時間管理術は先延ばしに効く? 予定表や優先順位づけの研究でわかったこと

手帳を買い、予定表を作り、優先順位をつける。それでも先延ばしが減らないと、「自分は時間管理が下手だ」と思いがちです。研究では、時間管理は先延ばしを少し減らすが、それだけで十分とは言えないという結果でした。予定を立てると「時間を自分で動かせる感覚」は高まります。一方で、作業そのものの成果が変わらなかった研究もあります。
3行でわかる
- 158件の研究をまとめた分析では、時間管理が上手な人ほど成績・仕事ぶり・心の健康がよく、学校での先延ばしも少なかった(相関の研究が中心)。
- 時間管理の研修で、会社員の先延ばしや心配が減った研究がある。一方で「時間を動かせる感覚」は高まっても、仕事の成果は変わらなかった研究が2件ある。
- 大学生の実験では、時間管理を学んだ組と、嫌な気持ちを受け入れる練習をした組で先延ばしに差はなかった。判定は「少し効く、ただし単独では不十分」。
01 悩みの正体予定を立てても先延ばしするのはなぜ?
予定表は「いつやるか」を決めてくれますが、作業の嫌な気分までは消してくれないからです。先延ばしは、時間の使い方より気分の問題として起きることが多いと考えられています。
時間管理とは、自分の時間を組み立て、守り、状況に合わせて調整するための決め方のことです[1]。目標を書く、優先順位をつける、予定表に入れる、などが含まれます。
ただ、先延ばしの多くは、作業の嫌さや不安から一時的に逃げる動きです。この仕組みは先延ばしは「意志が弱い」からじゃないにまとめています。予定を立てても、始める瞬間の嫌な気分が強ければ、手は止まりやすくなります。
02 科学的にわかっていること時間管理術は先延ばしに効く?
時間管理は先延ばしを少し減らし、ストレスや「時間に追われる感覚」も軽くします。ただ、研修を受けても成果が変わらない研究や、ほかの方法と差がない研究もあり、単独では不十分です。
Aeonら(2021)[1]
158件の研究をまとめた分析です。時間管理が上手な人ほど、仕事の評価(相関r=0.26)や学業の成績(r=0.26)がよく、心の健康(r=0.31)、特に生活の満足度(r=0.43)が高めでした。学校では、時間管理と先延ばしの結びつきが強く出ました(r=0.49。数字が大きいほど先延ばしが少ない)。
対象: 158件の研究(490の効果量) / 限界: 多くは相関の研究で、著者も「すべての研究で因果は確かめられない」と書いています。
158件の研究
時間管理と成績・心の健康の関係をまとめた分析。成果より、生活の満足度との結びつきのほうが強かった[1]
van Eerde(2003)[2]
会社員37人が、1日半の時間管理の研修を受けました。1か月後、仕事を避ける行動と心配が減り、時間を管理できているという感覚が高まりました。著者は、研修は仕事での心配と先延ばしを減らすのに役立つとまとめています。
対象: 研修を受けた会社員37人と、研修待ちの14人 / 限界: 人数が少なく、本人の自己評価だけで測った結果です。
Häfner & Stock(2010)[3]
会社員71人をくじで2つに分け、35人に心理学にもとづく時間管理の研修を行いました。研修を受けた組は、時間を自分で動かせる感覚が高まり、ストレスが下がりました。一方で、仕事の成果を表す指標には変化がありませんでした。
対象: 会社員71人(研修35人、待機36人) / 限界: 教えた方法のうち、実際によく使われたものと使われなかったものの差が大きかった。
Macan(1996)[4]
会社員44人を調べたところ、研修を受けても、時間管理の行動が増えたとは報告されませんでした。仕事の満足や緊張、上司による評価も変わりませんでした。研修を受けた組の「時間を動かせる感覚」は4〜5か月後に高まりましたが、研修を受けなかった組の水準に近づいた程度でした。
対象: 会社員44人 / 限界: くじ引きで組を分けていない実験で、人数も少なめです。
Glick & Orsillo(2015)[5]
大学生で、時間管理を学ぶ方法と、嫌な気持ちを受け入れる練習を比べました。時間管理の組のほうが課題を多く読む傾向はありましたが、先延ばしには組の差が出ませんでした。
対象: 大学生 / 限界: 2つの方法どうしの比較で、何もしない組はありません。
先延ばしの治療法を比べたRozentalら(2018)のメタ分析では、12件の研究(718人)で、先延ばしが小さく減っていました(効果の大きさg=0.34)[6]。考え方と行動を少しずつ変える認知行動療法にしぼると、g=0.55でした。著者は、時間管理などを試した研究は期間がとても短く、何もしない組と比べていないため、効果を見分けにくいと指摘しています。
ここまでを判定表にまとめます。
| よく言われること | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| 時間管理が上手な人は先延ばしが少ない | 学校では強く結びつく(r=0.49)[1] | 本当(相関) |
| 時間管理の研修で先延ばしが減る | 会社員で避ける行動が減った研究がある[2] | 少し効く |
| 時間管理で仕事の成果が上がる | 研修後も成果は変わらなかった[3][4] | 当てにならない |
| 時間管理で「追われる感じ」が減る | 時間を動かせる感覚が高まった[3][4] | 効く |
| 時間管理だけで先延ばしは治る | 受け入れる練習と差がなかった[5] | 単独では不十分 |
03 今日からできる小さな一歩時間管理を先延ばし対策に生かすには?
