記憶・学習

寝ている間に英単語を聞き流すと覚えられる?「睡眠学習」の研究でわかったこと

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ノートパソコンのそばに置かれたヘッドホン
Photo: Álvaro Bernal abn / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

寝る前に英単語の音声を流しておけば、寝ている間に覚えられる。そんな「睡眠学習」が本当なら、とても楽ですよね。研究を見ると、寝ている間にまったく新しい単語を覚え、起きてから思い出せるようになったという結果は出ていません。一方で、起きている間に覚えた単語を、眠りの特定の段階で音で流すと、記憶が少し強まることは91件の実験をまとめた解析で確かめられています。

3行でわかる

  1. 寝ている間に新しいことを学べるかを調べた研究は、効果が出なかったものも多い。効果が出た研究でも、選択式のテストで少し当たりやすくなる程度の「無意識の記憶」だった。
  2. 起きている間に覚えた内容を、ノンレム睡眠の間に音で流す方法は、91件・2,004人分の解析で小さな効果(g=0.29)があった。レム睡眠中や起きている間に流しても効果はなかった。
  3. 雑音のパターンを聞かせた実験では、深い眠りの間に聞いたものは、起きてから逆に見分けにくくなった。一晩中流しっぱなしにする使い方では、効く時間を狙えない。

01 悩みの正体「睡眠学習」が期待されるのはなぜ?

眠りの間に記憶が整理・定着されることがわかってきたため、その時間に音で学べれば効率的だと期待されてきた。ただ「定着」と「新しく覚える」は別の話になる。

眠りには、起きている間に覚えたことを定着させる働きがあると考えられています(覚えた後に眠るとよい理由)。そこから「寝ている間に聞けば、もっと覚えられるのでは」という発想が生まれます。

ただし研究者の間でも、寝ている間の学習は「昔からの夢」とされてきました。きちんと管理された実験で新しい記憶ができたという報告は少なく、効果が出なかった研究も多いとされています(Andrillonらの論文での整理による)。

ここでは2つを分けて考えます。1つは、知らない単語を寝ている間に聞いて覚えること。もう1つは、起きている間に覚えた単語を、寝ている間に音で呼び起こすことです。研究の結果は、この2つで大きく違います。

02 科学的にわかっていること寝ている間に聞いた単語は覚えられる?

知らない単語を寝ている間に聞いて、起きてから思い出せるようになった研究はない。効果がはっきりしているのは、起きている間に覚えた内容をノンレム睡眠の間に音で呼び起こす方法だけだ。

寝ている間の音の使い方研究でわかったこと判定
知らない単語や教材を流す思い出せるようになった研究はない。選択式で少し当たりやすくなった例のみ期待しにくい
覚えた単語をノンレム睡眠中に流す91件の解析で小さな効果(g=0.29)。翻訳を思い出す成績が上がった実験も検査室では効く
覚えた内容をレム睡眠中・起きている間に流す91件の解析では効果なし効かない

Huら(2020)[1]

寝ている間に、覚えたときと同じ音やにおいを流して記憶を呼び起こす「ターゲット記憶再活性化」の実験91件(2,004人)をまとめたメタ分析。全体として記憶を高める効果があり、効果の大きさはg=0.29(小さめの効果)だった。効いたのはノンレム睡眠の段階2と深い眠り(徐波睡眠)で、レム睡眠中や起きている間に流しても効果は見られなかった。

対象: 91件の実験・2,004人 / 限界: 眠りの段階を見分けて音を流す検査室の方法で、家で一晩中流す使い方とは条件が違う。対象は、寝る前にすでに覚えた内容に限られる。

Schreiner・Rasch(2015)[2]

ドイツ語を話す参加者がオランダ語の単語と訳を覚え、その後のノンレム睡眠中に一部のオランダ語を音声で流した。起きてから訳を答えるテストでは、流した単語のほうが流さなかった単語より成績が良かった。同じ音声を起きている間に流した場合は、効果がなかった。

対象: ドイツ語を話す参加者(検査室で睡眠) / 限界: 寝る前に覚えた単語の「復習」に効いたもので、知らない単語を寝ている間に覚えたわけではない。

Züstら(2019)[3]

昼寝の深い眠りの間に、意味のない造語と実在の単語のペア(例:「tofer」と「家」)を聞かせた実験。2つ目の単語が、脳波のゆっくりした波の山と重なったときだけ、起きてからの選択テストで造語の意味を当てる確率が上がった。測ったのは、本人が覚えた自覚のない無意識の記憶だった。

