先延ばし

疲れた日の夕方ほど、やるべきことを後回しにするのはなぜ? 頭の疲れと先延ばしの研究で調べた

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夕暮れのオフィス街
Photo: Diliff / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

朝なら手をつけられた作業が、夕方になると急に重く感じる。気づけばスマホを見ていて、「明日やろう」で一日が終わる。そんな日が続くと、自分はだらしないと責めたくなります。けれど研究を見ると、頭を長く使ったあとに後回しが増えるのは、意志の弱さだけでは説明できませんでした。頭が疲れると、手間のかかる作業が重く見え、目先の楽な選択肢に引き寄せられやすくなるのです。

3行でわかる

  1. 約6時間、難しい頭の作業を続けた人たちは、少し待てば多くもらえるお金より、すぐもらえる少ないお金を選ぶ傾向が強まりました。簡単な作業や余暇で過ごした人では強まりませんでした。
  2. 1日がかりの難しい作業のあとは、待たずに済み、手間の少ない選択肢を好むようになり、頭の前の方(外側前頭前野)にグルタミン酸という物質が増えていました。
  3. 先延ばしを強く予測するのは、作業のいやさと、目先の誘惑への弱さ(衝動性)でした。一方、「短い我慢で意志力が尽きる」という有名な説は、23の研究室での追試で確認されませんでした。

01 悩みの正体疲れた夕方に後回しが増えるのはなぜ?

疲れた夕方に後回しが増えるのは、頭を長く使ったあと、手間のかかる作業の「重さ」が大きく見え、すぐ手に入る楽さを選びやすくなるからです。先延ばしは、今の楽とあとの成果の比べ合いで起きます。

先延ばしの研究では、人は「今すぐの気分」と「あとで得られる成果」を比べて動くと考えます。あとの成果は、遠いほど小さく感じられます。

頭を長く使ったあとは、この比べ合いが目先の側に傾きます。作業を始める手間は大きく見え、スマホや休憩のような「すぐの楽」は魅力的に見えます。夕方に起きているのは、気合いが消えたというより、損得の見え方の変化だと考えられています。

頭が元気なとき頭を長く使ったあと
手間のかかる作業やればできると感じやすい実際以上に重く感じやすい
すぐの楽しみ後回しにできる選びやすくなる
研究で見られた変化—すぐもらえる・手間の少ない選択肢を好む [1][2]

02 科学的にわかっていること頭の疲れで選び方はどう変わる?

難しい作業を1日続けた人は、すぐもらえる報酬や手間の少ない選択肢を選びやすくなりました。先延ばしを強く予測するのも、作業のいやさと目先への弱さでした。

Blainら(2016)[1]

参加者が、記憶を保ちながら判断する作業や、ルールを切りかえる作業を、30分ずつ11回、休憩を除いて6時間あまり続けました。その合間に「今すぐ少しもらうか、待って多くもらうか」を何度も選びました。難しい作業をしたグループでは、すぐもらえる方を選ぶ傾向が時間とともに強まりました。簡単な作業や余暇で過ごしたグループでは強まりませんでした。脳の画像では、外側前頭前野の一部の働きが下がっていました。

対象: 難しい作業のグループ27人、比較のグループ25人(分析した人数) / 限界: 本人が感じる疲れは測っておらず、効果の大きさも控えめと著者ら自身が書いている。

Wiehlerら(2022)[2]

2つのグループが、ほぼ1日の仕事に当たる時間、難しい作業か簡単な作業を続けました。疲れのしるしが出たのは難しい作業のグループだけでした。選ぶときの瞳の広がりが小さくなり、待たずに済み、手間の少ない選択肢を好むようになりました。1日の終わりには、外側前頭前野でグルタミン酸という物質が増えていました。著者らは、これが頭を使う「コスト」を高め、疲れた日に自分を律しにくくなる理由だと考えています。

対象: 難しい作業と簡単な作業の2つのグループ / 限界: 1つの研究室の実験で、グルタミン酸がコストを高めるという説明は著者らの仮説の段階。

Steel(2007)[3]

先延ばしの原因と結果を調べた691の相関をまとめたメタ分析です。先延ばしを強く一貫して予測したのは、作業のいやさ、成果が得られるまでの遠さ、「できる」という自信、衝動性、そして自分を律する力や気の散りやすさでした。著者は、成果が遠いほど小さく感じる性質で先延ばしを説明する理論を示しています。

対象: 先延ばしの研究の691の相関 / 限界: 多くは相関の研究で、疲れそのものを調べた分析ではない。

Haggerら(2016)[4]

