「自分は視覚型」に合わせて勉強すると覚えやすい? 学習スタイルの研究で調べた

「自分は視覚型だから、図で覚えたほうがいい」「聴覚型だから、聞き流しで覚えよう」。こうした学習スタイルの考え方は、学校や本でよく紹介されています。ところが研究では、自分のタイプに合わせて勉強しても、覚える量はほとんど変わらないという結果が中心です。この記事では、その根拠と、代わりに効く方法を整理します。
3行でわかる
- 判定は「当てにならない」寄り。2008年の総説は、タイプに合わせると成績が上がるという証拠はほぼ無く、反対の結果もあると結論しました。
- 2024年のメタ分析(21研究・1,712人)では全体で小さな差が出ましたが、説が予想する形になったのは成績の指標の26%だけでした。
- 好みの方法は「覚えやすい気がする」感覚とは結びつきますが、実際の成績とは結びつきませんでした。思い出す練習や復習の間隔のほうが、誰にでも効く方法として確かめられています。
01 悩みの正体学習スタイルに合わせる勉強法とは?
人には「視覚型」「聴覚型」などのタイプがあり、タイプに合う形で学ぶと身につきやすい、という考え方です。研究者は「メッシュ仮説(合わせれば伸びる説)」と呼んでいます。
学習スタイルの診断では、ふつう「図と文章のどちらが好きか」「聞くのと読むのとどちらが好きか」をたずねます。よく知られたものに、視覚・聴覚・読み書き・体を動かす、の4つに分けるVARKがあります[3]。
「好み」があること自体は、研究でも確かめられています。問題は、その好みに合わせると本当に覚える量が増えるのかという点です[1]。
02 科学的にわかっていることタイプに合わせると、本当に覚えやすくなる?
ほとんど変わらない、というのが研究の中心的な結論です。小さな差を示したメタ分析もありますが、説が予想する形の結果は少なく、研究の質も低いとされています。
Pashlerら(2008)[1]
学習スタイルの研究を検証した総説です。説を確かめるには、タイプ別に分けた人を、それぞれ違う教え方にくじ引きで割り当て、同じテストで比べる必要があります。そのうえで「視覚型は図で、聴覚型は音で」のように、タイプごとに一番良い方法が入れ替わる結果が必要です。そうした結果はほぼ見つからず、正しい方法で調べた研究のいくつかは、説とはっきり反対の結果でした。
対象: 既存研究の総説 / 限界: 試されていない種類の学習スタイルもあり、すべてが否定されたわけではないと著者らも書いています。
Clinton-Lisell・Litzinger(2024)[2]
21の研究(101の効果量、1,712人)をまとめたメタ分析です。全体では、タイプに合わせた教え方に小さな利点が出ました(効果量 g = 0.31)。ただし、2つ以上のタイプがそれぞれ自分に合う方法で得をした(説が予想する形の)指標は26%だけでした。著者らは、研究の質の低さや手間を考えると、効果は小さく、まれで、広く取り入れるほどではないと結論しています。
対象: 21の研究 / 限界: 英語の研究のみ。分析に必要な数値を得られなかった研究もある。
Husmann・O'Loughlin(2019)[3]
解剖学を学ぶ大学生426人に、VARKの診断と、ふだんの勉強法を答えてもらいました。多くの学生は、自分のタイプに合った勉強法をしていませんでした。また、どのタイプの点数も、授業の成績とは関係がありませんでした。タイプに合う勉強法をしているかどうかも、成績とは関係がありませんでした。一方で、一部の勉強法そのもの(バーチャル顕微鏡を使うなど)は成績と関係していました。
対象: 大学生426人 / 限界: 1つの授業での調査で、くじ引きで勉強法を割り当てた実験ではない。
Knollら(2017)[4]
言葉と絵のどちらが好きかを質問票で調べたうえで、単語のペアと絵のペアを覚えてもらいました。言葉が好きな人は単語を、絵が好きな人は絵を「よく覚えられた」と感じていました。しかし、実際に思い出せた量は、好みとは関係がありませんでした。
対象: 大学の実験参加者 / 限界: 単語と絵のペアを覚える、短い実験室の課題。
| 研究 | 合わせると覚えやすい? |
|---|---|
| Pashlerら(2008)総説 | 裏づける結果はほぼ無し。反対の結果もあった |
| Clinton-Lisellら(2024)21研究 | 小さな差。説の形になったのは指標の26% |
| Husmannら(2019)426人 | タイプも、タイプに合う勉強も成績と無関係 |
| Knollら(2017)実験 | 「覚えた感じ」は好みと一致、実際の記憶は無関係 |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。それでも学習スタイルの考えは根強く、2021年の調査では、医療系の教育分野で見つかった学習スタイルの論文112本のうち91%が、役に立つ前提で書かれていました[5]。「合う気がする」という感覚が、信じられ続ける理由の1つだと考えられています[4]。
03 今日からできる小さな一歩タイプ分けの代わりに、何をすればいい?
