「未来の自分」を身近に感じると先延ばしは減る? 研究でわかった、未来の自分の思い浮かべ方

「明日の自分がやってくれる」と思って、今日の作業を後回しにしてしまう。そんな日は誰にでもあります。研究では、未来の自分を「他人」のように遠く感じている人ほど、先延ばしをしやすい傾向が見つかっています。では、未来の自分を身近に感じる練習をすれば、先延ばしは減るのでしょうか。わかっていることと、まだわかっていないことを分けて見ていきます。
3行でわかる
- 未来の自分とのつながりを強く感じる人ほど、先延ばしが少ない傾向がある。14の集団・4,312人をまとめた分析でも、未来を考える傾向と先延ばしには中程度の関連があった。
- 未来の出来事を具体的に思い浮かべる練習は、目先より先の得を選ぶ判断を後押しした(48本の論文・174の効果をまとめた分析で g=0.44)。前向きで、鮮明で、目の前の選択に関係する場面ほど効果が大きかった。
- ただし4週間の練習で「先延ばしそのもの」が瞑想より減ったとは確かめられていない。今のところは、締め切りの直後の自分を具体的に思い浮かべる、という小さな工夫として使うのが妥当。
01 悩みの正体なぜ「明日の自分」に作業を押しつけてしまう?
未来の自分を、今の自分とつながった存在ではなく「よく知らない他人」のように感じていると、面倒な作業を任せやすくなると考えられています。
心理学では、今の自分と未来の自分がどれくらいつながっていると感じるかを「未来の自分との連続性」と呼びます。似ていると感じるか、つながりを感じるか、はっきり思い浮かべられるか、といった質問で測ります。
このつながりが弱いと、未来の自分が困ることは「他人の困りごと」に近くなります。その結果、今の楽さを選びやすくなります。締め切りが遠いと手がつかない仕組みは締め切りが先だと動けない理由の記事で、気分を避けるための先延ばしは感情と先延ばしの記事で詳しく扱っています。
02 科学的にわかっていること未来の自分を身近に感じると、先延ばしは減る?
未来の自分を身近に感じる人ほど先延ばしが少ない傾向は、複数の研究で見つかっています。ただし、練習で身近に感じさせた結果、先延ばしが減ったと確かめた実験はまだ限られています。
Sirois(2014)[1]
14の集団・合計4,312人のデータをまとめた分析。未来のことをよく考える傾向が強い人ほど先延ばしが少なく、関連の強さは中程度だった。今の楽しさを重視する傾向とは、弱いながら逆向き(先延ばしが多い)の関連があった。
対象: 公刊・未公刊の研究を合わせた14集団 / 限界: アンケートによる相関の研究で、未来を考えないから先延ばしするのか、その逆かは決められない。
Zhaoら(2024)[2]
中国の大学で114人を調べた研究。未来の自分とのつながりを強く感じる人ほど、自分が実際に先延ばししている作業の先延ばしが少なかった(相関 r=-0.209)。この関係は、作業を終えたあとの良い結果を思い浮かべやすいことを通じて説明できた。
対象: 平均21歳の大学生114人 / 限界: 関連は弱めで、一時点の調査のため因果関係はわからない。
Rösch・Stramaccia・Benoit(2022)[3]
未来の出来事を具体的に思い浮かべる練習の効果を、48本の論文・174の効果からまとめた分析。練習をすると、すぐもらえる小さな得より、後でもらえる大きな得を選びやすくなった(効果の大きさ g=0.44、中程度)。想像する場面が前向きで、鮮明で、目の前の選択に関係しているほど効果は大きかった。
対象: お金や健康に関わる選択の実験 / 限界: 測ったのは「どちらを選ぶか」で、作業の先延ばしそのものではない。
Rutchickら(2018)[4]
20年後の自分に手紙を書いた人は、3か月後の自分に書いた人より、その後の数日間に多く運動していた。遠い未来の自分とのつながりを強める作業が、行動にも表れた例として報告されている。
対象: 手紙の条件を無作為に分けた実験 / 限界: 測ったのは運動で、勉強や仕事の先延ばしではない。
Blouin-Hudon・Pychyl(2017)[5]
大学生193人を、未来の自分を思い浮かべる音声を聞く群と、今に集中する瞑想の音声を聞く群に分け、週2回・4週間続けた。未来の自分を思い浮かべた群では、未来の自分とのつながりの感覚が瞑想群より高まった。一方、先延ばしの変化は、未来の自分の立場に立って考えられた人で違いが見られただけだった。
対象: 大学生193人 / 限界: 練習をしたグループ全体で、先延ばしが瞑想群より減ったとは示されていない。
Ganschowら(2024)[6]
男子大学生99人が、未来の自分を想像する練習(一部はVRで年をとった自分の姿を見る)をした。1週間後に、決めた行動を始めて続けるつもりだった人は90人中66人(73%)。未来の自分との「つながり」を強く感じた人ほど実行しやすかった一方、「今の自分とそっくり」と感じた人ほど実行しにくかった。
対象: 男子大学生99人 / 限界: 練習をしない比較群がなく、練習の方法どうしでは差がなかった。人数が少ないことも著者が認めている。
| 確かめたこと | 結果 |
|---|---|
| 未来の自分を身近に感じる人は先延ばしが少ない? | くり返し見つかっている(相関) |
| 未来を具体的に想像すると先の得を選ぶ? | 中程度の効果(48本の論文) |
| 想像の練習で先延ばしそのものが減る? | まだ確かめられていない |
03 今日からできる小さな一歩未来の自分は、どう思い浮かべればいい?
