気分・ストレス

嫌な出来事ほど強く記憶に残るのはなぜ? 脳の「ネガティビティ・バイアス」を研究で調べた

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窓に張りついたみぞれ
Photo: W.carter / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

褒められたことはすぐ忘れるのに、一言の嫌味は何年も覚えている。そんな自分にうんざりすることはありませんか。それは性格が暗いからではありません。脳は、悪い情報を良い情報より強く処理する傾向があると研究で示されています。ただし、嫌な記憶の「つらさ」そのものは、良い記憶の喜びより早く薄れていくこともわかっています。

3行でわかる

  1. 悪い出来事は良い出来事より心に強く影響する。研究者はこれを「ネガティビティ・バイアス」と呼び、脳波の研究では、悪い写真を見たときの反応が良い写真より大きかった。
  2. 嫌な出来事は、見た目などの細部まで覚えやすい。良い出来事は「だいたいの流れ」で覚えられやすい。
  3. 一方で、10の文化の562人を調べた研究では、どの集団でも嫌な記憶のつらさのほうが早く薄れていた。反応してくれる相手に話すと、つらさはさらに薄れた。

01 悩みの正体嫌なことばかり覚えているのはなぜ?

脳が、悪い情報を良い情報より強く、細かく処理するからです。この傾向は「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれ、人間関係や学習など多くの場面で見られると研究で整理されています。

Baumeisterら(2001)は、心理学の幅広い研究を見直しました[1]。悪い出来事、悪い感情、悪いフィードバックは、良いものより強い影響を持っていました。悪い情報はより念入りに処理され、悪い第一印象は良い第一印象よりも早くでき、覆りにくい傾向がありました。

ただし、覚えやすさとつらさは別の話です。後で見るように、嫌な記憶の「つらさ」は時間とともに早く薄れる傾向があります。

02 科学的にわかっていること嫌な記憶は、脳でどう残りやすい?

悪い情報は脳の反応が大きく、見た目などの細部まで覚えられやすいことがわかっています。ただし嫌な記憶のつらさは、良い記憶の喜びより早く薄れることも、多くの研究でくり返し示されています。

Itoら(1998)[2]

良い写真・悪い写真・どちらでもない写真を見せ、脳波を測りました。悪い写真を見たときの脳の反応は、良い写真のときより大きくなりました。2種類の写真は、出てくる回数も、刺激の強さも同じにそろえていました。悪いものを重く見る傾向は、「良いか悪いか」を分ける最初の段階から起きていると著者らは結論づけました。

対象: 写真を見る実験の参加者 / 限界: のちの研究では、写真の種類を変えると差が小さくなるという指摘もあります。

Kensinger(2009)[3]

感情と記憶の研究をまとめました。悪い出来事は、見た目などの細部まで覚えられやすい傾向がありました。良い出来事は、細部より「だいたいの意味」で覚えられやすいとされています。嫌な出来事を覚えるときは五感の情報を処理する脳の働きが、良い出来事では意味をとらえる働きが強まるためと考えられています。

対象: 多数の記憶実験をまとめた総説 / 限界: 研究者の中には、良い悪いではなく「興奮の強さ」が記憶を強めているという意見もあります。

Ritchieら(2015)[4]

世界の10の文化の562人から、2400件以上の思い出を集めました。思い出したときの感情の強さを、出来事の当時と比べました。どの集団でも、嫌な出来事のつらさのほうが、良い出来事の喜びより早く薄れていました。この傾向は「フェーディング・アフェクト・バイアス(感情が薄れる偏り)」と呼ばれます。

対象: 10の文化の562人 / 限界: 当時の感情は、あとから思い出して答えたものです。

Muirら(2015)[5]

良い思い出と嫌な思い出を、話さない、ひとりで声に出す、ほかの参加者に話す、のどれかに割り当てました。ひとりで声に出すだけでは、嫌な記憶が薄れる傾向は強まりませんでした。反応を返してくれる相手に話すと、嫌な記憶のつらさは下がりました。反応しない相手に話すと、逆につらさは強まりました。

対象: 実験の参加者(1週間後に再び評価) / 限界: 実験室で、初対面の参加者どうしで話した結果です。

研究を並べると、「覚えていること」と「つらさ」は別ものだとわかります。

比べたこと嫌な出来事良い出来事
脳の最初の反応[2]大きい小さい
覚え方[3]細部まで覚えやすいだいたいの意味で覚えやすい
時間がたった後の感情[4]つらさが早く薄れる喜びはゆっくり薄れる

03 今日からできる小さな一歩嫌な記憶のつらさを薄れさせるには?

