習慣

お金を賭けると習慣は続く? 失敗したら没収される「コミットメント契約」の研究でわかったこと

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カラフルなニワトリ型の貯金箱
Photo: Undeka 11 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「続かなかったら罰金」と自分にお金を賭ける方法があります。研究では「コミットメント契約」や「デポジット契約」と呼ばれます。申し込んだ人に限れば、運動や食事の目標を達成しやすくなるという結果が多く出ています。ただ、実際に申し込む人は少なく、契約が終わった後まで効果が残るかは研究で割れています。お金を賭けるのは、続けられる自信がある程度ある人向けの「後押し」と考えるのが現実的です。

3行でわかる

  1. 35件の試験をまとめた分析では、お金を預ける方法で、目標を達成する人の割合が運動で1.63倍、食事・体重で1.79倍になった。ただし結果の幅は広い。
  2. 禁煙の大規模な試験では、お金を預ける方法に参加したのは13.7%だけ。ご褒美型は90.0%で、全員に勧めた場合の禁煙率はご褒美型のほうが高かった。
  3. 契約が終わった後も効果が残るかは、研究によって違う。減量のまとめでは、終わった後の効果ははっきりしなかった。

01 悩みの正体なぜ「お金を賭ける」と続きそうに感じる?

「やらないと自分のお金を失う」仕組みにすれば、サボったときの損を今すぐ感じられるからです。今日の面倒さに勝てそうに思えます。

コミットメント契約は、先に自分のお金を預け、目標を達成したら返ってくる約束です。達成できなければ、お金は戻りません。ネット上でこの仕組みを使えるサービスもあります。

習慣が続かないのは、今日の面倒さが、ずっと先の成果より大きく感じられるためです。お金を預けると、サボったときの損が「今」に引き寄せられます。だから効きそうに見えます。三日坊主になる仕組みは新しい習慣が三日坊主で終わるのはなぜ?で紹介しています。

02 科学的にわかっていることお金を賭けると習慣は続く?

申し込んだ人には効きやすい一方、申し込む人が少ないのが弱点です。全員に勧めた場合は、ご褒美型のほうが効果が大きかった試験もあります。

Boonmanuntら(2023)[4]

運動や食事・体重の目標で、お金の仕組みを試した35件の試験をまとめました。目標を達成する人の割合は、お金の仕組みがない場合に比べて、お金を預ける方法で運動1.63倍、食事・体重1.79倍でした。運動では、プログラムが終わった後も1.39倍の差が残っていました。

種類: ランダム化比較試験のまとめ(ネットワーク・メタ分析) / 限界: 比べる試験の数が少なく、著者自身が「効果の推定が不正確なこと」を大きな懸念に挙げています。お金を失う心配から、申し込む人が少ない問題も指摘しています。

Halpernら(2015)[1]

禁煙したい人に、約800ドルのご褒美を出す方法と、150ドルを預けて達成すれば返ってくる方法(ほかに650ドルのご褒美つき)を比べました。参加を受け入れた人は、ご褒美型90.0%、お金を預ける型13.7%でした。全員で比べた6か月後の禁煙率は、ご褒美型15.7%、預ける型10.2%でした。一方、両方を受け入れそうな人に限って計算し直すと、預ける型のほうが13.2ポイント高くなりました。

対象: アメリカの企業の社員とその家族・友人で、1日5本以上吸う大人2,538人 / 限界: ご褒美が終わった6か月後には、普通の支援より効果が残っていたのはご褒美型だけでした。

90.0% 対 13.7%

禁煙の試験で参加を受け入れた人の割合。ご褒美をもらう方法と、自分のお金を預ける方法[1]

Kullgrenら(2016)[2]

減量したい社員に、1日1〜3ドルを預けられる仕組みを24週間用意しました。1回でも預けた人は、上乗せなしで18.2%でした。会社が同額や2倍を上乗せしても、36.4%と33.3%で、はっきり増えませんでした。預けなかった理由で最も多かったのは「達成できる自信がない」(14人)でした。

対象: アメリカの保険会社で働く、肥満のある社員132人 / 限界: 預ける組は毎日自動で体重のフィードバックも受けていて、減量の差がお金のせいかは分けられないと著者は書いています。

de Buisonjéら(2022)[3]

20日間の歩数アプリで、10ユーロを自分で預ける方法と、10ユーロのご褒美を比べました。お金の仕組みがある組は、ない組より目標を達成した日が多くなりました(平均13.10日 対 8.00日)。預ける方法とご褒美の間には、はっきりした差がありませんでした。預ける方法を選んだのは62%で、ご褒美は100%でした。

対象: オランダの若い大人126人 / 限界: 目標の人数に届かず、期間も20日と短く、終わった後の追跡はありません。

効果が続くかについては、減量の試験をまとめたSykes-Muskettら(2015)が、契約の期間中は小〜中くらいの効果があったものの、終わった後ははっきりした効果がなかったと報告しています[5]。ネットの契約サービスの利用者3,857人を調べた研究では、お金を賭けた人ほど体重が多く減ったと自己申告していました[6]。ただ、著者は「お金のせいか、もともとやる気が高かったせいかはわからない」と書いています。

ここまでを判定表にまとめます。

よく言われること研究でわかったこと判定
お金を賭けると続く申し込んだ人では達成が約1.6〜1.8倍[4]申し込めば効きやすい
誰にでも勧められる参加したのは13.7〜62%[1][2][3]選ぶ人が少ない
ご褒美より強い差がない試験と、全体ではご褒美が上の試験がある[1][3]条件しだい
やめた後も習慣が残る残らないまとめと、残ったまとめがある[4][5]結果が割れる

03 今日からできる小さな一歩お金を賭けて習慣を続けるには?

