習慣が続く人は「意志が強い」から? 自制心の高い人ほど我慢せず習慣に任せていた研究

運動も早寝も続かない。自分は意志が弱いからだ、と感じていませんか。研究での判定は「意志の強さ=我慢の強さ、ではない」。自制心の高い人の強みは、誘惑に耐える力より、考えずに動ける習慣にあるという結果が、食事・運動・勉強の研究でくり返し出ています。
3行でわかる
- 判定は「半分は誤解」。102研究・3万2,648人のメタ分析では、自制心と行動の結びつきは、意識して行う行動より、自動的に行う行動のほうが強く出ました。
- 6つの研究(計2,274人)では、自制心の高い人ほど良い行動が習慣になっており、そのぶん「頑張って抑える」ことは少なめでした。
- 多くは相関の研究で、習慣が原因とまでは言えません。それでも、続けたいなら我慢を増やすより、いつ・どこでやるかを固定するほうが研究の流れに合っています。
01 悩みの正体「意志が強い人」は、本当に我慢しているの?
「自制心が高い人は、誘惑を力ずくで抑えている」というのが昔からの考え方です。ところが近年の研究では、自制心の高い人ほど日常で我慢する場面自体が少ないという、逆の見方が出てきました。
自制心は、ふつう「誘惑に負けない力」と考えられています。ケーキを前にしても食べない。眠くても机に向かう。
もしそれが本当なら、自制心の高い人は毎日たくさん我慢しているはずです。研究者たちは、この前提が正しいかを確かめ始めました[2]。
02 科学的にわかっていること自制心の高い人は、習慣で続けている?
複数の研究で、その傾向が見られました。自制心の高い人ほど良い行動が習慣になっていて、自制心と行動の結びつきの多くは、その習慣を通して説明されていました。
de Ridderら(2012)[1]
自制心の高さと行動の関係を調べた102の研究(計3万2,648人)をまとめたメタ分析です。自制心が高い人ほど望ましい行動をとる、という小〜中程度の関係がありました。そして、この関係は、意識して行う行動より、自動的に行う行動のほうが強く出ていました。
対象: 102の研究 / 限界: 自制心は質問票で測ったもの。行動の分野によって関係の強さは大きく違った。
おやつ・運動・睡眠・勉強・瞑想で、自制心の高い人の良い結果は「習慣」を通して説明された[2]。
GallaとDuckworth(2015)[2]
6つの研究で、自制心と習慣の関係を調べました。自制心の高い人ほど、健康的なおやつ・運動・決まった時間の睡眠が習慣になっていました。その習慣があるぶん、行動は自動的になり、「頑張って抑えた」と答えることは少なめでした。5日間の瞑想合宿に参加した10代の研究では、合宿前の自制心が高いほど、3か月後に瞑想が習慣になっていました。
対象: 6研究で計2,274人(10代の若者や大学生を含む) / 限界: 習慣と自制心は主に本人の回答で測っている。
Adriaanseら(2014)[3]
健康的に食べたいと考えている大学生87人に、質問票に答えた後、7日間のおやつ日記をつけてもらいました。自制心の高い人ほど、体に良くないおやつを食べる量が少なく、その関係は「おやつを食べる習慣の弱さ」で説明されました。一方、自制心は果物を食べる量とは関係がありませんでした。
対象: 若い学生(多くは女性)87人 / 限界: 相関の研究で、因果関係は言えないと著者らも書いている。
GillebaartとAdriaanse(2017)[4]
上の研究を、運動で確かめ直した追試です。ジムの会員134人(18〜65歳、平均37.9歳)に答えてもらうと、自制心の高い人ほど運動していました。そして、その関係は運動の習慣の強さで説明されました。食事で見られた形が、運動でも再現されたことになります。
対象: ジム会員134人 / 限界: 1回のアンケートで、過去の運動量を思い出して答えている。
Hofmannら(2012)[5]
205人の大人が1週間、呼び出し機で知らされるたびに、そのとき感じている欲求を記録しました(計7,827件)。欲求はよく起こるものの、多くは問題になりませんでした。ほかの目標とぶつかる欲求には抵抗しようとしますが、うまくいくかどうかはまちまちでした。
対象: 大人205人 / 限界: 1週間の自己記録。欲求を感じた場面だけが対象。
| 研究 | わかったこと |
|---|---|
| de Ridderら(2012)102研究 | 自制心は自動的な行動とより強く結びつく |
| GallaとDuckworth(2015)6研究 | 良い結果は習慣を通して説明。抑える努力は少なめ |
| Adriaanseら(2014)87人 | おやつを控えられるのは習慣の差で説明 |
| Gillebaartら(2017)134人 | 運動でも同じ形を再現 |
| Hofmannら(2012)205人 | 欲求に抵抗しても成功はまちまち |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。「意志の力は使うと減る」という説も、大規模な追試で効果が見つからなかったことがあります。くわしくは意志力の研究にまとめています。
03 今日からできる小さな一歩我慢に頼らず続けるには、何をすればいい?
