気分・ストレス

落ち込んで何もしたくない日、気分を上げるには?「行動活性化」の研究でわかった、気分より先に動くやり方

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雪が残る朝の公園の散歩道
Photo: Famartin / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

何もしたくない。動く気力が戻るまで待とう。落ち込んだ日にそう思うのは自然なことです。でも、研究では、気分が戻るのを待つより、小さな活動を先に予定に入れて実行するほうが、気分は上向きやすいことが示されています。この方法は「行動活性化」と呼ばれ、うつの治療だけでなく、落ち込みが軽い人の幸福感も高めています。

3行でわかる

  1. 落ち込むと楽しいことを避けがちになり、楽しい体験が減って、さらに気分が沈む。この悪循環を、行動から断ち切るのが行動活性化。
  2. 落ち込みが軽い人を含む研究のまとめで、幸福感が中くらいの大きさで上がった(効果量0.52)。うつの人では、薬と比べても見劣りしなかった。
  3. やり方は、気分と行動の記録、小さな活動を予定に入れる、やった後の気分を確かめる、の3つが中心。1日5〜10分から始められる。

01 悩みの正体落ち込むと、なぜ何もしたくなくなる?

気分が沈むと、疲れることや人と会うことを避けたくなります。避けると楽しい体験や「できた」という感覚が減り、さらに気分が沈む。この悪循環が起きやすくなるからです。

行動活性化は、この悪循環を「行動」の側から変える方法です。もとになったのは、楽しい体験や達成感が少ない生活が落ち込みを長引かせる、という考え方です[1]。

治療の場では、次のような手順で進めます[1][3]。

ポイントは「やる気が出たら動く」の順番を逆にすることです。やる気が出る前に動くと、後から気持ちがついてくることがあります。この考え方はやる気より先に動く研究でも紹介しています。

02 科学的にわかっていること行動活性化は、落ち込みに本当に効く?

効果は複数のメタ分析で確かめられています。落ち込みが軽い人の幸福感を中くらいの大きさで高め、うつの人では症状を軽くし、より複雑な認知行動療法と比べても1年後の結果に差はありませんでした。

Mazzucchelliら(2010・メタ分析)[1]

行動活性化が幸福感(ウェルビーイング)を高めるかを調べた、20件のランダム化比較試験(計1,353人)をまとめました。何もしない組と比べた終了直後の差は、効果量0.52(中くらいの大きさ)でした。うつの症状がほとんどない人(0.53)でも、症状が強めの人(0.51)でも、同じくらいの効果でした。

対象: 一般の人と、落ち込みが強めの人 / 限界: 質の高い研究は少なく、1件だけの質の高い研究では差が小さく出ました。1〜3か月後の効果ははっきりしませんでした。ほかの心理的な方法と比べると、効果に差はありませんでした。

0.52

行動活性化で上がった幸福感の効果量。何もしない組と比べた終了直後の差(11の比較・465人)[1]

Ekersら(2014・メタ分析)[2]

うつに対する行動活性化の26件のランダム化比較試験(1,524人)をまとめました。治療が終わった時点の症状は、対照の組より軽く(標準化平均差−0.74、25件・1,088人)、抗うつ薬の組と比べてもやや軽い結果でした(−0.42、4件・283人。差の下限はほぼ0)。出版の偏りを示すしるしは見られませんでした。

対象: うつの大人 / 限界: 多くの研究は質が低く、追跡期間も短めです。

Richardsら(2016・ランダム化比較試験)[3]

イギリスで、うつと診断された大人440人を、行動活性化(221人)と認知行動療法(219人)にランダムに分けました。行動活性化は、専門資格の浅い若手のスタッフが担当しました。12か月後のうつの症状の得点は、どちらも平均8.4で差がなく、行動活性化は認知行動療法に劣りませんでした。

対象: 18歳以上のうつの大人 / 限界: 治療の場で専門スタッフが行った結果で、自分ひとりで行う場合とは条件が違います。

Alberら(2023・メタ分析)[4]

インターネットで進める行動活性化の12件の試験(3,274人)をまとめました。何もしない組より、終了時のうつの症状が軽くなりました(標準化平均差−0.49)。不安が減り、生活の質も上がりました。

対象: うつの症状がある大人(88%が女性、平均43.6歳) / 限界: 6か月後には差がはっきりしませんでした。すべての研究に偏りの懸念があり、わずかな出版の偏りも見られました。

研究対象結果
20件のまとめ[1]一般の人・落ち込みが強めの人幸福感が上がった(0.52)
26件のまとめ[2]うつの大人症状が軽くなった(−0.74)
440人の試験[3]うつの大人認知行動療法と1年後に差なし
12件のまとめ[4]ネットで自分で進めた人終了時は軽くなったが、6か月後は差が不明

03 今日からできる小さな一歩何もしたくない日、どう動き出す?

