後回しにしている作業に手をつけるには?「願い・結果・障害・計画」の4ステップ(WOOP)を研究で調べた

「明日こそやる」と思っても、当日になると別のことを始めてしまう。そんなとき、研究で試されてきたのがWOOP(ウープ)という4ステップです。やりたいことと、その良い結果を思い描いたあと、邪魔になる「障害」を考え、「もしそうなったら、こうする」と書きます。24件の研究のまとめでは、小〜中程度の効果がありました。ただし、効果が出なかった研究や条件もあります。やり方と、効きやすい使い方をまとめます。
3行でわかる
- WOOPは「願い・結果・障害・計画」を順に考えて書く方法。24件・約1万6千人の研究のまとめで、目標の達成に小〜中程度の効果がありました(g=0.336)。
- 効果が出たのは、障害が「自分で対処できること」のとき。「時間がない」などの障害では、効果が見られなかった実験があります。
- 所要時間は5〜8分ほど。1回より毎日くり返したほうが、先延ばしが少なかった実験があります。
01 悩みの正体「やる気はあるのに動けない」のはなぜ?
理由の一つは、良い結果を思い描くだけで、邪魔になるものを考えていないことです。研究では、障害とその対処を前もって決めておくと、目標を達成しやすくなりました。
WOOPを考えたOettingenらは、良い未来を思い描くだけでは、かえって動く力が弱まることがあると報告してきました[1]。くわしくはポジティブ思考の逆効果の記事で調べています。
そこで、良い結果を思い描いたあとに「でも、それを邪魔するものは?」と現実の障害を考えます。これを心理学では「心理対比」と呼びます。さらに「もし障害が起きたら、こうする」と決めておく「実行意図」を組み合わせたのがWOOPです[1]。障害と行動を前もって結びつけておくことで、迷わず動けるようにします。
02 科学的にわかっていることWOOPで、先延ばしは本当に減る?
目標の達成には小〜中程度の効果があります。勉強や時間管理、寝る時間の先延ばしでも効果が見られました。ただし、効果が出なかった国や条件もあり、万能ではありません。
Wangら(2021)[1]
WOOP(MCII)の研究24件・15,907人をまとめると、目標の達成に小〜中程度の効果がありました(g=0.336)。研究者と対面で行ったときは0.465、用紙やネットで1人で行ったときは0.277と、1人でやるほうが効果は小さめでした。
対象: 子ども・大学生・大人・患者の研究 / 限界: 効果の小さい研究が公表されていない可能性があり、補正すると0.242まで下がりました。
Oettingenら(2015)[2]
勉強の悩みにWOOPを使った大学生は、比べたグループより翌週の予定に多くの時間を割り当てました。やり方を習った大学生は、時間の使い方がうまくなったと答えました。働きながら職業訓練に通う母親では、授業への出席が規則正しくなりました。
対象: 大学生と働く母親、3つの研究 / 限界: 大学生の研究は56人と40人と小さく、時間管理は本人の回答で測っています[1]。
KizilcecとCohen(2017)[3]
オンライン講座の受講者17,963人に、8分ほどでできるWOOPを試しました。アメリカなど個人主義の国では、修了率が5.52%から7.28%、25.7%から29.5%に上がりました。インドや中国など集団主義の国では効果がなく、全体では統計的な差になりませんでした。
対象: 80か国以上の受講者 / 限界: 効果が出たのは障害が「仕事や家庭の用事」のとき。「時間がない」「ネット環境がない」では効果が見られませんでした。
Zhouら(2026)[4]
勉強の先延ばしに悩む大学生で、WOOPと「良いことを考えるだけ」を比べました。WOOPのグループは、作業へのいやな気持ちが減り、作業を始めようとする気持ちが高まりました。1週間後も効果は続いていました。
対象: 中国の私立大学の学生81人 / 限界: 測ったのは気持ちで、実際に作業を進めた量ではありません。
Valshteinら(2020)、Sezerら(2025)[5][6]
寝る時間をずるずる遅らせる先延ばしでも、WOOPをした大学生は、比べたグループより1晩あたりの先延ばしの時間が減りました(383人と221人の2つの実験)。297人の実験では、毎日WOOPをしたグループは、週の初めに1回だけのグループより先延ばしが少なくなりました。
対象: 大学生とネットで集めた大人 / 限界: 先延ばしの時間は本人の記録で、追跡は1〜3週間です。
24件のまとめ[1]から、条件ごとの効果を抜き出しました。数字が大きいほど効果が大きいことを示します。
| 条件 | 効果の大きさ(g) |
|---|---|
| 全体(24件) | 0.336(小〜中) |
| 公表の偏りを補正した値 | 0.242 |
| 研究者と対面で行う | 0.465 |
| 用紙やネットで1人で行う | 0.277 |
| 勉強の目標 | 0.255(他の分野と有意な差はなし) |
03 今日からできる小さな一歩WOOPは、どうやって書けばいい?
