気分・ストレス

HSP(繊細さん)は本当にいる? 敏感さの研究でわかったこと・まだわからないこと

約8分で読めます

机の上のヘッドホンと、書類が積み重なったトレー
Photo: Khairil Yusof / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

大きな音や人の機嫌にすぐ疲れて、「自分はHSPかも」と思ったことはありませんか。研究では、HSPは病気や診断名ではなく、誰にでもある「敏感さ」の程度の差だと考えられています。敏感さが高い人は、日本の大学生で約4人に1人でした。弱さと決めつけず、自分の敏感さとの付き合い方を研究から考えます。

3行でわかる

  1. 敏感さは「ある・なし」ではなく、誰にでもある連続した特性。低い人・中くらいの人・高い人が、およそ3割・4割・3割いる。
  2. 日本語版の研究では、敏感さは「刺激への敏感さ」「気持ちの揺れやすさ」「美しさへの感受性」の3つの面に分かれた。
  3. 敏感さが高くても心の調子がよい学生は、気持ちを外に出す・落ち着くまで待つ・わかってくれる人と話す、で対処していた。

01 悩みの正体HSPとは、どんな人のこと?

HSP(Highly Sensitive Person)は、音や光などの刺激や、人の気持ちを深く受けとりやすい人を指す言葉です。心理学者のアーロンらが1997年に測り方を作りました。医学の診断名ではありません。

研究の世界では「感覚処理感受性」と呼ばれます。アーロンらは7つの研究を重ね、27問の質問紙(HSP尺度)を作りました[1]。敏感さは、内向的なことや、気持ちが揺れやすいこととは一部重なるものの、別のものだと示しました[1]。

日本語版を作った髙橋(2016)の研究では、敏感さは次の3つの面に分かれました[2]。

面研究での名前たとえば
刺激への敏感さ低感覚閾大きな音、強い光やにおい、一度にたくさんのことが起きる状況がつらい
気持ちの揺れやすさ易興奮性やることが重なるとあわてる、人の気分に左右される、変化に混乱しやすい
美しさへの感受性美的感受性音楽や美術に深く感動する、繊細な香りや味を好む

3つの面は、人によって強さが違います。音や光のつらさが中心の人は、感覚過敏の対策の研究も参考になります。

02 科学的にわかっていることHSPの人は、どれくらいいる?

敏感さが高い人は、アメリカの大学生で31%、日本の大学生で26.8%でした。ただし敏感さは連続した特性で、HSPかどうかのはっきりした境目はありません。区切りの点は目安です。

Lionettiら(2018)[3]

HSP尺度に答えた人を統計で分けると、2つではなく3つのまとまりが見つかりました。敏感さが高い人が31%、低い人が29%、中くらいの人が40%です。敏感さそのものは、ほとんどの人が真ん中あたりに集まる、なだらかな分かれ方(正規分布)をしていました。

対象: アメリカの心理学専攻の大学生906人 / 限界: 著者自身が、区切りの点は「目安にすぎず、集団によって変わりうる」と書いています。

26.8%

日本の大学生692人のうち、敏感さが「高い」群に入った人の割合(低い群34.8%、中くらいの群38.4%)[5]

髙橋(2016)[2]

日本語版(19問・7段階)の平均点は、女性が89.15点、男性が83.07点で、女性のほうが高めでした(19〜133点)。日本の調査でも、敏感さは3つの面に分かれました。

対象: 日本の大学・専門学校の学生369人 / 限界: 若い学生だけで、大人全体にそのまま当てはまるかはわかりません。

Iimuraら(2023)[4]

19問から10問を選んだ短い日本語版を、18〜69歳の日本の大人1,626人で確かめました。平均は7段階で4.24点。約2か月あけて測り直しても、点数はおおむね同じでした。前向きな動画を見る実験では、敏感さが高い人ほど、見た後に気分がよくなりました。

対象: 日本の大人1,626人(ネット調査)ほか、計4つの研究 / 限界: 多くは自分で答える質問紙だけで確かめています。

03 今日からできる小さな一歩敏感で疲れやすい人は、どう対処するといい?

