オンライン会議のあと、どっと疲れるのはなぜ?「Zoom疲れ」の仕組みを研究で調べた

座って画面を見ていただけなのに、オンライン会議のあとはどっと疲れる。そう感じる人は少なくありません。研究でわかってきたのは、同じ内容でも画面越しのほうが脳が疲れやすいこと、そして自分の顔を見続けることや会議の多さが疲れを足していることでした。一方で、コロナ禍のあとの研究では「もう疲れの差はない」という結果も出ています。わかっていることと、まだ揺れていることを整理しました。
3行でわかる
- 同じ50分の講義を対面と画面越しで聞いた35人の実験では、画面越しのほうが「疲れた・眠い・うんざり」と感じ、脳波にも疲れのしるしが出た。
- 自分の顔の表示を消した週は、ゼミ後の疲れが7段階で3.41から2.25に下がった。会議が多い人ほど「やりとりが多すぎる」と感じ、それが疲れと結びついていた。
- ただし2024年の調査では、ビデオ会議そのものと疲れの関係は見られなかった。疲れやすかったのは、44分以上の会議と退屈な会議だった。
01 悩みの正体オンライン会議で疲れる「Zoom疲れ」とは?
Zoom疲れは、オンライン会議のあとに感じる、ぐったりした疲れのことです。研究者は、画面越しの会話が対面より頭を使うこと、自分の顔が見え続けること、会議の詰め込みなど、いくつもの原因が重なって起きると考えています。
コロナ禍で会議や授業が一気にオンラインになり、この疲れは「Zoom疲れ」と呼ばれるようになりました。Zoomに限らず、Teamsなどほかのビデオ会議でも同じです。
研究者たちは、原因を4つの方向から整理しています。本人の性格や状態、職場の会議の組み方、ソフトや画面の仕組み、部屋などの環境です[7]。
ただし、この分野の研究は始まったばかりです。整理した研究者自身が「人数の少ない研究が多く、食い違う結果もある」と書いています[7]。長い時間の作業で集中が切れる仕組みは、集中力が切れる理由の記事でも紹介しています。
02 科学的にわかっていること画面越しの会議が疲れるのはなぜ?
画面越しのほうが、脳が疲れやすいことが実験で示されています。自分の顔を見続けることや、会議が多すぎることも疲れと結びついていました。ただし、カメラのオン・オフでは差が出ず、最近の調査では疲れの差そのものが見られない結果もあります。
Riedlら(2023)[1]
同じ教授の同じ50分の講義を、対面と画面越しで1回ずつ聞いてもらいました。画面越しのあとは、より「疲れた・眠い・うんざり」と感じ、「元気・楽しい」は下がりました。脳波では疲れや注意の低下を示すしるしが講義中にじわじわ増え、最後の15分で対面との差がはっきりしました。心拍数も少しずつ下がりました。
対象: オーストリアの大学生35人(20〜29歳) / 限界: 画面越しの講義は録画で、話しかけられない一方通行の形でした。若い学生だけの実験室での結果です。
Ratanら(2022)[2]
在宅勤務で、その日に2回以上オンライン会議に出たアメリカの大人613人に答えてもらいました。疲れは女性のほうが14.9%高く、「自分の顔が好きではない」と感じる人ほど疲れていました(相関0.26)。男女の差の一部は、画面に映る自分の顔への不満で説明できました。
対象: アメリカの18〜68歳613人 / 限界: 1回のアンケートで、原因と結果は決められません。2024年の脳波の研究では、男女差は再現されませんでした[8]。
Baschら(2025)[3]
大学のオンラインゼミで、週ごとに設定を変えて疲れを比べました。自分の顔の表示を消した週は、疲れ(7段階)が3.41から2.25に下がりました。学生が発言や作業で参加する週も、ただ聞く週より疲れが少なくなりました。発言者だけを大きく映す表示や、背景の画像では、はっきりした差は出ませんでした。