紙に4行を書きます。①今日か今週の願い、②かなったときの一番良い結果、③それを邪魔する自分の中の障害、④「もし障害が起きたら、こうする」の計画です。5〜8分で終わります。
W 願い:今日か今週にできることを1つ
「レポートの序論を書く」のように、少しがんばれば届くことを選びます。達成できそうにないと感じる目標では、かえってあきらめやすくなると考えられています[1]。
所要 1分
O 結果:一番良い結果を、ありありと思い描く
終わったときの気分や、その後にできることを、目を閉じて具体的に想像します。オンライン講座の実験でも、良い結果を詳しく書かせていました[3]。
所要 1〜2分
O 障害:自分の中の、一番の障害を1つ
「始める前にスマホを見てしまう」「難しそうで気が重くなる」など、自分で対処できるものを選びます。「時間がない」のような障害では、効果が見られなかった実験があります[3]。
所要 1〜2分
P 計画:「もし〜なら、こうする」を1文で
「もしスマホに手が伸びたら、引き出しにしまって最初の1行を書く」のように書きます。始める時刻まで決める計画は「いつ・どこで」を決める計画の記事にあります。
所要 1分
04 続けるためのコツWOOPを書いても動けなかったら?
1回で終わらせず、毎日くり返します。障害が大きすぎると感じたら、作業を小さく分けるか、願いそのものを見直します。
- 毎日、作業の前に書く。毎日くり返したグループのほうが、先延ばしが少なかった実験があります[6]。
- 障害は「自分の中」に探す。効果が出たのは、障害が自分で対処できるものだったときでした[3]。
- 作業が大きすぎるなら分ける。分け方は大きな作業の分け方の記事で調べています。
- 効かなくても自分を責めない。効果は小〜中程度で、効かない人や場面もあります。ほかの方法は自分で対策しても直らないときの記事にまとめています。
05よくある質問
WOOPとは何ですか?
Wish(願い)、Outcome(結果)、Obstacle(障害)、Plan(計画)の頭文字をとった、自分で行う目標の立て方です。研究では「心理対比と実行意図(MCII)」と呼ばれます。良い結果を思い描いたあと、それを邪魔する自分の中の障害を考え、「もし障害が起きたら、こうする」と計画を書きます。
良いことだけを想像するのではダメなの?
良い未来を思い描くだけでは、かえって動く力が弱まることがあると研究者たちは報告してきました。WOOPは、想像のあとで「障害」を考えるのが特徴です。中国の大学生81人の実験では、良いことを考えるだけのグループより、WOOPのグループのほうが作業を始める気持ちが高まりました。
1回やれば効果は続きますか?
1回だけでも効果が見られた研究はあります。ただ、寝る時間の先延ばしを調べた297人の実験では、毎日WOOPをしたグループのほうが、週の初めに1回だけのグループより先延ばしが少なくなりました。数分でできるので、作業の前に毎回くり返すのがおすすめです。
「時間がない」が障害のときも使えますか?
オンライン講座の約1万8千人の実験では、効果が出たのは障害が「仕事や家庭の用事」だったときで、「時間がない」や「ネット環境がない」といった障害では効果が見られませんでした。自分で対処できる障害を選ぶのがコツです。
出典
- Wang, G., Wang, Y., & Gai, X. (2021). A meta-analysis of the effects of mental contrasting with implementation intentions on goal attainment. Frontiers in Psychology, 12, 565202. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.565202
- Oettingen, G., Kappes, H. B., Guttenberg, K. B., & Gollwitzer, P. M. (2015). Self-regulation of time management: Mental contrasting with implementation intentions. European Journal of Social Psychology, 45(2), 218-229. https://doi.org/10.1002/ejsp.2090
- Kizilcec, R. F., & Cohen, G. L. (2017). Eight-minute self-regulation intervention raises educational attainment at scale in individualist but not collectivist cultures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 114(17), 4348-4353. https://doi.org/10.1073/pnas.1611898114
- Zhou, X., Wider, W., Wu, H., Xu, Y., Qin, M., & Borromeo, A. S. (2026). Beyond positive thinking: A randomized trial of mental contrasting with implementation intentions to curb academic procrastination. Acta Psychologica, 262, 106168. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2025.106168
- Valshtein, T. J., Oettingen, G., & Gollwitzer, P. M. (2020). Using mental contrasting with implementation intentions to reduce bedtime procrastination: Two randomised trials. Psychology & Health, 35(3), 275-301. https://doi.org/10.1080/08870446.2019.1652753
- Sezer, B., Ntoumanis, N., Riddell, H., & Gucciardi, D. F. (2025). An experimental investigation of daily mental contrasting with implementation intentions and goal motives in reducing bedtime procrastination: A registered report. Psychology & Health. https://doi.org/10.1080/08870446.2025.2491593