先延ばししている作業の「終わったあとの自分」を、前向きに、具体的に、2〜3分思い浮かべます。研究で効果が大きかった条件に合わせたやり方です。
作業が終わった直後の場面を1つ決める
「来週の金曜、提出ボタンを押した夜」のように、日時と場所まで決めます。遠い将来より、その作業に関係する近い場面の方が選択に結びつきやすいとされています。
所要 1分
その場面を、目を閉じて具体的に思い浮かべる
どこにいて、何が見えて、どんな気分か。うまくいった場面を想像します。前向きで鮮明な想像ほど効果が大きい傾向でした。
所要 2〜3分
その自分に向けて、短いメモを書いてから始める
「今日は最初の1段落だけ進めておいた」と未来の自分に書き、そのまま5分だけ手をつけます。始める時刻まで決めておくと、さらに動きやすくなります(始める時刻を決める計画の記事)。
所要 5分
04 続けるためのコツ想像するだけで終わらせないには?
想像は「始めるきっかけ」と考え、すぐ小さな行動につなげます。未来の自分を今とそっくりに思い込む必要はなく、つながりを感じられれば十分です。
- 想像したら、その場で最初の一歩を5分だけ行う。想像だけで満足すると、行動につながりにくくなります。
- 「未来の自分は今と同じ性格」と考えなくて大丈夫です。研究では、似ていると感じるより、つながっていると感じる方が実行と結びついていました。
- 失敗した場面ばかり想像してつらくなる日は、終わってほっとしている場面に切り替えます。
- 1回の想像で大きな変化は期待しすぎないこと。今のところ、先延ばし対策の主役というより、動き出すための補助の工夫です。
05よくある質問
未来の自分を想像すると、本当に先延ばしは減るの?
減ると言い切れるほどの証拠はまだありません。未来の自分とのつながりを強く感じる人ほど先延ばしが少ない傾向はくり返し見つかっています。一方で、4週間のイメージ練習の実験では、つながりの感覚は高まったものの、先延ばしそのものが瞑想をした人より減ったとまでは示されませんでした。
何年先の自分を想像すればいい?
先延ばしの対策としては、作業の締め切りの直後など、近い未来の具体的な場面が使いやすいと考えられます。未来を思い浮かべる研究をまとめた分析では、目の前の選択に関係する場面を想像したときほど効果が大きくなっていました。
未来の自分を想像すると、かえって不安になる場合は?
失敗した場面ばかりを思い浮かべるとつらくなりやすいので、うまくいった場面を想像する方に切り替えてみてください。研究でも、前向きな出来事を想像したときほど効果が大きい傾向でした。不安が強く日常生活に支障がある場合は、専門家に相談することも考えてください。
出典
- Sirois, F. M. (2014). Out of sight, out of time? A meta-analytic investigation of procrastination and time perspective. European Journal of Personality, 28(5), 511-520. https://doi.org/10.1002/per.1947
- Zhao, X., Zhang, R., & Feng, T. (2024). The vmPFC-IPL functional connectivity as the neural basis of future self-continuity impacted procrastination: the mediating role of anticipated positive outcomes. Behavioral and Brain Functions, 20, 11. https://doi.org/10.1186/s12993-024-00236-z
- Rösch, S. A., Stramaccia, D. F., & Benoit, R. G. (2022). Promoting farsighted decisions via episodic future thinking: A meta-analysis. Journal of Experimental Psychology: General, 151(7), 1606-1635. https://doi.org/10.1037/xge0001148
- Rutchick, A. M., Slepian, M. L., Reyes, M. O., Pleskus, L. N., & Hershfield, H. E. (2018). Future self-continuity is associated with improved health and increases exercise behavior. Journal of Experimental Psychology: Applied, 24(1), 72-80. https://doi.org/10.1037/xap0000153
- Blouin-Hudon, E.-M. C., & Pychyl, T. A. (2017). A mental imagery intervention to increase future self-continuity and reduce procrastination. Applied Psychology, 66(2), 326-352. https://doi.org/10.1111/apps.12088
- Ganschow, B., Zebel, S., van Gelder, J.-L., & Cornet, L. J. M. (2024). Feeling connected but dissimilar to one's future self reduces the intention-behavior gap. PLOS ONE, 19(7), e0305815. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0305815


