花粉症の時期に集中できないのはなぜ? 鼻の症状と頭の働きの研究で調べた

花粉の季節になると、鼻水やくしゃみだけでなく、頭までぼんやりして仕事や勉強がはかどらない。そう感じる人は少なくありません。これは気のせいでも、怠けているからでもありません。研究では、花粉症の時期に、覚える力や頭の処理の速さが落ちることが確かめられています。原因は1つではなく、いくつかの道すじが重なっていると考えられています。
3行でわかる
- 花粉症の患者41人を調べた実験では、花粉の季節に単語を覚える成績が下がり、頭の処理の速さも遅くなっていました。
- 原因として、アレルギーの炎症そのもの、鼻づまりで浅くなる眠り、眠くなるタイプの薬、沈んだ気分の4つが考えられています。
- 日本の働く人555人の調査では、花粉症があるだけでは仕事の効率に差はなく、症状が重い人ほど効率が落ちていました。症状を抑えることが集中を守る近道です。
01 悩みの正体花粉症で頭がぼんやりするのはなぜ?
花粉症で頭がぼんやりするのは、アレルギーの炎症が脳の働きにも影響し、さらに鼻づまりで眠りが浅くなったり、薬の眠気や気分の落ち込みが加わったりするためと考えられています。
花粉症は、体が花粉を敵とみなして、鼻の中で炎症(体の防御反応による腫れ)を起こす病気です。この炎症は鼻の中だけの話ではありません。
研究者は、集中しにくくなる道すじを、いくつかに分けて考えています。どれか1つではなく、人によって組み合わせが違います。
| 道すじ | 何が起きるか |
|---|---|
| アレルギーの炎症 | アレルギーに関わる物質(IgE)が多い人ほど、頭の処理が遅かった |
| 眠りが浅くなる | 鼻づまりで夜中に目が覚めやすく、昼間に眠くなる |
| 薬の眠気 | 眠くなるタイプの古い抗ヒスタミン薬は、記憶や反応の速さを下げる |
| 気分の落ち込み | 沈んだ気分を通じて、仕事の効率が下がる |
02 科学的にわかっていること花粉症は集中力をどれくらい下げる?
花粉の季節に覚える力や処理の速さが落ちることは実験で確かめられています。ただし、落ち方の大きさは症状の重さで違い、軽い人では仕事の効率に差が出なかった調査もあります。
Trikojatら(2017)[1]
薬を使っていない花粉症の患者41人と、アレルギーのない42人に、花粉の季節とそれ以外の季節の2回、テストを受けてもらいました。花粉の季節には、患者は単語のリストを覚える成績が下がり、2つの作業を同時にこなす課題で処理が全体に遅くなっていました。
対象: 季節性アレルギー性鼻炎の患者41人と健康な42人 / 限界: 人数が少なく、作業の切り替えそのものの負担には差がなかった。
Trikojatら(2015)[2]
同じ規模の患者と健康な人に、注意の課題をしてもらった研究です。患者は、症状がある時期にもない時期にも、頭の処理が遅くなっていました。処理の遅さは、アレルギーに関わる物質(IgE)の量が多い人ほど大きく、睡眠や症状の重さとは関係が見られませんでした。
対象: 患者41人と健康な42人 / 限界: 人数が少なく、炎症が原因だと確かめた研究ではない。
Liuら(2020)[3]
27本の論文をまとめたメタ分析です。アレルギー性鼻炎の人は、睡眠時間は変わらないものの、眠りの質が悪く、寝つくまでに時間がかかっていました。不眠やいびき、昼間の眠気、朝起きにくいことのリスクも高くなっていました。
対象: 観察研究27本 / 限界: 著者らは根拠の質を「低い〜非常に低い」と評価しており、慎重な解釈が必要。
Sekineら(2026)[4]
関東地方で働く大人555人の調査です。花粉症などのアレルギー性鼻炎があると答えた人は347人(62.5%)でした。全体では、鼻炎がある人とない人の仕事の効率に差はありませんでした。ただし、鼻炎のある人の中では、症状が重い人ほど、出勤していても効率が落ちていました。その一部は、沈んだ気分を通じたものでした。
対象: 平均50.5歳の働く人555人(2024年3〜4月) / 限界: ある時点の調査で、鼻炎の有無は自己申告。
62.5%
関東地方で働く大人555人のうち、アレルギー性鼻炎があると答えた人の割合。症状が重い人ほど仕事の効率が落ちていました。[4]
Huggら(2026)[5]
フィンランドのヘルシンキとトゥルクで、2006〜2020年の高校卒業試験の成績と、試験日の花粉の量を照らし合わせました。ハンノキやハシバミの花粉が多い日ほど、成績がわずかに下がっていました。特に男子の数学系の科目で下がり方が大きくなっていました。
対象: フィンランド南部の高校生の試験成績 / 限界: 下がり方はごく小さく、一人ひとりが花粉症かどうかは調べていない。
03 今日からできる小さな一歩花粉症の時期に集中を守るには?