まず2日間、1時間ごとの行動と気分を記録します。次に5〜10分で終わる活動を1つ選び、時刻を決めて予定に入れます。やった後に気分を0〜10で書き、上がった活動を増やしていきます。

1

2日間、行動と気分を書き出す

1時間ごとに「何をしていたか」と「気分0〜10」をメモします。気分が少し上がった時間と、下がった時間が見えてきます。治療でも最初に行う手順です[1][3]。

所要 1日5分

2

「楽しいこと」と「大事なこと」を5つずつ書く

前は楽しかったこと、自分にとって大事なことを書きます。散歩、好きな曲を聴く、机を片づける、友人に連絡する、のような5〜10分で終わる小さなものにします。

所要 5分

3

1つだけ、時刻を決めて予定に入れる

「明日10時に、家の周りを10分歩く」のように、いつ・どこで・何をするかまで決めます。気分が乗らなくても、予定だから手をつける、と決めておきます。

所要 2分

4

やった後の気分を0〜10で書く

やる前とやった後の気分を比べます。少しでも上がった活動は、次の週に回数を増やします。上がらなかった活動は、別のものに入れ替えて大丈夫です。

所要 1分

04 続けるためのコツ予定どおりに動けなかったときは?

予定をこなせなかった日は、活動を小さくして翌日にもう一度予定します。行動活性化の目標は完璧にやることではなく、避けていた行動に少しずつ戻ることです。

2週間以上ほとんど毎日気分が沈む、眠れない、食欲がない日が続くなどの場合は、ひとりで抱えず医療機関に相談してください。行動活性化は、専門家と一緒に行うこともできる方法です[3]。

05よくある質問

やる気が出るまで休んだほうがいいのでは?

休むことは大切です。ただ、行動活性化の考え方では、やる気は動いた後についてくることが多いとされます。落ち込みが軽い人も含めた20件の研究のまとめでは、楽しいことや大事なことを予定に入れて実行した人のほうが、何もしなかった人より幸福感が高くなりました。休む日と、5〜10分だけ動く日を組み合わせてみてください。

どんな活動を選べばいいですか?

「前は楽しかったこと」か「自分にとって大事なこと」で、5〜10分で終わる小さなものを選びます。散歩、好きな曲を1曲聴く、机の上を片づける、友人に一言メッセージを送る、などです。うまくやることより、予定どおりに手をつけることを目標にします。

行動活性化は、自分ひとりでやっても効果がありますか?

インターネットで自分で進める形式でも、12件の試験(3,274人)のまとめで、何もしない場合より落ち込みが軽くなりました。ただし6か月後には差がはっきりしませんでした。2週間以上ほとんど毎日気分が沈む、眠れない日が続くなどの場合は、ひとりで抱えず医療機関に相談してください。

出典

  1. Mazzucchelli, T. G., Kane, R. T., & Rees, C. S. (2010). Behavioral activation interventions for well-being: A meta-analysis. The Journal of Positive Psychology, 5(2), 105-121. https://doi.org/10.1080/17439760903569154
  2. Ekers, D., Webster, L., Van Straten, A., Cuijpers, P., Richards, D., & Gilbody, S. (2014). Behavioural activation for depression; an update of meta-analysis of effectiveness and sub group analysis. PLoS ONE, 9(6), e100100. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0100100
  3. Richards, D. A., Ekers, D., McMillan, D., Taylor, R. S., Byford, S., Warren, F. C., et al. (2016). Cost and Outcome of Behavioural Activation versus Cognitive Behavioural Therapy for Depression (COBRA): a randomised, controlled, non-inferiority trial. The Lancet, 388(10047), 871-880. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(16)31140-0
  4. Alber, C. S., Krämer, L. V., Rosar, S. M., & Mueller-Weinitschke, C. (2023). Internet-Based Behavioral Activation for Depression: Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Medical Internet Research, 25, e41643. https://doi.org/10.2196/41643