健診や病院の予約を先延ばしし続けてしまったら?「日時を書く」計画の研究でわかった立て直し方

「そろそろ健診に行かないと」「歯医者の予約、また今度でいいか」。気にはなっているのに、何か月も予約できないままの人は少なくありません。研究では、受診する気持ちが同じでも、予約の日時と場所を自分で書き出した人のほうがはっきり多く受診していました。一方で、用意された計画の文を読むだけでは、大規模な試験で効果がありませんでした。
3行でわかる
- 先延ばししやすい人ほど、自分の健康の評価が低い傾向があります。36の調査(8,603人)のメタ分析で確かめられました。
- 予約を「いつ・どこで・どうやって」取るか書いた女性は92%が検診を受け、書かなかった女性は69%でした。会社の予防接種でも、日時を書く欄があるだけで接種率が4.2ポイント上がりました。
- ただし、配られた計画文を読むだけの方法は、2万人超の大腸がん検診で効果がありませんでした。自分の言葉で、今日、日時を1つだけ決めるのが要点です。
01 悩みの正体健診や病院の予約は、なぜ後回しになる?
健康のための用事は、締め切りがなく、すぐには困らないからです。気が重い予約ほど「今の気分」を守るために後ろへ押しやられ、先延ばしの研究では、健康が最も先延ばしされやすい分野の1つとされています。
先延ばしは、嫌な気分を今すぐ避けたいという働きから起きると考えられています(先延ばしと感情の研究)。電話をかける、空いている日を調べる、結果を聞くのが少し怖い。予約には小さな「気の重さ」がいくつも重なっています。
しかも健診や歯の点検には、仕事のような締め切りがありません。今日やらなくても、明日困ることはまずありません。だから「今度」が何度でも使えてしまいます。2026年のメタ分析が紹介している調査でも、大人が最も先延ばししていると答えた生活の分野は「健康」でした[1]。
何度も延ばしてきた人は、「どうせ自分はまた延ばす」と思いがちです。けれど、次の研究が示すように、過去にどれだけ延ばしてきたかの影響は、計画の立て方で小さくできる可能性があります。
02 科学的にわかっていること予約の先延ばしは、どんな計画で減った?
予約や受診の「日時」を自分で書き出す計画で、受診率が上がった研究が複数あります。一方、用意された計画文を読ませるだけの方法や、運動の予定を書くだけの方法では、効果が出ませんでした。
SiroisとMonaghan(2026)[1]
36の調査(合わせて8,603人)をまとめたメタ分析です。ふだんから先延ばししやすい人ほど、自分の健康を低く評価していました(相関 r = 0.21)。この関係の一部は、ストレスの高さで説明されました。
対象: 36の横断調査、8,603人 / 限界: ある時点の調査をまとめたもので、先延ばしが健康を悪くするという因果までは確かめていません。
SheeranとOrbell(2000)[2]
イギリスの農村の診療所に登録している女性114人のうち、半分に、子宮頸がん検診の予約を「いつ・どこで・どうやって」取るか書いてもらいました。受診したいという気持ちは両方の組で同じでしたが、受診したのは書いた組が92%、書かなかった組が69%でした。過去に受診を延ばしてきた人ほど受けない傾向は、書いた組では弱まっていました。
対象: イギリスの女性114人(受診は診療記録で確認) / 限界: 人数が少なく、アンケートに答えた人だけを対象にした研究です。
Milkmanら(2011)[3]
アメリカの企業の社員3,272人に、社内の無料インフルエンザ予防接種の案内を送りました。接種する日と時刻を書く欄がある案内を受け取った組の接種率は37.1%で、案内だけの組(33.1%)より、条件をそろえた分析で4.2ポイント高くなりました。日付だけを書く欄の組では、はっきりした差は出ませんでした。
対象: 50歳以上か持病のある社員3,272人 / 限界: 1つの会社で男性が多い対象でした。接種日が1日だけの会場では差が大きく(7.9〜9.5ポイント)、何日も開いている会場でははっきりしませんでした。
Loら(2014)[4]
イギリスの大腸がん検診(便の検査キットを郵送する方式)で、案内の冊子に、よくある障害への「もし〜なら、〜する」という計画文を3つ印刷して加えました。検査キットを返送した割合は、計画文あり39.7%、なしが40.4%で、全体として差はありませんでした。
対象: 60〜69歳への案内、計画文あり12,414件・なし10,768件 / 限界: 計画は本人が考えたものではなく、あらかじめ書かれた文でした。
Carreraら(2018)[5]
アメリカのジムの会員に、これから2週間の運動の予定日と時刻にチェックを入れてもらいました。しかし来館回数は増えず、予定した組の平均は2.3回、比べた組は2.6回でした。予定は平均7.04回でしたが、実際は2.33回と、計画は大きく見積もりすぎていました。
対象: アンケートに答えた会員877人 / 限界: 運動という、くり返しの行動での結果です。1回きりの予約とは性質が違います。
| 研究 | 計画のやり方 | 結果 |
|---|---|---|
| SheeranとOrbell(2000) | 本人が予約の日時・場所・方法を書く | 受診 92% 対 69% |
| Milkmanら(2011) | 本人が接種の日と時刻を書く | 接種率 4.2ポイント上昇 |
| Loら(2014) | 用意された計画文を冊子に印刷 | 差なし(39.7% 対 40.4%) |
| Carreraら(2018) | 2週間分の運動の予定にチェック | 来館は増えず |
この表は、上の研究をこのサイトで並べたものです。うまくいった2つは、1回きりの受診・接種について、本人が日時を書いたものでした。うまくいかなかった2つは、他人が書いた計画を読むだけのものと、何回もくり返す行動の予定でした。研究の条件がそろっていないため、これだけで理由を言い切ることはできません。
03 今日からできる小さな一歩先延ばししてきた予約は、どう取り直す?