達成できそうな小さな目標に、失っても生活に響かない金額を賭けることです。賭けるより先に、記録と確認の方法を決めておきます。

1

「8割は守れる」目標にする

「毎日1時間」ではなく「週3回、20分歩く」のように決めます。お金を預けなかった理由で最も多かったのは、達成できる自信のなさでした[2]。自信を持てる目標から始めます。

所要 3分

2

金額は自分で決め、失っても困らない額にする

減量の試験のまとめでは、預ける額を本人が決めた試験のほうが、期間中の減量が大きい傾向でした[5]。歩数の研究では、10ユーロのお金の仕組みでも、目標を達成した日が増えていました[3]。

所要 1分

3

守れたかを判定する人と記録を決める

家族や友人に記録を見せ、守れなかったら預けたお金を受け取ってもらいます。記録の効果は習慣を記録するだけで続けやすくなる研究にまとめています。

所要 5分

04 続けるためのコツ賭けたお金を失ってしまったら?

お金を失った週は、目標を少し下げて次の契約を結び直せば十分です。1回の失敗で全部やめてしまうのが、いちばんもったいないパターンです。

賭けごとが苦手な人や、お金のことで強いストレスを感じる人には、無理に勧められる方法ではありません。お金を使わない工夫と組み合わせて考えるのが安全です。

05よくある質問

お金を賭けると、本当に習慣は続きますか?

申し込んだ人に限れば、続きやすくなるという研究が多くあります。35件の試験をまとめた分析では、運動や食事の目標を達成する人の割合が、お金の仕組みがない場合の約1.6〜1.8倍でした。ただ、申し込む人が少なく、全員に勧めた場合はご褒美型より効果が小さくなることもありました。

どれくらいの人がお金を預けることを選びますか?

禁煙の大規模な試験では、ご褒美型は90.0%が参加したのに対し、お金を預ける型は13.7%でした。減量の試験では、何もしない場合の18.2%に対し、会社が上乗せしても33〜36%ほどでした。断る理由で最も多かったのは「達成できる自信がない」でした。

契約をやめた後も習慣は残りますか?

研究によって結果が割れています。減量のまとめでは、契約が終わると効果ははっきりしなくなりました。禁煙の試験でも、ご褒美が終わって6か月後には、お金を預ける型は普通の支援との差が残りませんでした。運動では、終わった後も2週間〜6か月ほど効果が残ったというまとめもあります。

出典

  1. Halpern, S. D., French, B., Small, D. S., Saulsgiver, K., Harhay, M. O., Audrain-McGovern, J., Loewenstein, G., Brennan, T. A., Asch, D. A., & Volpp, K. G. (2015). Randomized Trial of Four Financial-Incentive Programs for Smoking Cessation. New England Journal of Medicine, 372(22), 2108-2117. https://doi.org/10.1056/NEJMoa1414293
  2. Kullgren, J. T., Troxel, A. B., Loewenstein, G., Norton, L. A., Gatto, D., Tao, Y., Zhu, J., Schofield, H., Shea, J. A., Asch, D. A., Pellathy, T., Driggers, J., & Volpp, K. G. (2016). A Randomized Controlled Trial of Employer Matching of Employees' Monetary Contributions to Deposit Contracts to Promote Weight Loss. American Journal of Health Promotion, 30(6), 441-452. https://doi.org/10.1177/0890117116658210
  3. de Buisonjé, D. R., Reijnders, T., Cohen Rodrigues, T. R., et al. (2022). Investigating Rewards and Deposit Contract Financial Incentives for Physical Activity Behavior Change Using a Smartphone App: Randomized Controlled Trial. Journal of Medical Internet Research, 24(10), e38339. https://doi.org/10.2196/38339
  4. Boonmanunt, S., Pattanaprateep, O., Ongphiphadhanakul, B., McKay, G., Attia, J., Vlaev, I., & Thakkinstian, A. (2023). Evaluation of the Effectiveness of Behavioral Economic Incentive Programs for Goal Achievement on Healthy Diet, Weight Control and Physical Activity: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Annals of Behavioral Medicine, 57(4), 277-287. https://doi.org/10.1093/abm/kaac066
  5. Sykes-Muskett, B. J., Prestwich, A., Lawton, R. J., & Armitage, C. J. (2015). The utility of monetary contingency contracts for weight loss: a systematic review and meta-analysis. Health Psychology Review, 9(4), 434-451. https://doi.org/10.1080/17437199.2015.1030685
  6. Lesser, L. I., Thompson, C. A., & Luft, H. S. (2018). Association Between Monetary Deposits and Weight Loss in Online Commitment Contracts. American Journal of Health Promotion, 32(1), 198-204. https://doi.org/10.1177/0890117116661157