記憶・学習

暗記はできたのに、応用問題になると解けないときは? 覚えた知識を「使える力」にする研究

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漢字ドリルに書き込む子どもの手
Photo: Tatsuo Yamashita / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

用語も公式も覚えたのに、問題の形が少し変わると手が止まる。それは勉強が足りないからというより、「覚えたことを思い出す練習」と「知識を新しい問題に使う練習」が別物だからかもしれません。研究では、思い出す練習(自分でテストする勉強)は応用問題にも効く一方、問題の形が変わると効果は小さくなりました。立て直しの鍵は、応用問題そのものを、例を変えながら練習することでした。

3行でわかる

  1. 67本の論文・10,382人分をまとめたメタ分析では、自分でテストする勉強は、新しい問題を解く力(転移)も高めた(効果量d=0.40)。ただし効果は暗記の成績より小さめだった。
  2. 転移が大きかったのは、応用問題や推論問題への転移。練習の答え方と本番の答え方が近いこと、くわしく思い出す練習をしたことが効果を左右した。
  3. 同じ応用問題を3回解くより、違う例の応用問題を3問解いたほうが、2日後の新しい応用問題の成績がよかった(4つの実験すべて)。

01 悩みの正体暗記できたのに応用問題が解けないのはなぜ?

練習でやったことと、本番で求められることがずれているからだと考えられます。一問一答で用語を思い出す練習は、その用語を答える力を鍛えますが、新しい場面に当てはめる力は、そのままでは育ちにくいのです。

覚えた知識を、初めて見る問題や場面に使えることを、心理学では「転移」と呼びます。PanとRickard(2018)のメタ分析(多くの研究を統合する分析)によると、転移が最も起きにくかったのは、練習した問いと答えの組み合わせを並べ替えただけの問題でした[1]。練習では見ていない内容を問われたときも、転移は弱くなりました[1]。

つまり、「覚えた」と「使える」のあいだには段差があります。わかったつもりになる仕組みは読んだのに覚えていない理由の研究で、自分でテストする勉強そのものはテスト効果の研究で紹介しています。

02 科学的にわかっていること自分でテストする勉強は、応用問題にも効く?

効きます。ただし、暗記した問題そのものへの効果より小さく、条件しだいです。応用問題の形で練習したとき、くわしく思い出したとき、練習の正答率が高かったときに、新しい問題への効果が出やすくなりました。

PanとRickard(2018)[1]

40年以上の研究から、192の効果量(122の実験、10,382人)をまとめました。自分でテストする勉強は、読み直すだけの勉強より、新しい問題を解く力を高めました(効果量d=0.40)。とくに応用問題・推論問題、医学の診断問題への転移が大きくなりました。

対象: 67本の論文 / 限界: 出版の偏りを補正すると、答え方の近さ・くわしく思い出す練習・練習の正答率のどれもないときは、転移がないと推定されることが多くなりました。

d=0.40

自分でテストする勉強が、読み直すだけの勉強とくらべて新しい問題を解く力を高めた効果量(122の実験・10,382人のメタ分析)[1]

Butler(2010)[2]

文章を読んだあと、テストをくり返すグループと、読み直しをくり返すグループに分けた4つの実験です。1週間後、同じ問題だけでなく、同じ分野の新しい推論問題や、別の分野に知識を当てはめる問題でも、テストをくり返したグループのほうが成績がよくなりました。

対象: 4つの実験の参加者 / 限界: 実験室で文章を学ぶ研究で、学校の長い単元で同じ結果になるかは別に確かめる必要があります。

Butler、Black-Maier、Raley、Marsh(2017)[3]

地学の講義動画を見たあと、応用問題を解いて練習しました。片方は同じ問題を3回、もう片方は違う例の問題を3問解きました。2日後に新しい応用問題を解くと、4つの実験すべてで、違う例で練習したほうが成績がよくなりました。

対象: 4つの実験の参加者 / 限界: 練習から本番まで2日の研究で、もっと長い期間の効果は確かめられていません。

OpitzとKubik(2024)[4]

145人が、作られた人工の言語の例文で学びました。穴埋めテストで練習したグループは、例文を読み直したグループより、1週間後に初めて見る文が文法的に正しいかを見分ける成績がよくなりました。著者らは、丸暗記ではなく、背後のルールを学べたためと考えています。

対象: 145人(2回とも参加したのは117人) / 限界: 人工の言語を使った実験で、実際の外国語や教科の学習にどこまで当てはまるかは今後の課題です。

Sigayretら(2026)[5]

オンラインの実験サイトで、67人と129人に2つの実験を行いました。テストで練習したグループと読み直したグループのあいだで、後日のテストの成績に差は出ませんでした。用語の意味を問う問題でも、新しい場面に当てはめる応用問題でも同じでした。

対象: 67人と129人 / 限界: 著者らは、テストする勉強の効果そのものを否定する結果ではなく、オンラインの参加者が深く取り組みにくいことが影響した可能性を指摘しています。

