暗いニュースを見続けて不安になったら? ニュースと気分の研究でわかった立て直し方

災害や事件のニュースを追いかけているうちに、気づけば胸がざわざわして、自分の生活まで心配になってくる。そんな夜は珍しくありません。研究では、暗いニュースは数分見ただけでも気分を下げ、関係のない自分の心配ごとまで大きく見せることがわかっています。そして、別のことで気をそらすだけでは戻りにくく、体をゆるめる15分のリラックス法で元に戻ったという実験があります。
3行でわかる
- 暗いニュースを14分見た人は、不安と悲しさが強まり、ニュースと関係のない自分の心配ごとまで大げさに考えるようになりました(Johnston と Davey 1997)。
- ニュースを15分見たあと、15分のリラックス法をした人は不安が元の水準に戻りましたが、講義を聞いて気をそらした人は戻りませんでした(Szabo と Hopkinson 2007)。
- SNSで暗いニュースを2〜4分見ただけでも前向きな気分が下がった一方、人の親切を伝える投稿では同じ下がり方は見られませんでした。見る量と中身を選ぶことが次の予防になります。
01 悩みの正体ニュースを見たあと、なぜ自分のことまで不安になる?
暗いニュースで下がった気分が、自分の心配ごとを悪い方向に考えさせるからです。ニュースの中身と関係のない悩みでも、気分が沈んでいると最悪の結末まで想像しやすくなります。
ニュースは、事故や災害、争いなど、悪い出来事を多く伝えます。それを読み続けると、気分が少しずつ沈んでいきます。
やっかいなのは、そのあとです。沈んだ気分のまま自分の仕事やお金、家族のことを考えると、いつもより悪い結末が浮かびやすくなります。
| 段階 | 起きていること | 研究 |
|---|---|---|
| 見ている最中 | 不安や悲しさが強まり、前向きな気分が下がる | [1][4] |
| 見終わった直後 | ニュースと関係のない自分の心配まで大げさに考える | [1] |
| 15分後 | 気をそらすだけでは、不安が元に戻らなかった | [2] |
| 翌日 | ニュースを多く見た日の翌日は、心配が強い傾向 | [6] |
02 科学的にわかっていることニュースで下がった気分は、どうすれば戻る?
気をそらすだけでは戻りにくく、体をゆるめるリラックス法をした人は15分で元の水準に戻ったという実験があります。数分見るだけでも気分は下がるので、見る量を減らすことも大切です。
Johnston と Davey(1997)[1]
14分のテレビニュースを、明るい内容・中立の内容・暗い内容に編集して3つのグループに見せました。暗いニュースを見たグループだけ、不安と悲しさが強まり、自分の心配ごとを最悪の方向に考える傾向も強まりました。
対象: 3つのグループに分けた実験参加者 / 限界: 1回の実験室での結果で、気分の変化がどのくらい続くかは調べていない。
Szabo と Hopkinson(2007)[2]
15分のニュースを見たあと、片方のグループは15分の漸進的筋弛緩法(力を入れて抜くリラックス法)をし、もう片方は15分の講義を聞きました。どちらもニュースで不安が高まり、前向きな気分が下がりました。15分後に元に戻ったのは、リラックス法のグループだけでした。
対象: 大学生179人 / 限界: 1つの研究で、比べた相手は講義を聞くことだけ。散歩や会話など、ほかの気分転換とは比べていない。
Buchanan ら(2021)[3]
新型コロナのニュースを、Twitterで2分以上、またはYouTubeの動画で約4分見た人は、何も見なかった人より前向きな気分が下がりました。一方、コロナ禍での人の親切を伝える投稿を見た人では、同じ下がり方は見られませんでした。
対象: 2つの実験で299人と603人 / 限界: 親切の投稿が前向きな気分を「上げる」という最初の予想は支持されなかった(嫌な気分を下げたのは2つめの実験だけ)。
de Hoog と Verboon(2020)[4]
63人に10日間、1日5回、見たニュースと気分を答えてもらいました。ニュースを暗いと感じたときほど嫌な気分が強く、とくに自分に関係があると感じたニュースで、その影響が大きくなりました。
対象: オランダの63人(男性24人、女性39人)/ 限界: 学歴の高い人が多い、集めやすい人を対象にした調査。
Holman ら(2014)[5]/ Kellerman ら(2022)[6]
ボストンマラソン爆弾事件のあと、事件の報道を1日6時間以上見ていた人は、現場に居合わせた人よりも強いストレス反応を示しました。大学生546人を8週間追った調査でも、コロナのニュースを多く見た日は、その日と翌日の心配が強くなっていました。
対象: 米国の4,675人(Holman ら)、大学生546人・8万回を超える回答(Kellerman ら)/ 限界: どちらも観察研究で、ニュースが心配を生んだのか、心配な人がニュースを多く見たのかは分けきれない。
03 今日からできる小さな一歩ニュースで不安になった夜、何をすればいい?