対象: ドイツの大学の心理学の学生39人(比べた人数は25人など) / 限界: 人数が少なく、自分の顔を消した週と出した週では、学ぶ内容の難しさも違っていました。
Xuら(2024)[8]
実際のビデオ会議に、自分の顔の表示をオンとオフの両方で参加してもらい、脳波を測りました。表示がオンのときは、疲れと結びつくとされる脳波(アルファ波)がはっきり強くなりました。男女の差はありませんでした。
対象: 32人(男性16人・女性16人) / 限界: 20分の会議1回ずつの比較です。論文の要旨で確認した内容です。
Liら(2024)[4]
シンガポールの中高生489人と、シンガポールとドイツの働く大人1,558人に答えてもらいました。ビデオ会議の回数が多い人ほど「やりとりが多すぎる」と感じていて、その感覚が強い人ほど疲れていました。会議の長さは、この感覚とは結びついていませんでした。
対象: 計2,047人 / 限界: アンケートの結果で、会議が多いから疲れるのか、ほかの原因があるのかは決められません。
Masjutinら(2024)[5]
「カメラをオンにすると疲れる」という説を、事前に計画を登録した2つの研究で確かめました。仕事の会議についての調査でも、カメラのオン・オフを分けた実験でも、カメラと疲れの関係は見つかりませんでした。
対象: ドイツ語圏の働く人287人と、実験の参加者64人 / 限界: 実験の参加者は初対面どうしで、職場の同僚と会議をする場面とは違います。
Nesher ShoshanとWehrt(2025)[6]
コロナ禍の調査を、2024年にやり直しました。10日間、1日4回、会議のたびに疲れを記録してもらうと、ビデオ会議そのものは疲れと関係していませんでした。44分より短いビデオ会議はほかの会議より疲れが少なく、退屈な会議ほど少し疲れていました。
対象: 125人・945回の会議 / 限界: 著者は、人々がビデオ会議に慣れた可能性を挙げています。論文の要旨で確認した内容です。
3.41 → 2.25
オンラインゼミで、自分の顔の表示を消した週の疲れの下がり方(7段階。25人の比較)[3]
| 疲れの原因の候補 | 研究の結果 |
|---|---|
| 画面越しで話を聞く | 対面より疲れ、脳波にも差(35人)[1]。2024年の調査では差なし[6] |
| 自分の顔が映り続ける | 表示を消すと疲れが下がり[3]、脳波でも差[8]。顔への不満と疲れが結びつく[2] |
| 会議の回数が多い | 「やりとりが多すぎる」感覚が強まり、疲れと結びつく[4] |
| ただ聞くだけ | 参加する週より疲れが多い[3] |
| 長い・退屈な会議 | 44分以上と退屈な会議ほど疲れる[6] |
| カメラをオンにする | 2つの研究で関係なし[5] |
03 今日からできる小さな一歩オンライン会議の疲れを減らすには?
まず自分の顔の表示を消し、会議は短めに区切ります。聞くだけになりそうな会議では、発言やメモで小さく参加します。カメラを消すかどうかより、この3つのほうが研究の裏づけがあります。
自分の顔の表示(セルフビュー)を消す
相手からは映ったまま、自分の画面にだけ自分を出さない設定があります。ゼミの研究では、この週の疲れが下がりました[3]。脳波の実験でも、表示をオンにしたほうが疲れのしるしが強く出ました[8]。
所要 10秒
会議は45分より短く区切る
決められる立場なら、1時間の会議を40分にするなど短くします。44分より短いビデオ会議は疲れが少なめでした[6]。
所要 1分(予定を組むとき)
聞くだけにせず、1回は参加する
質問を1つする、チャットに書く、メモを取るなど、小さく関わります。参加する形の週は疲れが少なくなりました[3]。
所要 会議中に1回
会議の数そのものを見直す
今週の会議を数え、メールで済むものを1つ減らします。会議の多さは「やりとりが多すぎる」感覚と結びついていました[4]。
所要 5分
04 続けるためのコツ会議のあとの疲れは、どう回復させる?
