SNSを眺めて人と比べ、落ち込んだら?「うらやましさ」からの立て直し方を研究で調べた

気分転換のつもりでSNSを開いたのに、友だちの旅行や昇進の投稿を見ているうちに、かえって落ち込んでしまった。そんな日は誰にでもあります。研究では、眺めるだけの使い方が「うらやましさ」を通して気分を下げることがある一方、その影響はそろっておらず、人によって大きく違うこともわかっています。立て直しは、画面を閉じて、うらやましさの中身を確かめることから始められます。
3行でわかる
- Facebookを眺めるだけの使い方が、うらやましさを強めて気分を下げたという実験と日常の調査があります(Verduyn ら 2015)。
- ただし、40本の研究を見直したレビューでは、多くの研究がこの「眺めるだけは悪い」という仮説を支持していませんでした。のちの2つの実験でも差は出ていません。
- 14〜15歳の63人を1週間追った研究では、眺めるだけの使い方と気分の関係がマイナスだった人は約10%で、約46%はむしろプラスの関係でした。落ち込んだときは「今の自分には合わない使い方だった」と考え、使い方を変えれば十分です。
01 悩みの正体気分転換のSNSで、なぜ逆に落ち込む?
SNSを眺めるだけの時間は、他人のうまくいった場面と今の自分を比べる「上方比較(自分より上に見える人との比較)」が起きやすいからです。研究者は、この比較から生まれるうらやましさが、落ち込みの原因の一つだと考えています。
SNSに並ぶのは、旅行、合格、結婚、新しい仕事など、その人の一番いい場面です。一方で、こちらは疲れて横になっている自分です。
比べる相手は「その人の一番いい瞬間」で、比べられる側は「自分のふつうの日」。条件がそろっていないので、自分が負けているように見えやすくなります。
| 使い方 | していること | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 眺めるだけ(受け身の使い方) | 投稿やストーリーを次々に見る | 他人の良い場面と自分を比べやすい |
| やりとりする(能動的な使い方) | メッセージを送る、コメントする | 相手とのつながりを感じやすいと考えられている |
| 比べたあと | 「自分はだめだ」と考え続ける | うらやましさが落ち込みに変わる |
ただし、表の右の列は「起きやすい」とされていることで、誰にでも必ず起きるわけではありません。次の節で、研究の結果がどこまでそろっているかを見ます。
02 科学的にわかっていることSNSを眺めるだけだと、本当に気分は下がる?
下がると示した研究はありますが、まとめて見ると結果はそろっていません。気分が下がる人は一部で、変わらない人や良くなる人もいます。「眺めるだけは誰にとっても悪い」とは言い切れない段階です。
| 研究 | 調べ方 | 結果 |
|---|---|---|
| Verduyn ら(2015)[1] | 実験と日常の追跡 | 眺めるだけの使い方で気分が下がり、うらやましさが間に入っていた |
| Yoon ら(2019)[2] | メタ分析 | SNSでの上方比較が多い人ほど、抑うつが強めだった |
| Valkenburg ら(2022)[3] | 40本の研究の見直し | 多くの研究が「眺めるだけは悪い」を支持しなかった |
| Masciantonio ら(2023)[4] | 2つの事前登録実験 | 眺めるだけでも、やりとりしても、気分に差は出なかった |
| Beyens ら(2020)[5] | 1週間の追跡 | 気分が下がったのは一部で、人によって違った |
Verduyn ら(2015)[1]
実験室でFacebookを「眺めるだけ」で使うよう指示された人は、「やりとりして」使うよう指示された人に比べ、その後に気分が下がりました。日常の生活の中で、何度も気分を尋ねる調査でも同じ傾向が見られました。眺めるだけの使い方は、うらやましさを強めることで気分を下げていました。
対象: 実験室の実験と、日常での追跡調査の2つの研究 / 限界: Facebookでの結果です。のちに別の研究者が行った実験[4]では、同じような差は出ませんでした。
Yoon ら(2019)[2]