「短い我慢の作業をすると、自分を律する力が使い果たされ、次の作業で失敗しやすくなる」という有名な説(自我消耗)を、23の研究室、合計2141人で同じ手順で確かめ直しました。効果の大きさはほぼゼロ(d = 0.04)で、説は確認されませんでした。

対象: 23の研究室の2141人 / 限界: 調べたのは数分間の我慢の作業で、何時間も頭を使った後の疲れとは条件が違う。

Hillら(2022)[5]

寝る時刻を理由なく後回しにする「寝る前の先延ばし」を調べた43件の研究をまとめました。寝る前の先延ばしが多い人ほど、自分を律する力が低く、夜型で、睡眠時間が短く、昼間の疲れが強い傾向がありました。

対象: 43件の研究 / 限界: 研究の質は低いと評価され、どちらが原因かはわからない。

「疲れると意志力が空になる」という説明は、短い我慢の実験では追試で確かめられませんでした [4]。研究で見えてきたのは、何時間も頭を使ったあとに、目先の楽や手間の少なさを選びやすくなるという、もっと具体的な変化です [1][2]。疲れた日に意志力をどう考えるかは「疲れた日は先延ばしは仕方ない」は本当かの研究でも書いています。

03 今日からできる小さな一歩夕方に後回しにしないためにどうする?

気の重い作業は、頭がまだ疲れていない時間に置くのが基本です。夕方に残る作業は、始める手間を小さくし、「いつ・どこで」を前もって決めておきます。

1

気の重い作業を一日の前半に置く

難しい作業を何時間も続けたあとほど、目先の楽を選びやすくなりました [1][2]。手間のかかる作業や気の進まない作業は、午前や昼休みの直後に回します。

所要 予定の見直し5分

2

夕方の作業は「最初の一手」だけ決める

疲れた頭には、始める手間が重く見えます。「ファイルを開いて見出しを書く」くらいまで小さくします。分け方は大きな作業の分け方の研究を参考にしてください。

所要 2分

3

朝のうちに、夕方の開始時刻を決めておく

疲れた夕方に「やるかどうか」を考えると、目先の楽が勝ちやすくなります。元気な朝のうちに「18時に机で始める」と決めておきます。決め方は始める時刻まで決める計画の研究で書いています。

所要 1分

04 続けるためのコツ疲れた日の後回しとどうつきあう?

疲れた日に後回しが増えるのは自然な変化と考え、自分を責めずに予定の組み方で備えます。夜の後回しで睡眠を削らないことも大切です。

05よくある質問

夕方に後回しにするのは、意志力が尽きたから?

「短い我慢で意志力が尽きる」という説は、23の研究室・2141人の追試で確認されませんでした。一方、何時間も難しい作業を続けた実験では、すぐもらえる報酬や手間の少ない選択肢を選びやすくなりました。意志力が空になるというより、損得の見え方が目先に傾くと考えられます。

休憩すれば、疲れによる後回しは減る?

6時間あまりの実験では、同じ時間を簡単な作業や余暇で過ごした人では、すぐもらえる報酬を選ぶ傾向は強まりませんでした。ただし、途中の休憩でどれだけ戻るかは、まだはっきりわかっていません。

夜型の人ほど、寝る時間を後回しにしやすい?

43件の研究をまとめた分析では、夜型の人ほど、寝る時刻を理由なく後回しにする傾向がありました。ただし相関の研究で、夜型が原因かどうかはわかっていません。

出典

  1. Blain, B., Hollard, G., & Pessiglione, M. (2016). Neural mechanisms underlying the impact of daylong cognitive work on economic decisions. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(25), 6967-6972. https://doi.org/10.1073/pnas.1520527113
  2. Wiehler, A., Branzoli, F., Adanyeguh, I., Mochel, F., & Pessiglione, M. (2022). A neuro-metabolic account of why daylong cognitive work alters the control of economic decisions. Current Biology, 32(16), 3564-3575. https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.07.010
  3. Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65-94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
  4. Hagger, M. S., Chatzisarantis, N. L. D., Alberts, H., et al. (2016). A multilab preregistered replication of the ego-depletion effect. Perspectives on Psychological Science, 11(4), 546-573. https://doi.org/10.1177/1745691616652873
  5. Hill, V. M., Rebar, A. L., Ferguson, S. A., Shriane, A. E., & Vincent, G. E. (2022). Go to bed! A systematic review and meta-analysis of bedtime procrastination correlates and sleep outcomes. Sleep Medicine Reviews, 66, 101697. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2022.101697