予定表を細かく作り込むより、「いつ・何から始めるか」を1つ決め、始めるときの嫌な気分への手当てを足すことです。時間管理と気持ちのケアを組み合わせます。
今日の予定に「始める時刻」を1つだけ書く
一日の予定を全部埋めなくて構いません。「19時に資料を開く」のように、始める時刻と最初の動きを決めます。詳しくは始める時刻まで決める計画の研究にあります。
所要 1分
04 続けるためのコツ時間管理が続かないときはどうする?
道具を増やすより、実際に使っている方法だけを残すことです。研修の研究でも、教えた方法のうち使われたものと使われなかったものの差は大きくありました。
- 使っていない手帳やアプリは手放し、1つに絞る。
- 予定どおりにいかなくても、「時間を動かせる感覚」が少しでも戻ればよしとする。研究でも、変わったのはまずこの感覚だった。
- やることを書き出す方法はToDoリストと先延ばしの研究が参考になる。
- 何週間も工夫して変わらないときは、自分で対策しても先延ばしが直らないときも読んでみてください。
05よくある質問
時間管理を学べば先延ばしは治りますか?
少し減る可能性はありますが、それだけで治るとは言えません。会社員の研修で避ける行動が減った研究がある一方、大学生の実験では、嫌な気持ちを受け入れる練習と先延ばしに差がありませんでした。気持ちの扱い方と組み合わせるのが現実的です。
手帳やスケジュールアプリは意味がありますか?
時間を自分で動かせる感覚を高め、ストレスを下げる効果は複数の研究で見られます。ただし、研修を受けても仕事の成果が変わらなかった研究もあります。道具の種類より、実際に毎日使うかどうかが大事です。
時間管理が苦手なのは生まれつきですか?
158件の研究をまとめた分析では、性格のうち「まじめさ」と強く結びついていました。ただ著者は、時間管理を変えられない能力と考えるのは逆効果で、研修で上達するという証拠もあると書いています。
出典
- Aeon, B., Faber, A., & Panaccio, A. (2021). Does time management work? A meta-analysis. PLOS ONE, 16(1), e0245066. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0245066
- van Eerde, W. (2003). Procrastination at work and time management training. The Journal of Psychology, 137, 421-434. https://doi.org/10.1080/00223980309600625
- Häfner, A., & Stock, A. (2010). Time management training and perceived control of time at work. The Journal of Psychology, 144(5), 429-447. https://doi.org/10.1080/00223980.2010.496647
- Macan, T. H. (1996). Time-management training: Effects on time behaviors, attitudes, and job performance. The Journal of Psychology, 130(3), 229-236. https://doi.org/10.1080/00223980.1996.9915004
- Glick, D. M., & Orsillo, S. M. (2015). An investigation of the efficacy of acceptance-based behavioral therapy for academic procrastination. Journal of Experimental Psychology: General, 144, 400-409. https://doi.org/10.1037/xge0000050
- Rozental, A., Bennett, S., Forsström, D., Ebert, D. D., Shafran, R., Andersson, G., & Carlbring, P. (2018). Targeting Procrastination Using Psychological Treatments: A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Psychology, 9, 1588. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01588