会議と会議の間をつめず、画面から離れる時間を数分でも入れます。疲れは画面作業全体からも来るため、会議だけでなく一日の画面時間も見直します。強い疲れが毎日続くなら、働き方の相談も考えます。
- 会議を連続で入れない。画面越しの講義では、終わりに近い時間ほど疲れのしるしが強くなった[1]。
- 目の疲れは、ビデオ会議に限らず長い画面作業全体で起きると整理されている[7]。
- 会議中のながら作業を減らす。カメラの研究の著者は、ながら作業も疲れの候補に挙げている[5]。
- 休んでも疲れが抜けないときは、休み方を見直す(休んでも疲れが抜けない理由の記事)。
- 画面越しより、人と直接話すほうが気分が上がる場面もある(人と話すと気分が上がる研究)。
05よくある質問
カメラをオフにすれば、オンライン会議の疲れは減りますか?
はっきりしません。事前に計画を登録した2つの研究では、カメラのオン・オフと疲れの関係は見つかりませんでした。一方で、自分の顔の表示を消すと疲れが下がったという研究はあります。カメラを消しにくい場面なら、自分の画面に自分を出さない設定を先に試すのが現実的です。
オンライン会議は対面より疲れるのですか?
研究によって結果が違います。同じ50分の講義を比べた35人の実験では、画面越しのほうが疲れ、脳波にも差が出ました。一方、2024年に125人の会議945回を記録した調査では、ビデオ会議そのものと疲れの関係は見られませんでした。慣れによって変わった可能性があります。
女性のほうがオンライン会議で疲れやすいのですか?
613人の調査では、女性の疲れが14.9%高く、画面に映る自分の顔への不満が差の一部を説明していました。ただし、2024年の脳波の研究では男女の差は再現されませんでした。性別で決まるというより、自分の顔が見え続けることの影響と考えるほうが安全です。
出典
- Riedl, R., Kostoglou, K., Wriessnegger, S. C., & Müller-Putz, G. R. (2023). Videoconference fatigue from a neurophysiological perspective: Experimental evidence based on electroencephalography (EEG) and electrocardiography (ECG). Scientific Reports, 13, 18371. https://doi.org/10.1038/s41598-023-45374-y
- Ratan, R., Miller, D. B., & Bailenson, J. N. (2022). Facial appearance dissatisfaction explains differences in Zoom fatigue. Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking, 25(2), 124-129. https://doi.org/10.1089/cyber.2021.0112
- Basch, J. M., Albus, P., & Seufert, T. (2025). Fighting Zoom fatigue: Evidence-based approaches in university online education. Scientific Reports, 15, 7091. https://doi.org/10.1038/s41598-025-90973-6
- Li, B. J., Zhang, H., & Montag, C. (2024). Too much to process? Exploring the relationships between communication and information overload and videoconference fatigue. PLOS ONE, 19(12), e0312376. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0312376
- Masjutin, L., Bangemann, A., Reimann, L., & Maier, G. W. (2024). Fatigued individuals show increased conformity in virtual meetings. Scientific Reports, 14, 18807. https://doi.org/10.1038/s41598-024-69786-6
- Nesher Shoshan, H., & Wehrt, W. (2025). "Zoom fatigue" revisited: Are video meetings still exhausting post-COVID-19? Journal of Occupational Health Psychology, 30(5), 353-364.(要旨で確認) https://doi.org/10.1037/ocp0000409
- Döring, N., De Moor, K., Fiedler, M., Schoenenberg, K., & Raake, A. (2022). Videoconference fatigue: A conceptual analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(4), 2061. https://doi.org/10.3390/ijerph19042061
- Xu, J., Whelan, E., O'Brien, A., & O'Hora, D. (2024). Does self-view mode generate more videoconferencing fatigue in women than men? An experiment using EEG signals. Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking, 27(6), 426-430.(要旨で確認) https://doi.org/10.1089/cyber.2023.0577


