記憶・学習

速読で、内容を理解したまま速く読める? 速読アプリと目の動きの研究でわかったこと

約7分で読めます

本屋の店先
Photo: Billy McCrorie / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

読みたい本や資料が積み上がって、「速読ができたら」と思ったことはありませんか。読む仕組みの研究をまとめたレビューでは、理解を保ったまま読む速さを2倍、3倍にするのは難しいと結論づけています。速く読むと、そのぶん理解は下がります。1語ずつ画面に出す速読アプリも、ふつうに読むより理解が下がりました。速読は「ざっと全体をつかむ」ための読み方と考えると、うまく使えます。

3行でわかる

  1. 読む研究をまとめたレビューは、速さと理解はトレードオフだとしている。1分250語ほどを500〜750語に上げて、同じように理解するのは難しい。
  2. 1語ずつ表示する速読アプリでは、ふつうに文章を読むより理解の点が低かった。読み返しができないことが理解を下げていた。
  3. ざっと読む(拾い読み)と時間は短くなるが理解は下がり、じっくり読むと理解は上がった。目的に合わせて読み方を変えるのが現実的。

01 悩みの正体速読ができれば、読む量の悩みは消える?

速読の宣伝は「目の動かし方を変えれば、理解したまま何倍も速く読める」と説明します。しかし研究では、読む速さを決めているのは目よりも、言葉を理解する頭の処理のほうだとされています。

速読は新しい話ではありません。1959年に始まった速読講座が有名になり、最近はスマホの速読アプリも増えました[1]。

文章を読むとき、目はなめらかに動いているわけではありません。短く止まっては次へ跳び、ときどき前の言葉に戻っています。速読の多くは、この止まる回数や戻る動きを減らせば速くなる、と考えます。

ただ、目が止まっている間に、頭は言葉の意味を取り出し、前の文とつなげています。そこを省けば、速くはなっても意味がつかみにくくなります。研究で確かめたいのは「速くなるか」ではなく、「理解を保ったまま速くなるか」です。

02 科学的にわかっていること速読で、理解したまま速く読める?

理解を保ったまま速さを倍以上にするのは難しい、というのが研究のまとめです。速く読むほど理解は下がり、1語ずつ表示する速読アプリでも理解の点は下がりました。

Raynerら(2016)[1]

読む仕組みの研究を幅広くまとめ、速読講座や速読アプリに効果があるかを検討しました。結論は「速さと正確さはトレードオフ」です。1分250語ほどの人が、500〜750語に上げても、ふつうの速さと同じように理解できるとは考えにくいとしています。理解を保って速く読む方法は、読む経験を積み、語彙を増やすことだと述べています。

種類: レビュー(読む研究の総まとめ。心理学の学会が、研究を社会に向けてまとめる学術誌) / 限界: 英語を読む研究が中心で、日本語の文字の読み方とは条件が違います。

250語 → 500〜750語

1分あたりの語数をこの範囲に上げて、同じように理解するのは難しいとされた(英語の場合)[1]

Schotterら(2014)[2]

目が通り過ぎた言葉を、すぐに見えなくする仕掛けで文を読んでもらいました。こうすると、前の言葉に戻って読み返すことができません。1語ずつ表示する速読アプリに近い状態です。読み返せない条件では、文の理解が下がりました。わかりにくい文だけでなく、ふつうの文でも同じでした。

種類: 実験(視線を測る装置を使用) / 限界: 実験室で画面の文を読む実験で、本を長く読む場面とは違います。

AcklinとPapesh(2017)[3]

1語ずつ順に表示する速読アプリの方式で、文章を読んでもらいました。表示の速さは1分700語と1,000語です。ふつうに文章を表示して読んだときのほうが、どちらの速さよりも理解の点が高くなりました。また、一度に頭にとどめておける量(ワーキングメモリ)の大きさは、理解の点と関係していませんでした。

種類: 実験 / 限界: 文章の難しさは小学6年生と高校3年生の2段階で、英語の文章です。

StrukeljとNiehorster(2018)[4]

同じ1ページの文章を「ふつうに読む」「じっくり読む」「ざっと読む(拾い読み)」などの指示で読んでもらい、目の動きと理解を比べました。拾い読みでは、目が大きく跳んで飛ばす言葉が増え、読む時間は短くなりましたが、理解の点は下がりました。じっくり読むと、時間は長く読み返しも増え、理解の点は上がりました。

対象: スウェーデンの大学で募集した18〜29歳の人。分析は60人(平均22.9歳) / 限界: 1つの文章につき5問の選択式で理解を測った、画面上の実験です。

Zamfiraら(2024)[5]