対象: ドイツ語を話す若い男女 / 限界: 脳波で波の山を狙う精密なタイミングが必要。音声を流しっぱなしにする方法とは違い、思い出して使える記憶でもない。

Andrillonら(2017)[4]

20人に、「ザー」という雑音の中に隠れた繰り返しのパターンを聞かせた一晩の実験。眠っている間に同じパターンを繰り返し流すと、レム睡眠や浅いノンレム睡眠中に聞いたものは、起きてから見つけやすくなった。ところが深いノンレム睡眠中に聞いたものは、逆に見つけにくくなった。

対象: 20人 / 限界: 覚えたのは言葉ではなく雑音のパターン。勉強の内容にそのまま当てはまるとは限らない。

Arziら(2012)[5]

眠っている人に、音といい香り・いやなにおいを組み合わせて聞かせた実験。すると、音だけを聞いたときにも、においに合わせて鼻で吸う強さが変わるようになった。この反応は翌朝起きてからも残っていたが、本人は学んだことに気づいていなかった。

対象: 眠っている成人(睡眠中に音とにおいを組み合わせて提示) / 限界: 学んだのは鼻で吸う反応という単純な結びつきで、言葉や知識の学習とは別物。

03 今日からできる小さな一歩寝る時間を暗記に生かすには、どうする?

寝る前に思い出す練習をしてから眠るほうが、寝ている間に音声を流すより研究の裏づけが強い。翌朝もう一度テストして、忘れた所を確かめる。

1

寝る前に覚えて、本を閉じて思い出す

覚えたい単語を見たあと、何も見ずに書き出してみる。読み返すより、思い出す練習のほうが記憶に残りやすい。

所要 15分

2

そのまま、しっかり眠る

寝ている間に新しい単語を足そうとせず、覚えた内容を眠りに任せる。音声を流すなら、寝る前に覚えた単語だけを小さな音で短くする。

所要 一晩

3

翌朝、同じ単語をもう一度テストする

起きてすぐ、昨夜の単語を思い出してみる。忘れていた単語は、日をあけて復習する。

所要 5〜10分

04 続けるためのコツ睡眠学習の音声を流すとき、気をつけることは?

一晩中の音は、眠りそのものを浅くするおそれがある。寝ながら覚えたつもりで、起きている間の勉強を減らさないことが大切だ。

05よくある質問

寝ている間に英語を聞き流すと、英語が話せるようになる?

研究では、寝ている間に知らない単語を聞いて、起きてから思い出せるようになった例は報告されていません。見つかったのは、選択式のテストで少し当たりやすくなる程度の無意識の記憶です。

寝る前に覚えた単語を、寝ている間に流すのは意味がある?

検査室では、覚えた単語をノンレム睡眠中に流すと、翌朝の成績が上がりました。91件の解析でも小さな効果が確認されています。ただし眠りの段階を見分けて流しており、家で一晩中流しても同じ効果が出るかはわかっていません。

睡眠学習のアプリや音声は使わないほうがいい?

害がはっきり示されたわけではありません。ただ、一晩中の音は眠りを浅くするおそれがあります。使うなら小さな音で短くし、覚える勉強は起きている間に行いましょう。

出典

  1. Hu X, Cheng LY, Chiu MH, Paller KA (2020). Promoting memory consolidation during sleep: A meta-analysis of targeted memory reactivation. Psychological Bulletin, 146(3), 218-244. https://doi.org/10.1037/bul0000223
  2. Schreiner T, Rasch B (2015). Boosting Vocabulary Learning by Verbal Cueing During Sleep. Cerebral Cortex, 25(11), 4169-4179. https://doi.org/10.1093/cercor/bhu139
  3. Züst MA, Ruch S, Wiest R, Henke K (2019). Implicit Vocabulary Learning during Sleep Is Bound to Slow-Wave Peaks. Current Biology, 29(4), 541-553.e7. https://doi.org/10.1016/j.cub.2018.12.038
  4. Andrillon T, Pressnitzer D, Léger D, Kouider S (2017). Formation and suppression of acoustic memories during human sleep. Nature Communications, 8, 179. https://doi.org/10.1038/s41467-017-00071-z
  5. Arzi A, Shedlesky L, Ben-Shaul M, et al. (2012). Humans can learn new information during sleep. Nature Neuroscience, 15(10), 1460-1465. https://doi.org/10.1038/nn.3193