敏感さが高く心の調子がよい学生は、気持ちを外に出す、落ち着くまで時間を置く、わかってくれる人と話す、で対処していました。耐える・原因を考える、は調子が悪い学生に多い対処でした。

Yanoら(2021)[5]

日本の大学生692人に、ストレスへの対処を自由に書いてもらい、敏感さの群と心の調子ごとに言葉を分析しました。敏感さが高く調子がよい人には「前向きに考える」「泣く」「気持ちが落ち着くまで待つ」「わかってくれる人と話す」が多く見られました。調子が悪い人には「耐える」「原因を考える」「その場から逃げる」が多く見られました。

対象: 日本の大学生692人 / 限界: 1回だけの調査で、どの対処が調子をよくしたのか(原因と結果)はわかりません。

1

気持ちを外に出す

ノートに今の気持ちを1行書く、泣きたいときは泣く。気持ちに名前をつけるだけでも落ち着きやすいことは、気持ちを言葉にする研究で紹介しています。

所要 3分

2

すぐ答えを出さず、落ち着くまで待つ

言い返したい、決めたいと思っても、その場では動かず時間を置きます。静かな場所に移るのも手です。ひとりの時間と心の回復の研究も参考になります。

所要 15〜30分

3

わかってくれる人に話す

敏感さを否定しない人を1人決めて、話を聞いてもらいます。同じ悩みを長く繰り返し話し合うと、かえってつらくなる場合もあります。打ち明けることの研究で詳しく紹介しています。

所要 10分

04 続けるためのコツHSPかもと思ったら、どう受けとめればいい?

敏感さは、つらい環境で影響を受けやすい一方、よい環境からも多くを受けとる特性だと考えられています。点数は気分でも変わるので、「HSPかどうか」より、どの面が強いかを知る目安にとどめます。

05よくある質問

HSPは病気ですか? 病院で診断できますか?

HSPは病気でも、医学の診断名でもありません。研究では、誰にでもある敏感さの程度を、自分で答える質問紙で測っています。Lionettiら(2018)は、敏感さはなだらかに続く特性で、その上に低い・中くらい・高いのまとまりがあるとしています。心身の不調が続くときは、医療機関に相談してください。

HSPは日本に何人に1人くらいいますか?

日本の大学生692人を日本語版の質問紙で分けた研究では、敏感さが高い群は26.8%でした。アメリカの大学生906人の研究では31%です。区切りの点は目安なので、「約3〜4人に1人」くらいに考えるのが無難です。

HSPかどうか調べるには、どんな質問紙がありますか?

研究では、髙橋(2016)の19問の日本語版や、Iimuraら(2023)の10問の日本語版が使われています。どちらも7段階で答えます。ネットの簡単なチェックは研究で確かめた質問紙とは限らないので、結果は目安として受けとってください。

HSPは女性に多いのですか?

髙橋(2016)の日本の学生369人の調査では、日本語版の平均点は女性が89.15点、男性が83.07点で、女性のほうが高めでした。ただし平均の差で、男性にも敏感さが高い人はいます。

ツールで確かめる

無料・登録不要。入力した内容は送信しません。

感覚過敏きろく
つらかった音や光と、楽になった対処をタップで記録。苦手の傾向と、職場や学校に伝えるメモが作れる

出典

  1. Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345-368. https://doi.org/10.1037/0022-3514.73.2.345
  2. 髙橋亜希 (2016). Highly Sensitive Person Scale日本版(HSPS-J19)の作成. 感情心理学研究, 23(2), 68-77. https://doi.org/10.4092/jsre.23.2_68
  3. Lionetti, F., et al. (2018). Dandelions, tulips and orchids: evidence for the existence of low-sensitive, medium-sensitive and high-sensitive individuals. Translational Psychiatry, 8, 24. https://doi.org/10.1038/s41398-017-0090-6
  4. Iimura, S., Yano, K., & Ishii, Y. (2023). Environmental sensitivity in adults: Psychometric properties of the Japanese version of the Highly Sensitive Person Scale 10-Item Version. Journal of Personality Assessment, 105(1), 87-99. https://doi.org/10.1080/00223891.2022.2047988
  5. Yano, K., Endo, S., Kimura, S., & Oishi, K. (2021). Effective coping strategies employed by university students in three sensitivity groups: A quantitative text analysis. Cogent Psychology, 8(1), 1988193. https://doi.org/10.1080/23311908.2021.1988193
  6. Greven, C. U., et al. (2019). Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 98, 287-305. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2019.01.009