多くの研究をまとめて分析するメタ分析です。SNSに使う時間が長い人ほど抑うつが強めでしたが、その関係は小さいものでした。一方、SNSで自分より上に見える人と比べることが多い人ほど、抑うつが強めで、その関係は中くらいの大きさでした。使う時間より、比べ方のほうが抑うつとの関係が強かったことになります。
対象: 使う時間の分析は33本の論文・15,881人、上方比較の分析は5本の論文・2,298人 / 限界: 関係を見た研究で、比べることが落ち込みの原因かどうかはわかりません。上方比較の分析は研究の数が少なく、結果のばらつきも大きいと著者が書いています。
Valkenburg・van Driel・Beyens(2022)[3]
「やりとりする使い方は幸福感を上げ、眺めるだけの使い方は下げる」という、よく言われる説を確かめたレビューです。40本の調査研究から172の関係を集めたところ、多くの研究がこの説を支持していませんでした。研究ごとに「眺めるだけ」の測り方もばらばらで、36通りありました。
対象: アンケートを使った40本の研究 / 限界: 著者らは、使った時間だけでは大ざっぱすぎると指摘しています。何を見たか、見る前の気分、人による感じやすさの違いを考える必要がある、という結論です。
Masciantonio ら(2023)[4]
Facebook、Instagram、Twitterを「眺めるだけ」か「やりとりして」使うよう割り当て、前後の気分や満足感を比べました。2つの実験のどちらでも、使い方やSNSの種類による差は出ませんでした。ただし2つめの実験では、見た投稿を明るい内容だと感じた人ほど、生活の満足感が上がり、嫌な気持ちが減っていました。
対象: 学生以外の大人244人(使用10分)と、フランスの学生164人(使用時間を2倍に延長) / 限界: 「差がない」ことを強く支持する証拠とまでは言えない分析もあり、著者自身が慎重に受け取るよう書いています。
Beyens ら(2020)[5]
1日6回、1週間にわたって、SNSの使い方とその時の気分をスマホで尋ねました。眺めるだけの使い方と気分の関係を一人ずつ見ると、関係がほぼない人が約44%、プラス(使ったときほど気分が良い)の人が約46%、マイナスの人は約10%でした。同じ使い方でも、受ける影響は人によって大きく違っていました。
対象: 14〜15歳の63人、2,155回の回答 / 限界: 全体に気分の良い若者が多く、気分の落ち込みやすい人では結果が違う可能性があると著者が述べています。大人での結果ではありません。
まとめると、「SNSで比べて落ち込む」ことは実際に起こりえます。ただ、それは誰にでも毎回起こることではありません。落ち込んだときは、その使い方が今の自分には合わなかった、と考えてかまいません。
03 今日からできる小さな一歩SNSで比べて落ち込んだあと、何をすればいい?
まず画面を閉じ、気持ちに「うらやましい」と名前をつけます。次に、そのうらやましさが何を欲しがっているかを書き出し、眺める時間を身近な人とのやりとりに置きかえます。
画面を閉じて、「うらやましい」と名前をつける
「今、比べて落ち込んでいる」「うらやましい」と、心の中か紙に一言で書きます。気持ちを言葉にすると落ち着きやすいことは、別の研究でも調べられています(気持ちに名前をつける研究)。
所要 1分
うらやましさを「自分が欲しいもの」に書き換える
「あの人の旅行がうらやましい」なら「自分も休みに遠出したい」のように、相手ではなく自分の望みとして書き直します。Instagramの利用者385人の調査では、比べることが多い人ほど刺激を受けて意欲がわく傾向があり、その間には「自分もああなりたい」と感じる前向きなうらやましさが入っていました[6]。
所要 3分
眺めるかわりに、身近な人に1通送る
知らない人の投稿を眺める時間を、友だちや家族とのやりとりに置きかえます。14〜15歳を対象にした研究では、WhatsApp(メッセージアプリ)でメッセージを読んだ時間帯は、平均して気分が良くなっていました[5]。知らない人の投稿より、身近な人の言葉に触れる時間を増やしてみます。
所要 2分
落ち込みやすいアカウントを、しばらくミュートする
見るたびに比べてしまう相手は、フォローを外さなくてもミュートで十分です。研究では、見た投稿を明るい内容だと感じた人ほど、嫌な気持ちが減っていました[4]。何を見るかを選び直すのも立て直しの一つです。
所要 3分
04 続けるためのコツ次にSNSを開くとき、比べて落ち込まないためには?