タイプに関係なく効果が確かめられている方法を使うのが近道です。特に、何も見ずに思い出す練習と、日をあけた復習は、多くの実験で効果が示されています。
形式は「内容」に合わせて選ぶ
地図や体のしくみは図で、発音は音で、というように、覚える内容に合う形を選びます。自分のタイプではなく、内容で選ぶのがポイントです(研究の結果から考えた工夫です)。
所要 1分
04 続けるためのコツ「合う気がする」方法は、信じていい?
続けやすさの目安にはなりますが、覚えられているかどうかの目安にはなりません。手ごたえは、実際に思い出せるかで確かめるのが確実です。
- 手ごたえより、小テストで確かめる: 「覚えた感じ」と実際の記憶はずれることがあります[4]。理由は「わかったつもり」の研究にまとめています。
- 好きな方法は捨てなくていい: 好みの方法を土台に、思い出す練習を足すだけで十分です。
- タイプの診断結果で自分を決めつけない: 「聴覚型だから図は苦手」と思い込むと、内容に合った方法を選びにくくなります。
05よくある質問
視覚型・聴覚型の学習スタイルは本当にある?
「絵で見たい」「聞いて覚えたい」という好みは、多くの人が持っています。ただ、その好みに合わせて教えたり勉強したりすると成績が上がる、という証拠はほとんどありません。2008年の総説は、学習スタイル診断を教育に取り入れる根拠は不十分だと結論しました。
好きな方法で勉強するのは悪いこと?
悪くはありません。好きな方法は続けやすい面があります。ただし、「自分に合う」と感じることと、実際に覚えられることは別です。好みの方法を土台に、思い出す練習や復習の間隔をあける工夫を足すのがおすすめです。
2024年のメタ分析では効果があったのでは?
全体では小さな差(効果量 g = 0.31)が出ました。ただし、学習スタイル説が予想する形(それぞれのタイプが自分に合う方法で得をする)になったのは、成績の指標の26%だけでした。著者らも、研究の質が低いことなどから、広く取り入れるほどの効果ではないと結論しています。
出典
- Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105-119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x
- Clinton-Lisell, V., & Litzinger, C. (2024). Is it really a neuromyth? A meta-analysis of the learning styles matching hypothesis. Frontiers in Psychology, 15, 1428732. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1428732
- Husmann, P. R., & O'Loughlin, V. D. (2019). Another nail in the coffin for learning styles? Disparities among undergraduate anatomy students' study strategies, class performance, and reported VARK learning styles. Anatomical Sciences Education, 12(1), 6-19. https://doi.org/10.1002/ase.1777
- Knoll, A. R., Otani, H., Skeel, R. L., & Van Horn, K. R. (2017). Learning style, judgements of learning, and learning of verbal and visual information. British Journal of Psychology, 108(3), 544-563. https://doi.org/10.1111/bjop.12214
- Newton, P. M., Najabat-Lattif, H. F., Santiago, G., & Salvi, A. (2021). The learning styles neuromyth is still thriving in medical education. Frontiers in Human Neuroscience, 15, 708540. https://doi.org/10.3389/fnhum.2021.708540


