先延ばし

嫌な気分で作業に手がつかないときは? 気持ちを「受け止めて、耐えて、変える」練習で先延ばしが減った研究

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青空の下に建つれんが造りのホテル
Photo: Elliott Brown from Birmingham, United Kingdom / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「やらなきゃ」と思うほど気が重くなり、気づけば別のことをしている。先延ばしは、作業で湧く嫌な気分から逃げる行動だと考えられています。ドイツの大学生148人の実験では、嫌な気分を受け止め、耐え、少しずつ変える練習を9週間続けたグループで、先延ばしが減りました。

3行でわかる

  1. 先延ばしは、作業に向き合うときの不安やうんざり感を、その場で消すための行動と考えられている。イランの大学生250人の調査では、「嫌な気分をうまく扱える自信がない」ことが先延ばしと最も関係していた。
  2. 大学生148人のランダム化比較試験では、9週間のオンライン練習を受けたグループの先延ばしの点数が2.81から2.43に下がり、待機グループ(2.85から2.70)より大きく下がった。
  3. ただし測り方は本人の自己評価で、比べた相手は何もしない待機グループ。受け入れ中心の短い方法では、時間管理の方法と差が出なかった研究もある。

01 悩みの正体嫌な気分になると、なぜ作業を後回しにする?

後回しにすると、作業に向き合うときの不安やうんざり感が、その場で消えるからです。気分はいったん楽になりますが、作業は残り、あとでさらに重く感じます。

報告書を開いた瞬間に「うまく書けなかったらどうしよう」と感じる。すると、メールの整理や動画のほうに手が伸びます。こうした逃げ道を選ぶと、嫌な気分はすぐに下がります。

研究者は、先延ばしを気分を守るための行動と考えています(くわしくは先延ばしと感情の研究)。そこで出てきたのが、「嫌な気分に対処する力を鍛えれば、逃げなくてすむのでは」という考えです。

この対処する力を、心理学では感情調整スキルと呼びます。気分に気づく、受け止める、耐える、変える、といった力の集まりです[1]。

02 科学的にわかっていること気持ちに対処する練習で、先延ばしは減る?

減ったという実験があります。大学生が9週間オンラインで練習すると、先延ばしの自己評価が待機グループより下がりました。ただ、比べ方や測り方に限界があり、研究の数はまだ少ないです。

Schuenemannら(2022)[1]

大学生をくじ引きで2グループに分け、片方に9週間のオンライン練習を行いました。先延ばしの点数(1〜4点)は、練習したグループで2.81から2.43へ、待機グループで2.85から2.70へ下がりました。練習後の両グループの差は中くらいの大きさ(d=0.45)でした。気持ちに対処する力が伸びた人ほど、先延ばしが減っていました。

対象: ドイツの大学生など148人(平均22.6歳、女性75%、約半数が心理学専攻) / 限界: 比べた相手は何もしない待機グループで、思い込みの効果を除けていない。先延ばしは本人の自己評価で、練習直後しか測っていない。

Mohammadi Bytamarら(2020)[2]

大学生に、先延ばしの強さと、気持ちの扱いにくさを答えてもらいました。気持ちの扱いにくさの6つの面のうち、先延ばしを予測したのは「嫌な気分をうまく和らげる方法がないと感じる」面だけでした(β=0.22)。不安や落ち込みの影響を除いても、関係は残りました。

対象: イランの医科大学の学生250人 / 限界: 1回の調査で、どちらが原因かはわからない。著者自身、関係は限られた大きさだとしている。

Amarnathら(2025)[3]

大学生403人を、認知行動療法にもとづくオンラインのプログラム(5つの学習単元、コーチの支援つき)か、待機グループに分けました。4週間後、プログラムのグループで先延ばしが減りました(d=0.40)。そのグループでは6か月後も減った状態が続いていました。

対象: オランダの大学に通う学生403人(平均23.5歳) / 限界: 感情調整だけでなく、先延ばし全般への対策をまとめたプログラム。6か月後の比較は、プログラムのグループの中だけで行った。

GlickとOrsillo(2015)[4]

嫌な気持ちを受け入れることを中心にした方法と、時間管理を学ぶ方法を、大学生で比べました。先延ばしには、グループの差が出ませんでした。受け入れ中心の方法は、勉強を大事だと強く思っている学生で最も効いていました。

対象: 大学生 / 限界: 2つの方法どうしの比較。受け入れる練習だけで、時間管理より先延ばしが減るとは言えなかった。

効果が出た9週間の練習[1]は、3つのまとまりでできていました。

まとまりねらい練習の中身
1 力をためる気持ちの余裕を増やす呼吸に注意を向ける練習、15分ほどの筋弛緩法、良い気分を思い描く、休む時間を予定に入れる
2 受け止めて耐える嫌な気分があっても動ける楽しい予定を入れる、出来事の良い面を探す、自分の成功や強みを思い出す
3 変える嫌な気分を弱める姿勢など体を使う方法、ストレスを生む考え方を見つけて変える

1つのまとまりは90分の学習3回分で、動画と冊子を使いました。さらに毎日、短い練習を促すメッセージが届きました[1]。

03 今日からできる小さな一歩手が止まったとき、気持ちをどう扱えばいい?