開く前に「何をしに開くか」を決め、終わる時間も決めておきます。比べて落ち込むかどうかは人と日によって違うので、自分が下がりやすい時間帯やアカウントを知っておくのが近道です。
- 開く目的を一言決める: 「友だちに返信する」「〇〇の情報を見る」など。目的のない眺めるだけの時間が長くならないようにします。
- 疲れた夜は開かない: 落ち込んでいるときほど、他人の良い場面が大きく見えやすくなります。疲れた日は、別の気分転換を先に試します(気分より先に動く研究)。
- 使う時間を区切る: SNSをやめる期間と幸福感の関係は、SNSをやめると幸福度は上がるのかの記事でまとめています。
- 比べた後に考え続けてしまうなら: 同じことをぐるぐる考える夜は、反芻から抜け出す研究が参考になります。見すぎて1日が終わった翌日の立て直しは、翌日の集中を取り戻す記事にあります。
05よくある質問
SNSを見ると人と比べて落ち込むのは、私だけ?
あなただけではありません。SNSで自分より上に見える人と比べることが多い人ほど、抑うつが強めだったというメタ分析もあります。一方で、比べても気分が変わらない人や、良くなる人もいます。人によって、日によって違うものです。
比べて落ち込むなら、SNSはやめたほうがいい?
すぐにやめる必要があるとは限りません。眺めるだけの使い方が気分を下げるという結果は、のちの研究でそろっていません。まずは、落ち込みやすいアカウントをミュートする、開く目的と時間を決める、身近な人とのやりとりに使う、といった使い方の見直しから試せます。
人をうらやましいと思うのは悪いこと?
悪いことではありません。Instagramの利用者385人を調べた研究では、「自分もああなりたい」という前向きなうらやましさが、意欲や刺激につながっていました。うらやましさは、自分が何を望んでいるかを知る手がかりにもなります。
落ち込みが何日も続くときは?
気分の落ち込みや、眠れない・食べられないといった状態が2週間以上続くときは、自分で何とかしようとせず、医療機関や相談窓口に相談することも考えてください。
出典
- Verduyn, P., Lee, D. S., Park, J., Shablack, H., Orvell, A., Bayer, J., Ybarra, O., Jonides, J., & Kross, E. (2015). Passive Facebook usage undermines affective well-being: Experimental and longitudinal evidence. Journal of Experimental Psychology: General, 144(2), 480-488. https://doi.org/10.1037/xge0000057
- Yoon, S., Kleinman, M., Mertz, J., & Brannick, M. (2019). Is social network site usage related to depression? A meta-analysis of Facebook-depression relations. Journal of Affective Disorders, 248, 65-72. https://doi.org/10.1016/j.jad.2019.01.026
- Valkenburg, P. M., van Driel, I. I., & Beyens, I. (2022). The associations of active and passive social media use with well-being: A critical scoping review. New Media & Society, 24(2), 530-549. https://doi.org/10.1177/14614448211065425
- Masciantonio, A., Résibois, M., Bouchat, P., & Bourguignon, D. (2023). Social network sites and well-being: Is it only a matter of content? International Review of Social Psychology, 36, 6. https://doi.org/10.5334/irsp.736
- Beyens, I., Pouwels, J. L., van Driel, I. I., Keijsers, L., & Valkenburg, P. M. (2020). The effect of social media on well-being differs from adolescent to adolescent. Scientific Reports, 10, 10763. https://doi.org/10.1038/s41598-020-67727-7
- Meier, A., & Schäfer, S. (2018). The positive side of social comparison on social network sites: How envy can drive inspiration on Instagram. Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking, 21(7), 411-417. https://doi.org/10.1089/cyber.2017.0708


