サイトやアプリをブロックするツールは先延ばしに効く? 職場実験とスマホのブロックアプリの研究で確かめた

作業の前にSNSやニュースを開いてしまい、気づくと時間が過ぎている。そんな自分を変えようと、サイトやアプリをブロックするツールを試そうか迷ったことはありませんか。職場実験とスマホのブロックアプリの研究では、ブロックした期間は集中や生産性の自己評価が上がり、2週間のブロックでは9割の人が何らかの指標で改善しました。ただし、ブロックを最後まで守れた人は4人に1人ほどでした。
3行でわかる
- 32人の職場実験では、ブロックソフトを使った5日間のほうが、使わなかった5日間より自分で感じる生産性と集中の評価が高かった。
- スマホのネット接続を2週間ブロックした実験では、91%が注意力・メンタルヘルス・幸福感のどれか1つで改善したが、決めた日数を守れた人は25.5%だった。
- アプリ単位の時間制限ツールは、対象アプリの使用時間を3週間で1日平均29分減らしたが、「使いすぎをやめたい気持ち」自体や自己効力感は変わらなかった。
01 悩みの正体ブロックツールに頼るのは、意志が弱いから?
そうとは言えません。研究では、誘惑に弱くなる「その瞬間」の前に、冷静なときの自分が選択肢そのものを無くしておく方法(コミットメント・デバイス)として位置づけられています。
SNSやニュースを見たい気持ちは、作業の前や合間、気が緩んだ瞬間に強くなります。その瞬間に「見ない」と決意し直すのは難しく、何度も同じ失敗を繰り返しがちです。
ブロックツールは、気持ちが落ち着いている時間に、あとの自分が選べないようにしておく仕組みです。意志の強さで誘惑に抵抗するのではなく、誘惑そのものを環境から取り除く考え方です。
この記事では、実際に職場やスマホでブロックツールを使った研究を基に、効果と続けにくさの両方を見ていきます。
02 科学的にわかっていることブロックツールは本当に先延ばしや使いすぎを減らす?
使っている期間は、集中・生産性・注意力の指標が上向く傾向が複数の研究で見られます。ただし効果の大きさや続けやすさは人や使い方で差があります。
Mark, Iqbal & Czerwinski(2017)[1]
職場の32人を対象に、5日間はブロックソフトを使わず働き、続く5日間はネットの気を散らすサイトをブロックして働いてもらいました。ブロックした5日間のほうが、自分で感じる生産性が高く、集中が長く続いたと評価されました。SNSの誘惑に特に弱かった人ほど効果を感じていました。一方で、自制心が弱いタイプの人は、休憩を取らずに働き続けてしまい、結果としてストレスが増える様子も見られました。
対象: 職場の情報労働者32人 / 限界: 自己評価による生産性・集中の調査で、仕事の成果そのものは測っていません。
Casteloら(2025)[2]
スマホアプリを使って、参加者のモバイルインターネット接続を2週間完全にブロックする実験です(電話・メールは使える状態)。平均の1日あたりスマホ利用時間は、ブロック群で314分から161分まで減りました。この介入によって、91%の人が「注意力を保つ力」「メンタルヘルス」「幸福感」のうち少なくとも1つで改善しました。ただし、ブロックに同意した人のうち、研究で決めた基準(14日のうち10日以上ブロックを続ける)を満たせたのは25.5%にとどまりました。
対象: 米国・カナダのiPhone利用者で、ブロック群と順番を入れ替えた待機群に無作為に割り当て(2回のアンケートに答えたのは327人) / 限界: 謝礼目的の参加者が含まれる調査会社のパネルで、日常的に自発的にブロックを選ぶ人とは状況が異なります。
314分 → 161分
スマホのネットをブロックした2週間の、1日あたり平均スマホ利用時間の変化[2]
Mertensら(2026、Wellspentアプリ)[3]
自分で決めた使用時間を超えると画面いっぱいの通知が出て、やめるか続けるかを選べるアプリを使った3週間の実験です(70人)。使う側が自由に設定できるこのアプリでは、対象にしたアプリの1日の使用時間が平均29分減りました。一方で、「使いすぎをやめたい気持ち」自体の強さや、自分で行動を抑えられるという自信(自己効力感)には、はっきりした変化は見られませんでした。
対象: iPhone利用者70人(介入群35人・対照群35人) / 限界: 3週間という短い期間の結果で、長く続けたときの効果は確認していません。
Brockmeierら(2025)[4]
上と同じ70人のデータを使い、幸福感・気分・ストレスへの効果を詳しく調べた研究です。全体としては、アプリを使った群と使わなかった群で幸福感の変化に統計的な差はありませんでした。ただし、もともとスマホの使いすぎを強く感じていた人ほど、ストレスが減る効果が大きい傾向が見られました。
対象: 上記と同じ70人 / 限界: 人数が少なく、幸福感への全体効果は「差がない」という結果にとどまります。
4つの研究を、よく言われることと比べてまとめます。
| よく言われること | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| ブロックすれば集中力や生産性が上がる | 32人の職場実験で、ブロックした期間は自己評価の生産性・集中が高かった[1] | 効く可能性 |
| スマホを完全にブロックすれば気分も良くなる | 2週間のブロックで91%が何らかの指標で改善。ただし最後まで守れたのは25.5%[2] | 効くが続けにくい |
| アプリ単位の時間制限で、やめたい気持ちも消える | 対象アプリの使用時間は減ったが、やめたい気持ちや自己効力感は変化なし[3] | 限定的 |
| 誰にでも同じように効く | 自制心が弱い人は休憩なしで働き続けストレスが増える例も[1]。使いすぎの度合いが高い人ほどストレスが減りやすい[4] | 人による |
03 今日からできる小さな一歩ブロックツールを、続けやすく使うには?
