきました。

3行でわかる

  1. 覚えたい言葉を絵に描くと、同じ時間書き写すより思い出しやすくなります。最初の研究チームが7つの実験で確かめ、別の研究室の追試でも同じ結果が出ました。
  2. 効くのは「意味を自分で描く」ときです。内容と関係ない落書きは記憶を下げ、見本を写す描き方は自分で考えて描くより効果が弱めでした。
  3. 順番を覚えたいときや、図の多い動画教材では、絵より黙読や要約のほうが向いていた研究があります。描く時間も、要約より長くかかりました。

01 悩みの正体なぜ書き写すだけでは覚えにくい?

書き写すときは、言葉の形をなぞるだけで意味を考えなくても手が動くからです。絵に描くには、意味を考え、形を思い浮かべ、手を動かす必要があり、研究者はこの3つが1つの記憶にまとまるため思い出しやすくなると考えています。

「りんご」を10回書くのは、ほとんど考えずにできます。ところが「りんご」の絵を描こうとすると、丸い形、へた、色を思い浮かべ、それを手で紙に表す必要があります。

描画効果を最初にくわしく調べた研究チームは、絵を描くと「意味」「見た目」「手の動き」の情報が1つの記憶にまとまると説明しています[1]。手がかりが多いほど、あとで思い出すときの入り口が増えます。

覚え方頭の中で起きること研究での結果
書き写す言葉の形をなぞる描くより思い出しにくい
意味を自分で絵にする意味・見た目・手の動きを結びつける思い出しやすい
見本の絵を写す形をまねる効果はあるが、自分で描くより弱め
内容と関係ない落書き注意が別のことに向く書き写すより思い出しにくい

02 科学的にわかっていること絵に描く覚え方は、本当に効く?

単語のリストを覚える実験では、描くほうが書き写すより思い出しやすいという結果が、別の研究室でもくり返し出ています。一方、順番の記憶や図の多い授業では効かなかった研究もあり、使いどころがあります。

研究調べたこと結果
Wammes ら(2016)[1]単語を描くか書くか(7つの実験)描いた単語のほうが思い出しやすかった
Huff ら(2024)[2]別の研究室での追試(3つの実験)同じ効果が出たが、条件で大きさが変わった
Namias・Huff(2025)[3]見本を写すか、自分で描くか自分で描くほうが効果が大きかった
Meade ら(2019)[4]落書き・描く・書くの比較落書きは最も思い出しにくかった
Jonker ら(2019)[5]覚えた順番の記憶順番は黙読のほうがよく覚えていた
Lawson・Mayer(2024)[8]アニメーション教材での学習描いても成績は上がらず、要約は上がった

Wammes・Meade・Fernandes(2016)[1]

単語のリストを見せ、1語ずつ「絵に描く」か「書き写す」かをしてもらい、あとで思い出せる単語を書き出してもらいました。7つの実験すべてで、描いた単語のほうがよく思い出されました。描く時間を短くしても、リストを長くしても、描くほうが有利でした。意味を深く考えるだけ、頭の中で絵を思い浮かべるだけ、絵を眺めるだけでは、この差を説明できませんでした。

対象: 7つの実験 / 限界: 覚えたのは描きやすい具体的な単語のリストで、教科書の内容ではありません。

Huff・Namias・Poe(2024)[2]・Namias・Huff(2025)[3]

最初の研究チームとは別の研究室が行った追試です。3つの実験で、描画効果は思い出すテストでも見分けるテストでも出ました。ただし、描く単語と書く単語を1つのリストに混ぜたときのほうが効果は大きく、その一部は「書いた単語が忘れられやすくなる」ことによるものでした。2025年の研究では、見本の絵を写すより、自分で別の絵を考えて描くほうが効果が大きくなりました。

対象: 単語や、単語と絵の組み合わせを覚える実験 / 限界: すべてを描いて覚える場合(混ぜないリスト)は効果が小さめになります。混ぜたリストでの大きな効果は、すべてを描いて覚える実際の使い方より大きく見えている可能性があります。

Meade・Wammes・Fernandes(2019)[4]

単語を聞きながら「その単語の絵を描く」「書き写す」「関係ない落書きをする」の3つを比べました。描いた単語が最もよく思い出され、自由な落書きをしながら聞いた単語は最も思い出しにくくなりました。印刷された図形を塗りつぶす落書きは、書き写すのと同じくらいでした。

対象: 3つの実験。2つめでは物語の中に覚える単語を入れて、授業に近い場面を再現 / 限界: 同じ研究チームによる実験です。

Jonker・Wammes・MacLeod(2019)[5]

描くと1つ1つの単語はよく覚えられましたが、「どの順番で出てきたか」は、黙読したときのほうがよく覚えていました。著者らは、1語ずつ描くことに集中すると、単語どうしのつながりが記憶に残りにくくなると考えています。

対象: 3つの実験 / 限界: 著者らは、個々の項目を覚えたいなら描く、順番を覚えたいなら黙読がよいと勧めています。

Lawson・Mayer(2024)[8]

温室効果ガスについてのアニメーション教材で、合間に「要約を書く」「図を描く」「両方」「何もしない」の4つを比べました。要約を書いた人はテストの点が上がりましたが(効果の大きさ d=0.48 と 0.54)、図を描いた人は何もしない人と差がありませんでした。1つめの実験では、描く作業に平均11分以上かかり、要約の約4分半の2倍以上でした。