文字を左から順に消していき、少し速いペースで読ませる練習を試しました。この練習の間は、ふつうより40%速く読み、問題の正答率は変わりませんでした。練習の後に自分のペースで読んだときも、速さが上がっていました。ただし使ったのは1文ずつの短い文で、上がり幅は2倍、3倍ではありません。

対象: イタリアの大学生90人(30人ずつの3つの実験) / 限界: 人数が少なく、読む力に問題のない人だけが対象です。長い文章を理解する力は測っていません。

ここまでを判定表にまとめます。

よく言われること研究でわかったこと判定
理解したまま2〜3倍の速さで読める速さと理解はトレードオフ。倍以上で同じ理解は難しい[1]当てにならない
1語ずつ表示するアプリなら速く読めるふつうに読むより理解が下がった。読み返せないことが響く[2][3]当てにならない
ざっと読めば、時間を短くできる時間は短くなるが理解は下がる。全体をつかむには使える[1][4]目的しだい
少し速いペースで読む練習で、速くなる短い文では40%速くなり正答率は保たれた。長い文章は未確認[5]小さい可能性

03 今日からできる小さな一歩速読の代わりに、たくさん読むには?

読む目的を先に決め、全体をつかむだけならざっと読み、覚えたい所だけじっくり読みます。覚えたい内容は、読んだ後に本を閉じて思い出すと残りやすくなります。

1

読む前に、目的を1行で書く

「全体の流れをつかむ」「この章の用語を覚える」のように決めます。目的が全体をつかむことなら、ざっと読んでかまいません。

所要 30秒

2

ざっと読んで、大事な所に印をつける

見出しと各段落の最初の文を中心に読み、覚えたい箇所に印をつけます。拾い読みでは理解が下がるので、印をつけた所はあとで読み直す前提にします。

所要 1章5〜10分

3

印の所をじっくり読み、本を閉じて思い出す

読み返しは理解を支える自然な動きなので、わからない所は戻って読みます。読み終えたら何も見ずに要点を書き出します。思い出す練習の効果は「テスト効果」の研究で紹介しています。

所要 10分

04 続けるためのコツ読むのが遅いのは、どうすれば変わる?

レビューは、理解を保ったまま速く読む近道は、たくさん読んで語彙を増やすことだとしています。知っている言葉が増えると、1語ずつの処理が速くなるからです。

05よくある質問

速読で、理解したまま本を2倍速く読めますか?

研究のまとめでは難しいとされています。読む研究を総まとめしたレビューは、速さと理解はトレードオフで、1分250語ほどを500〜750語に上げて同じように理解するのは考えにくいと結論づけています。

1語ずつ表示する速読アプリは効果がありますか?

理解を保ったまま速く読む効果は確かめられていません。1分700語と1,000語で1語ずつ表示した実験では、ふつうに文章を読んだときより理解の点が低くなりました。読み返しができないことが、理解を下げる理由の1つと考えられています。

ざっと読む(拾い読み)は意味がないのですか?

目的によっては役に立ちます。拾い読みは時間が短くなる代わりに理解が下がりますが、全体の流れや必要な箇所を探すには向いています。覚えたい所は、拾い読みの後にじっくり読み直すと補えます。

読むのが遅いのは、頭が悪いからですか?

そうではありません。読む速さは、知っている言葉の量や、その分野の文章に慣れているかで大きく変わります。レビューでも、読む経験を積み語彙を増やすことが、理解を保って速く読む方法だとされています。

出典

  1. Rayner, K., Schotter, E. R., Masson, M. E. J., Potter, M. C., & Treiman, R. (2016). So Much to Read, So Little Time: How Do We Read, and Can Speed Reading Help? Psychological Science in the Public Interest, 17(1), 4-34. https://doi.org/10.1177/1529100615623267
  2. Schotter, E. R., Tran, R., & Rayner, K. (2014). Don't believe what you read (only once): Comprehension is supported by regressions during reading. Psychological Science, 25(6), 1218-1226. https://doi.org/10.1177/0956797614531148
  3. Acklin, D., & Papesh, M. H. (2017). Modern Speed-Reading Apps Do Not Foster Reading Comprehension. The American Journal of Psychology, 130(2), 183-199. https://doi.org/10.5406/amerjpsyc.130.2.0183
  4. Strukelj, A., & Niehorster, D. C. (2018). One page of text: Eye movements during regular and thorough reading, skimming, and spell checking. Journal of Eye Movement Research, 11(1). https://doi.org/10.16910/jemr.11.1.1
  5. Zamfira, D. A., Di Dona, G., Battista, M., De Benedetto, F., & Ronconi, L. (2024). Enhancing reading speed: the reading acceleration effect in Italian adult readers. Frontiers in Psychology, 15, 1394579. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1394579