この記事を読み終えた今、予約を取る「日時」を1つだけ自分で書き出し、その時刻に電話かネット予約をします。くり返しの計画ではなく、1回きりの行動にするのがポイントです。
予約を取る日時と方法を1行で書く
「明日の12時10分に、昼休みに歯医者のネット予約を開く」のように、日付だけでなく時刻まで書きます。日付だけでは差がはっきりしなかったためです[3]。
所要 2分
気が重い理由を1つ書き、自分なりの対処を決める
「電話が苦手」なら「ネット予約のページを探す」。決まった文を借りるより、自分の言葉で書くほうが研究の結果に沿っています[4]。
所要 3分
期限が短い日程を選ぶ
会社の健診や自治体の検診で日にちが選べるなら、「いつでも行ける」より、日にちの決まった枠を先に押さえます。開いている日が少ない会場ほど、計画の効果が大きかったためです[3]。
所要 5分
04 続けるためのコツ何度も延ばした自分を、どう立て直す?
延ばしてきた期間を責めるより、次の1回だけに目を向けます。予定を詰めこみすぎず、1つの予約を終えてから次を決めるほうが、研究で見えた失敗を避けられます。
- 責めるより許す: 先延ばしを自分で許せた学生ほど、次の試験の前の先延ばしが少なかった研究があります(自分を許す研究)。
- 予定は1つずつ: ジムの研究では、予定の7.04回に対して実際は2.33回でした[5]。健診も歯医者も一度に計画せず、1つ取れたら次を決めます。
- 避け続けて気まずいとき: 迷惑をかけた気まずさで、さらに避けてしまう仕組みは恥と罪悪感の研究にまとめています。
- 始める時刻を決めるやり方: ほかの作業にも使える方法は始める時刻を決める計画の研究にあります。
05よくある質問
健診や病院の予約を先延ばししてしまうのはなぜ?
健康のための用事は締め切りがなく、すぐには困らないためです。予約の電話や結果への不安など小さな気の重さも重なり、今の気分を守るために後回しにされやすくなります。36の調査(8,603人)のメタ分析では、先延ばししやすい人ほど自分の健康を低く評価していました。
予約の先延ばしを減らすには、何が効く?
予約や受診の日時を自分で書き出す計画です。イギリスの研究では、予約を「いつ・どこで・どうやって」取るか書いた女性の92%が検診を受け、書かなかった女性は69%でした。アメリカの会社では、接種の日と時刻を書く欄で接種率が4.2ポイント上がりました。
「もし〜なら〜する」という計画は、いつでも効く?
いつでもではありません。イギリスの大腸がん検診で、用意された計画文を案内に印刷した試験(2万件超)では、検査を返した割合は39.7%と40.4%で差がありませんでした。ジムの運動予定を書く実験でも来館は増えませんでした。
出典
- Sirois, F. M., & Monaghan, C. (2026). Procrastination, stress, and self-rated health: A multi-sample meta-analysis. British Journal of Health Psychology, 31(3), e70099. https://doi.org/10.1111/bjhp.70099
- Sheeran, P., & Orbell, S. (2000). Using implementation intentions to increase attendance for cervical cancer screening. Health Psychology, 19(3), 283–289. https://doi.org/10.1037/0278-6133.19.3.283
- Milkman, K. L., Beshears, J., Choi, J. J., Laibson, D., & Madrian, B. C. (2011). Using implementation intentions prompts to enhance influenza vaccination rates. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(26), 10415–10420. https://doi.org/10.1073/pnas.1103170108
- Lo, S. H., Good, A., Sheeran, P., Baio, G., Rainbow, S., Vart, G., von Wagner, C., & Wardle, J. (2014). Preformulated implementation intentions to promote colorectal cancer screening: A cluster-randomized trial. Health Psychology, 33(9), 998–1002. https://doi.org/10.1037/a0033507
- Carrera, M., Royer, H., Stehr, M., Sydnor, J., & Taubinsky, D. (2018). The limits of simple implementation intentions: Evidence from a field experiment on making plans to exercise. Journal of Health Economics, 62, 95–104. https://doi.org/10.1016/j.jhealeco.2018.09.002