研究練習の仕方新しい問題での結果
メタ分析(10,382人)[1]自分でテスト vs 読み直しテストが上(d=0.40)。応用・推論問題で大きい
4つの実験[2]テストをくり返す vs 読み直す1週間後の推論問題でテストが上
4つの実験[3]違う例の応用問題 vs 同じ問題2日後の新しい応用問題で違う例が上
145人[4]穴埋めテスト vs 読み直し1週間後、初めて見る文の判断でテストが上
67人・129人(オンライン)[5]テスト vs 読み直し差なし

オランダのフローニンゲン大学の研究者らによる2026年のレビューも、テストする勉強の効果は単なる記憶にとどまらず、新しい場面や問題への応用にも広がると整理しています[6]。ただし、ここで見たように、効果が出なかった研究もあります。

03 今日からできる小さな一歩覚えた知識を、応用問題で使えるようにするには?

一問一答を卒業し、応用問題の形で思い出す練習に切り替えます。同じ問題をくり返すより、同じ考え方を使う違う例の問題を何問か解き、答え合わせまでします。

1

本番と同じ形の問題で練習する

練習の答え方と本番の答え方が近いほど、転移が起きやすくなりました[1]。本番が応用問題なら、練習も応用問題にします。問題集の応用問題を1日1問から始めます。

所要 10〜15分

2

同じ考え方を使う、違う例の問題を3問解く

同じ問題を3回解くより、違う例の問題を3問解いたほうが、新しい問題の成績がよくなりました[3]。例えば同じ公式を使う問題を、場面の違う3問で解きます。

所要 15〜20分

3

「なぜそうなるか」まで思い出して説明する

用語だけでなく、理由や仕組みまでくわしく思い出す練習は、転移を左右する条件の1つでした[1]。答えを書いたら、「なぜこの考え方を使うのか」を1文で書き足します。

所要 1問2分

4

答え合わせをして、解けなかった問題は日を置いて解き直す

練習でうまく思い出せたかどうかも、転移に影響していました[1]。解けなかった問題は解説を読んだあと、数日後にもう一度、何も見ずに解きます。

所要 10分

04 続けるためのコツ応用問題の練習が、つらくて続かないときは?

応用問題で間違えるのは、練習としてうまくいっている途中の姿です。解けない問題が多いときは、まず基本の知識を思い出せるかを確かめ、それから応用に進む順番にします。

05よくある質問

暗記はできるのに応用問題が解けないのは、頭が悪いからですか?

そうとは言えません。研究では、覚えた問いと答えの組み合わせを練習しても、形の変わった問題への転移は起きにくいことがわかっています。PanとRickard(2018)のメタ分析では、応用問題や推論問題の形で練習したときに、新しい問題への効果が大きくなりました。練習の形を本番に近づけることが立て直しの近道です。

一問一答の暗記は、応用問題の役に立たないのですか?

役に立たないわけではありません。自分でテストする勉強は、読み直すだけより新しい問題を解く力を高めました(効果量d=0.40)。ただし効果は小さめで、条件しだいです。基本の知識を一問一答で固めたら、応用問題の形で思い出す練習を足すのがよいでしょう。

同じ問題集を何周もすれば、応用力はつきますか?

同じ問題のくり返しだけでは足りない可能性があります。Butlerら(2017)の4つの実験では、同じ応用問題を3回解くより、違う例の応用問題を3問解いたほうが、2日後の新しい応用問題の成績がよくなりました。何周もするなら、別の問題集や違う例の問題を混ぜると効果的です。

出典

  1. Pan, S. C., & Rickard, T. C. (2018). Transfer of test-enhanced learning: Meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin, 144(7), 710-756. https://doi.org/10.1037/bul0000151
  2. Butler, A. C. (2010). Repeated testing produces superior transfer of learning relative to repeated studying. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36(5), 1118-1133. https://doi.org/10.1037/a0019902
  3. Butler, A. C., Black-Maier, A. C., Raley, N. D., & Marsh, E. J. (2017). Retrieving and applying knowledge to different examples promotes transfer of learning. Journal of Experimental Psychology: Applied, 23(4), 433-446. https://doi.org/10.1037/xap0000142
  4. Opitz, B., & Kubik, V. (2024). Far transfer of retrieval-practice benefits: Rule-based learning as the underlying mechanism. Cognitive Research: Principles and Implications, 9, 65. https://doi.org/10.1186/s41235-024-00598-y
  5. Sigayret, K., Parmentier, J.-F., & Silvestre, F. (2026). Testing the testing effect on Prolific: When retrieval practice fails to boost learning. Frontiers in Psychology, 17, 1727423. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1727423
  6. Wilschut, T., Sense, F., & van Rijn, H. (2026). Trends in testing effect research: From lab to classroom, but not yet for all learners. npj Science of Learning, 11, 25. https://doi.org/10.1038/s41539-026-00400-2