ブロックする対象と時間帯を、気持ちが落ち着いているときに先に決めておきます。全部を一度にブロックせず、休憩も計画に入れておくと長続きしやすくなります。
最も時間を溶かしている1つだけを選ぶ
スクリーンタイムの記録などで、使用時間が一番長いアプリやサイトを1つ確認し、まずそれだけをブロック対象にします。
所要 3分
ブロックする時間帯を、作業前に設定しておく
作業の直前や誘惑に弱くなる時間帯(寝る前・隙間時間など)を決め、落ち着いているうちにブロックのスケジュールをセットします。
所要 5分
休憩の時間も先に決めておく
ブロック中に休憩を取らず働き続けてしまう人もいるため、「50分作業したら10分休む」のように休憩のタイミングも一緒に決めます。
所要 1分
04 続けるためのコツブロックを途中でやめてしまったら、どうする?
途中でブロックを解除してしまうのは珍しいことではありません。できなかった日を責めず、翌日からまた同じ時間帯に設定し直すだけで十分です。
- 2週間ブロックを続けられた人は4人に1人ほどだった研究もあり[2]、続けられない日があっても普通の結果だと考えておく。
- 対象を1つのアプリやサイトに絞るほうが、全部を一度にブロックするより続けやすい。通知をオフにする工夫の研究も、負担の小さい対策として参考になる。
- ブロックだけに頼らず、ブロックを外した後の過ごし方も合わせて考える。SNSをやめる期間を作った研究では、やめている間の過ごし方が気分の変化に関わっていた。
- ブロック中に休憩を取らず働き続けて疲れを感じたら、休憩の時間も区切って設定し直す。
05よくある質問
ブロックツールを使うと生産性は本当に上がりますか?
32人の職場実験では、ブロックソフトを使った5日間のほうが、使わなかった5日間より自分で感じる生産性と集中の評価が高くなりました。ただし自己評価による結果で、仕事の成果そのものを測った研究ではありません。
ブロックを途中で解除してしまうのは普通ですか?
珍しくありません。スマホを2週間ブロックする実験では、ブロックに同意した人のうち、決められた日数を守れたのは25.5%でした。多くの人が途中で解除しており、続けにくさ自体が研究で確認された現象です。
スマホを完全にブロックすれば気分も良くなりますか?
2週間ブロックした実験では、91%の人が注意力・メンタルヘルス・幸福感のうち少なくとも1つで改善しました。一方、アプリの使用時間だけを制限する研究では、使用時間は減っても全体の幸福感は変わらず、もともと使いすぎの度合いが高い人ほどストレスが減る傾向でした。
誰でも同じようにブロックツールの効果がありますか?
人によって差があります。SNSの誘惑に特に弱かった人ほど効果を感じやすい一方、自制心が弱いタイプの人は休憩を取らずに働き続けてしまい、ストレスが増えることもあると報告されています。
出典
- Mark, G., Iqbal, S. T., & Czerwinski, M. (2017). How Blocking Distractions Affects Workplace Focus and Productivity. Proceedings of UbiComp/ISWC '17, 928-934. https://doi.org/10.1145/3123024.3124558
- Castelo, N., Kushlev, K., Ward, A. F., Esterman, M., & Reiner, P. B. (2025). Blocking mobile internet on smartphones improves sustained attention, mental health, and subjective well-being. PNAS Nexus, 4(2), pgaf017. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf017
- Mertens, L., Brockmeier, L. C., Roitzheim, C., Radtke, T., Dingler, T., & Keller, J. (2026). Promoting Self-Regulated Social Media Use on Smartphones With a Mobile Intervention App (Wellspent): Randomized Controlled Trial. JMIR mHealth and uHealth. https://doi.org/10.2196/56824
- Brockmeier, L. C., Mertens, L., Roitzheim, C., Radtke, T., Dingler, T., & Keller, J. (2025). Effects of an intervention targeting social media app use on well-being outcomes: A randomized controlled trial. Applied Psychology: Health and Well-Being. https://doi.org/10.1111/aphw.12646