我慢する場面そのものを減らし、考えずに動ける形を作ります。やる時間と場所を固定し、誘惑を手の届かない所へ移すのが基本です(研究の結果から考えた工夫です)。
最初は「小さすぎるくらい」で始める
頑張らないとできない量だと、毎回我慢が必要になります。まずは2分で終わる量にして、くり返すことを優先します。
所要 2分
04 続けるためのコツ続かないとき、意志の弱さを責めるべき?
責めるより、仕組みを見直すほうが研究の流れに合っています。自制心の高い人の強みが習慣にあるなら、続かない原因も、意志より「決まった合図がない」ことにある場合が多いからです。
- 我慢した回数を誇らない: 毎回の我慢が必要なら、それはまだ習慣になっていない合図です。
- 習慣になるまで時間がかかるのはふつう: 考えずにできるまでの期間には個人差があります。自動化の仕組みは習慣が自動で動く理由の研究にまとめています。
- 悪い習慣は「やめる」より「起きにくくする」: おやつの研究では、控えられる人は我慢よりも、そもそも食べる習慣が弱いことで説明されました[3]。
05よくある質問
習慣が続かないのは、意志が弱いから?
そうとは言い切れません。自制心が高い人の行動の良さは、我慢の強さより、考えずに動ける習慣があることで多くが説明されていました。続かないときは、意志より「いつ・どこでやるか」の決め方を見直すほうが手がかりになります。
自制心が高い人は、誘惑に強いのでは?
研究では、自制心の高い人が日々たくさん我慢しているわけではない、という結果が出ています。6つの研究(計2,274人)では、自制心が高い人ほど、良い行動を「頑張って抑えて」ではなく習慣として自動的に行っていました。
この研究で「習慣が原因」と証明されたの?
されていません。多くはアンケートや日記による相関の研究で、著者らも因果関係までは言えないと書いています。ただ、食事・運動・勉強など別々の場面で同じ形の結果が出ており、追試でも再現されています。
出典
- de Ridder, D. T. D., Lensvelt-Mulders, G., Finkenauer, C., Stok, F. M., & Baumeister, R. F. (2012). Taking stock of self-control: a meta-analysis of how trait self-control relates to a wide range of behaviors. Personality and Social Psychology Review, 16(1), 76-99. https://doi.org/10.1177/1088868311418749
- Galla, B. M., & Duckworth, A. L. (2015). More than resisting temptation: beneficial habits mediate the relationship between self-control and positive life outcomes. Journal of Personality and Social Psychology, 109(3), 508-525. https://doi.org/10.1037/pspp0000026
- Adriaanse, M. A., Kroese, F. M., Gillebaart, M., & De Ridder, D. T. D. (2014). Effortless inhibition: habit mediates the relation between self-control and unhealthy snack consumption. Frontiers in Psychology, 5, 444. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2014.00444
- Gillebaart, M., & Adriaanse, M. A. (2017). Self-control predicts exercise behavior by force of habit, a conceptual replication of Adriaanse et al. (2014). Frontiers in Psychology, 8, 190. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00190
- Hofmann, W., Baumeister, R. F., Förster, G., & Vohs, K. D. (2012). Everyday temptations: an experience sampling study of desire, conflict, and self-control. Journal of Personality and Social Psychology, 102(6), 1318-1335. https://doi.org/10.1037/a0026545