対象: アメリカの大学生203人(すぐにテスト)と130人(1週間後にテスト) / 限界: 描き方の練習なしで、画面の図を写すだけになった可能性があると著者が述べています。文章中心の教材では、描くほうが良かった研究が28本中26本あったとも紹介しています。

ほかにも、教科書の定義を覚える実験では、描くのは書き写すより効果的で、自分の言葉で言い換えるのと同じくらいでした[6]。高齢の人や認知症の可能性がある人でも、40秒ずつ30語を描いたり書いたりすると、描いた語のほうがよく思い出されました[7]。

03 今日からできる小さな一歩絵に描いて覚えるには、どう描けばいい?

覚えたい言葉を1つずつ、意味を表す簡単な絵にします。見本は写さず、自分で考えて描きます。うまさは関係なく、棒人間や記号で十分です。描いたあとは、絵を見ずに言葉を思い出す練習につなげます。

1

覚えたい言葉を5〜10個に区切る

英単語、用語、人の名前など、1つずつ独立して覚えたいものを選びます。描画効果が確かめられているのは、この「1つずつ覚える」場面です[1][2]。

所要 1分

2

意味を自分で考えて、簡単な絵にする

教科書の図をそのまま写すより、自分で場面を考えて描くほうが効果は大きくなりました[3]。抽象的な言葉は、例になる場面を描きます(「節約」なら財布に硬貨を戻す手など)。高齢の人を対象にした研究では、1語40秒ずつ描いていました[7]。

所要 1語40秒ほど

3

描きにくい言葉は、自分の言葉で言い換える

定義を覚える実験では、自分の言葉で言い換えるのも描くのと同じくらい効果がありました[6]。絵にならない言葉は、無理に描かずに言い換えに切り替えます。

所要 1語1分

4

翌日、絵を見ずに言葉を思い出す

描いたページを閉じて、言葉と意味を思い出して書き出します。思い出す練習そのものの効果は、テスト効果の記事にまとめています。

所要 5分

04 続けるためのコツ絵に描く覚え方が向かないのは、どんなとき?

順番を覚えたいとき、図やアニメーションの多い教材、時間が限られているときは、ほかの方法のほうが向いていることがあります。覚えたい内容に合わせて使い分けるのがコツです。

05よくある質問

絵が下手でも効果はある?

研究で描いてもらったのは、短い時間で描く簡単な絵でした。描く時間を短くしても、描いた単語のほうが思い出しやすいという結果は変わりませんでした。大切なのは上手さより、意味を考えて自分で描くことです。

英単語を覚えるのにも使える?

使えます。描画効果が確かめられているのは、単語を1つずつ覚える場面です。ただ、実験の多くは描きやすい具体的な単語でした。抽象的な単語は、例になる場面を描くか、自分の言葉で意味を言い換えるとよいでしょう。

ノートを全部絵にしたほうがいい?

おすすめしません。順番の記憶は描くと弱くなった研究があり、図の多い教材では描いても成績が上がらなかった研究もあります。描く作業は時間もかかるので、覚えにくい言葉に絞って使うのが現実的です。

描いて覚えるのは子どもや高齢の人にも効く?

高齢の人や認知症の可能性がある人を対象にした研究でも、描いた単語のほうが思い出しやすくなりました。この記事で調べた研究は大学生や高齢の人が対象で、子どもでも同じように効くかは確かめていません。

出典

  1. Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2016). The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 69(9), 1752-1776. https://doi.org/10.1080/17470218.2015.1094494
  2. Huff, M. J., Namias, J. M., & Poe, P. (2024). The drawing effect: Evidence for costs and benefits using pure and mixed lists. Memory & Cognition, 52(6), 1408-1421. https://doi.org/10.3758/s13421-024-01551-6
  3. Namias, J. M., & Huff, M. J. (2025). Generating drawings enhances the drawing effect relative to replicating drawings. Memory, 33(10), 1242-1252. https://doi.org/10.1080/09658211.2025.2562002
  4. Meade, M. E., Wammes, J. D., & Fernandes, M. A. (2019). Comparing the influence of doodling, drawing, and writing at encoding on memory. Canadian Journal of Experimental Psychology, 73(1), 28-36. https://doi.org/10.1037/cep0000170
  5. Jonker, T. R., Wammes, J. D., & MacLeod, C. M. (2019). Drawing enhances item information but undermines sequence information in memory. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 45(4), 689-699. https://doi.org/10.1037/xlm0000610
  6. Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2017). Learning terms and definitions: Drawing and the role of elaborative encoding. Acta Psychologica, 179, 104-113. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2017.07.008
  7. Meade, M. E., Ahmad, M., & Fernandes, M. A. (2020). Drawing pictures at encoding enhances memory in healthy older adults and in individuals with probable dementia. Aging, Neuropsychology, and Cognition, 27(6), 880-901. https://doi.org/10.1080/13825585.2019.1700899
  8. Lawson, A. P., & Mayer, R. E. (2024). Generative learning activities for online multimedia learning: When summarizing is effective but drawing is not. Frontiers in Psychology, 15, 1452385. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1452385