気分に名前をつけ、「この気分があっても進めていい」と受け止めます。体を数分落ち着かせ、重くしている考えを1つ書き換えてから、最初の5分だけ手をつけます。

1

今の気分に名前をつける

「不安」「面倒」「自信がない」など、一言で書きます。練習で伸ばした力には、気分に気づき、はっきりさせることが含まれていました[1]。言葉にする方法は気持ちに名前をつける研究でも紹介しています。

所要 30秒

2

「この気分のままでも進めていい」と言う

嫌な気分を消してから始めようとしません。研究で測った力のひとつは「不安でも、予定したことをやった」かどうかでした[1]。

所要 30秒

3

体を数分落ち着かせる

息に注意を向けるか、肩や手に力を入れて抜きます。練習の最初のまとまりで使われた方法です[1]。やり方は漸進的筋弛緩法の記事にあります。

所要 3〜5分

4

気分を重くしている考えを1つ書き換える

「完璧に書かないといけない」を「今日は下書きでいい」に変える、などです。3つ目のまとまりで練習した方法です[1]。

所要 2分

5

最初の5分だけ手をつける

ファイルを開いて見出しを打つ、くらいの大きさで十分です。分け方は作業の分け方の研究が参考になります。

所要 5分

この5つは、研究で使われた練習の中身を、短く試せる形にまとめたものです。1つ1つの手順を別々に確かめた研究ではありません。

04 続けるためのコツ気持ちに対処する練習を、続けるには?

1回で変えようとせず、毎日数分を数週間続けます。効果が確かめられた練習は9週間で、毎日の短い練習を促すしかけもありました。

気分の落ち込みや強い不安が2週間以上続くときは、先延ばしの対策より先に、医師やカウンセラーに相談してください。

05よくある質問

やる気や気分が乗るまで待ってから始めたほうがいい?

待つより、嫌な気分があるまま小さく始めるほうが現実的です。大学生148人の実験で使われた練習は、嫌な気分を消すことより、受け止めて耐え、少しずつ変えることを目指していました。この練習で先延ばしの自己評価が下がっています。

先延ばしは性格やなまけの問題ですか?

研究では、作業で湧く不安やうんざり感から一時的に逃げる行動だと考えられています。イランの大学生250人の調査でも、嫌な気分をうまく扱える自信がない人ほど先延ばしが強い傾向がありました。性格だけで決まるものではありません。

マインドフルネスだけで先延ばしは減りますか?

はっきりとは言えません。受け入れることを中心にした方法と、時間管理の方法を比べた研究では、先延ばしに差は出ませんでした。効果が出た9週間の練習は、マインドフルネスに加えて考え方の見直しなどを組み合わせたものです。

どれくらい続ければ変化がありますか?

効果が確かめられた練習は9週間でした。別の研究では、オンラインのプログラムを4週間続けた大学生で先延ばしが減り、そのグループでは6か月後も減った状態が続いていました。1回で変わるものではないと考えてください。

出典

  1. Schuenemann, L., Scherenberg, V., von Salisch, M., & Eckert, M. (2022). “I’ll Worry About It Tomorrow” – Fostering Emotion Regulation Skills to Overcome Procrastination. Frontiers in Psychology, 13, 780675. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.780675
  2. Mohammadi Bytamar, J., Saed, O., & Khakpoor, S. (2020). Emotion Regulation Difficulties and Academic Procrastination. Frontiers in Psychology, 11, 524588. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.524588
  3. Amarnath, A., Ozmen, S., van Klaveren, C., van Straten, A., Pei, J., de Wit, L., Raabe, R. E., Cuijpers, P., & Struijs, S. Y. (2025). Effectiveness of a guided internet-based intervention in reducing procrastination among university students: A randomized controlled trial. Internet Interventions, 42, 100878. https://doi.org/10.1016/j.invent.2025.100878
  4. Glick, D. M., & Orsillo, S. M. (2015). An investigation of the efficacy of acceptance-based behavioral therapy for academic procrastination. Journal of Experimental Psychology: General, 144(2), 400-409. https://doi.org/10.1037/xge0000050