嫌な記憶は、時間とともに自然と薄れやすい性質があります。それを後押しするには、反応してくれる人に話し、良い出来事も意識して思い出す時間をとります。

1

反応を返してくれる人に話す

反応してくれる相手に話すと嫌な記憶のつらさが下がり、反応しない相手では逆に強まりました[5]。話す相手は、聞き流さずに返事をくれる人を選びます。

所要 10分ほど

2

気持ちに名前をつけて書く

話せる相手がいないときは、紙に書く方法もあります。研究はつらい気持ちを書き出す記事と気持ちに名前をつける記事で紹介しています。

所要 5〜15分

3

良かった出来事を細かく思い出す

良い出来事は「だいたい」で覚えられやすい傾向があります[3]。寝る前に、今日の良かったことを1つ、場所や言葉まで思い出してみます。感謝日記の研究も参考になります。

所要 3分

04 続けるためのコツ嫌な記憶がいつまでも薄れないときは?

不安が強い人では、嫌な記憶のつらさが薄れにくいことがわかっています。同じ記憶を何度も思い返して苦しい状態が続くなら、ひとりで抱えず専門家に相談することも選択肢です。

05よくある質問

嫌な出来事ほど強く記憶に残るのはなぜですか?

脳は悪い情報を良い情報より強く処理する傾向があり、「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれます。脳波の研究では悪い写真への反応が良い写真より大きく、悪い出来事は細部まで覚えられやすいことも示されています。

嫌な記憶はずっとつらいままですか?

多くの場合、そうではありません。10の文化の562人を調べた研究では、どの集団でも嫌な出来事のつらさが良い出来事の喜びより早く薄れていました。ただし不安が強い人では薄れにくいという研究もあります。

嫌なことを人に話すと楽になるのですか?

相手しだいです。実験では、反応を返してくれる相手に話すと嫌な記憶のつらさが下がりました。反応しない相手に話すと、つらさは逆に強まりました。

出典

  1. Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C., & Vohs, K. D. (2001). Bad is stronger than good. Review of General Psychology, 5(4), 323-370. https://doi.org/10.1037/1089-2680.5.4.323
  2. Ito, T. A., Larsen, J. T., Smith, N. K., & Cacioppo, J. T. (1998). Negative information weighs more heavily on the brain: The negativity bias in evaluative categorizations. Journal of Personality and Social Psychology, 75(4), 887-900. https://doi.org/10.1037/0022-3514.75.4.887
  3. Kensinger, E. A. (2009). Remembering the details: Effects of emotion. Emotion Review, 1(2), 99-113. https://doi.org/10.1177/1754073908100432
  4. Ritchie, T. D., Batteson, T. J., Bohn, A., Crawford, M. T., Ferguson, G. V., Schrauf, R. W., Vogl, R. J., & Walker, W. R. (2015). A pancultural perspective on the fading affect bias in autobiographical memory. Memory, 23(2), 278-290. https://doi.org/10.1080/09658211.2014.884138
  5. Muir, K., Brown, C., & Madill, A. (2015). The fading affect bias: Effects of social disclosure to an interactive versus non-responsive listener. Memory, 23(6), 829-847. https://doi.org/10.1080/09658211.2014.931435
  6. Walker, W. R., Yancu, C. N., & Skowronski, J. J. (2014). Trait anxiety reduces affective fading for both positive and negative autobiographical memories. Advances in Cognitive Psychology, 10(3), 81-89. https://doi.org/10.5709/acp-0159-0
  7. Reed, A. E., Chan, L., & Mikels, J. A. (2014). Meta-analysis of the age-related positivity effect: Age differences in preferences for positive over negative information. Psychology and Aging, 29(1), 1-15. https://doi.org/10.1037/a0035194
  8. Alves, H., Unkelbach, C., Burghardt, J., Koch, A. S., Krüger, T., & Becker, V. D. (2015). A density explanation of valence asymmetries in recognition memory. Memory & Cognition, 43(6), 896-909. https://doi.org/10.3758/s13421-015-0515-5