鼻の症状と夜の眠りを整えることが、集中を守る近道です。症状が重い人ほど影響が大きいため、我慢せずに早めに医師や薬剤師に相談するのが基本です。
薬の「眠気」を確かめる
飲んでいる薬の説明書に「眠気」の注意があるか見てみます。仕事や勉強に響くと感じたら、眠くなりにくい薬がないか医師や薬剤師に相談します。自分で量を変えたり、やめたりはしません。
所要 3分
鼻づまりで眠れない夜は相談する
18件の試験、6,019人をまとめたメタ分析では、鼻に使うステロイド薬で眠りの質が良くなっていました [8]。夜に何度も目が覚めるなら、そのことも受診時に伝えます。
所要 受診時に一言
症状が重い日の予定を軽くする
鼻の症状が強い日は、集中が要る作業を短く区切り、量も少なめにします。症状の強さと、はかどり具合をメモしておくと、自分の落ちやすい日がわかります。
所要 1日1分
04 続けるためのコツ花粉の季節を毎年乗り切るには?
症状が出てから我慢するより、季節の前から準備するほうが、集中の落ち込みを小さくできると考えられます。卒業試験の研究の著者らも、早めに薬を始めることの大切さを挙げています。
- 季節の前に受診の予定を入れる: 卒業試験の研究の著者らは、早めに薬を始めることを勧めています [5]。
- 眠りを守る: 寝不足の翌日の集中については寝不足の翌日に集中できないときの研究で紹介しています。
- 集中が切れるのは自然なことと知る: 時間とともに集中が落ちる仕組みは集中が続かない理由の研究で書いています。
- 気分の落ち込みにも目を向ける: 気が重いと集中しにくくなる仕組みは心配ごとで集中できない理由を参考にしてください。
05よくある質問
花粉症で頭がぼーっとするのは、薬のせい?
薬が原因のこともあります。研究をまとめた総説では、眠くなるタイプの古い抗ヒスタミン薬は記憶や反応の速さを下げると整理されています。ただ、薬を使っていない患者でも、花粉の季節に覚える力が下がった実験があり、薬だけが原因ではありません。気になるときは、医師や薬剤師に相談してください。
花粉症の人は、花粉の季節以外も集中しにくいの?
注意の課題を調べた研究では、患者は症状がない時期にも頭の処理がやや遅く、アレルギーに関わる物質(IgE)の量と関係していました。一方、単語を覚える成績は花粉の季節に下がっていました。季節に関係なく続く面と、季節に強まる面の両方があると考えられます。
花粉症だと、仕事や試験の成績はどれくらい下がる?
症状の重さで違います。関東地方の働く人555人の調査では、花粉症があるだけでは仕事の効率に差がなく、症状が重い人ほど効率が落ちていました。フィンランドの試験の研究でも、花粉が多い日に成績は下がりましたが、その幅はごく小さいものでした。
出典
- Trikojat, K., Buske-Kirschbaum, A., Plessow, F., Schmitt, J., & Fischer, R. (2017). Memory and multitasking performance during acute allergic inflammation in seasonal allergic rhinitis. Clinical & Experimental Allergy, 47(4), 479-487. https://doi.org/10.1111/cea.12893
- Trikojat, K., Buske-Kirschbaum, A., Schmitt, J., & Plessow, F. (2015). Altered performance in attention tasks in patients with seasonal allergic rhinitis: Seasonal dependency and association with disease characteristics. Psychological Medicine, 45(6), 1289-1299. https://doi.org/10.1017/S0033291714002384
- Liu, J., Zhang, X., Zhao, Y., & Wang, Y. (2020). The association between allergic rhinitis and sleep: A systematic review and meta-analysis of observational studies. PLoS ONE, 15(2), e0228533. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0228533
- Sekine, Y., Watanabe, K., Horiguchi, H., Muto, G., Miyajima, E., Kikuchi, N., & Tsutsumi, A. (2026). Association between allergic rhinitis and work productivity in a nonclinical setting: A cross-sectional study. Journal of Occupational Health, 68(1), uiaf071. https://doi.org/10.1093/joccuh/uiaf071
- Hugg, T. T., Lehto, J., Jaakkola, J. J. K., Kiihamäki, S. P., Koivuranta, M., Pätsi, S., Saarto, A., & Korhonen, M. (2026). Pollen exposure and matriculation exam performance among students in Finland. Journal of Epidemiology and Community Health, 80(5), 287-293. https://doi.org/10.1136/jech-2025-224112
- Vieira, R. J., Pereira, A. M., Kupczyk, M., et al. (2025). Impact of allergic symptoms on work productivity in allergic rhinitis: A MASK-air direct patient data study. Allergology International, 74(3), 445-452. https://doi.org/10.1016/j.alit.2024.12.007
- Chen, Y., Jiang, G., Zhang, X., Zhou, Z., & Xu, P. (2026). Advances in research concerning the association between allergic rhinitis and chronic sinusitis and cognitive impairment. Frontiers in Neurology, 17, 1759585. https://doi.org/10.3389/fneur.2026.1759585
- Tabata, K., Sumi, Y., Sasaki, H., & Kojimahara, N. (2025). Effectiveness of intranasal corticosteroids for sleep disturbances in patients with allergic rhinitis: A systematic review and meta-analysis. International Archives of Allergy and Immunology, 186(4), 330-344. https://doi.org/10.1159/000541389