画面を閉じたら、別の動画で気をそらすより、体をゆるめるリラックス法を15分してみます。そのうえで、今の心配が自分に関係のあることかを紙の上で分けます。
画面を閉じて、「ニュースで気分が下がっている」と言葉にする
今の不安は、自分の生活が急に悪くなったからではなく、見たニュースの影響かもしれません。そう気づくだけで、心配を大きくしすぎずにすみます。
所要 1分
力を入れて抜くリラックス法を15分
手、腕、肩、顔と順に5秒ほど力を入れ、ふっと抜きます。研究では、講義を聞いて気をそらすより、こちらのほうが不安が元に戻りました。やり方は漸進的筋弛緩法の記事にあります。
所要 15分
「自分にできること」があるかだけ書き出す
紙に「このニュースで、自分が今日やることはある?」と書きます。備えや連絡など、やることがあれば1行で書き、無ければ「今日はなし」と書いて閉じます。
所要 3分
寝る前は、ニュースのかわりに別の話題を選ぶ
どうしても何か見たいときは、人の親切や身近な話題を選びます。暗いニュースほど気分を下げなかったという実験があります。
所要 自由
04 続けるためのコツニュースで不安になりすぎないためには?
ニュースを見る時間と回数を先に決めることです。長時間・何度も見る人ほど心配やストレスが強い傾向があり、必要な情報は短い時間でも十分に得られます。
- 見る時間を1日の中で決める: たとえば朝と夕方に10分ずつなど。追いかけ続けるのをやめると、翌日まで心配を持ち越しにくくなります。
- 同じニュースを何度も見直さない: 新しい情報が少ないのに、同じ映像をくり返し見る時間が長くなりがちです。
- 考えが止まらない夜は: 同じことをぐるぐる考えてしまうときは、反芻から抜け出す研究が参考になります。SNSで人と比べて落ち込んだときは、うらやましさからの立て直し方をまとめています。
- リラックス法でかえって落ち着かないなら: 合わない人もいます。リラックス法が合わないときの記事で別のやり方を紹介しています。
05よくある質問
暗いニュースを見ると不安になるのは、心が弱いから?
そうではありません。暗いニュースを数分見るだけで、多くの人の前向きな気分が下がることが実験で確かめられています。外向的か、神経質かといった性格の違いでは、影響の大きさは変わらなかったという調査もあります。
ニュースで不安になったら、楽しい動画で気をそらせばいい?
気をそらすだけでは戻りにくい可能性があります。ニュースのあとに講義を聞いたグループは15分たっても不安が元に戻らず、力を入れて抜くリラックス法をしたグループだけが戻ったという実験があります。
ニュースはまったく見ないほうがいい?
見ないことを勧める研究結果ではありません。必要な情報は得つつ、見る時間を決めて長時間追いかけないことがポイントです。報道を1日6時間以上見ていた人でストレス反応が強かったという調査があります。
不安が何日も続くときは?
眠れない、食べられない、仕事や家事が手につかないといった状態が続くときは、一人で抱えずに医師や相談窓口に相談してください。
出典
- Johnston, W. M., & Davey, G. C. L. (1997). The psychological impact of negative TV news bulletins: The catastrophizing of personal worries. British Journal of Psychology, 88(1), 85-91. https://doi.org/10.1111/j.2044-8295.1997.tb02622.x
- Szabo, A., & Hopkinson, K. L. (2007). Negative psychological effects of watching the news in the television: Relaxation or another intervention may be needed to buffer them! International Journal of Behavioral Medicine, 14(2), 57-62. https://doi.org/10.1007/BF03004169
- Buchanan, K., Aknin, L. B., Lotun, S., & Sandstrom, G. M. (2021). Brief exposure to social media during the COVID-19 pandemic: Doom-scrolling has negative emotional consequences, but kindness-scrolling does not. PLOS ONE, 16(10), e0257728. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0257728
- de Hoog, N., & Verboon, P. (2020). Is the news making us unhappy? The influence of daily news exposure on emotional states. British Journal of Psychology, 111(2), 157-173. https://doi.org/10.1111/bjop.12389
- Holman, E. A., Garfin, D. R., & Silver, R. C. (2014). Media's role in broadcasting acute stress following the Boston Marathon bombings. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(1), 93-98. https://doi.org/10.1073/pnas.1316265110
- Kellerman, J. K., Hamilton, J. L., Selby, E. A., & Kleiman, E. M. (2022). The mental health impact of daily news exposure during the COVID-19 pandemic: Ecological momentary assessment study. JMIR Mental Health, 9(5), e36966. https://doi.org/10.2196/36966


