薄味に慣れるには何週間かかる? 減塩で舌が慣れるまでの期間とやり方を研究で調べた

健康診断で塩分を控えるように言われた。でも薄味の料理は物足りなくて、つい塩やしょうゆを足してしまう。そんな人は少なくありません。研究では、塩を控えた食事を続けると舌の好みが変わることがわかっています。目安は数週間〜2か月ほどで、少しずつ減らすこと、あとから塩を足さないことがコツです。
3行でわかる
- 塩を控えた食事を5か月続けた研究では、好みの塩加減がはっきり下がり始めたのは約2か月後でした。続けなかった組では変化がありませんでした。
- 83人が16週間トマトジュースで試した研究では、一気に減らすと途中で「おいしい」が大きく落ち、12%ずつ減らすと保たれました。最後の好みはどちらも下がりました。
- 塩分を半分にしても、食卓で塩を自由にかけられた研究では好みが変わりませんでした。料理に入れる塩を減らし、あとから足さないのがポイントです。
01 悩みの正体減塩した料理が物足りないのはなぜ?
おいしいと感じる塩加減は、ふだん食べている塩の量で決まっているからです。塩の多い食事に慣れていると、その濃さが「ちょうどいい」基準になり、薄い味が物足りなく感じます。
人は生まれたとき、塩味に特に好き嫌いがありません。生後4か月ごろから塩水を好むようになり、その後の食生活で「好きな塩加減」が形づくられていきます [2]。
大人の好みの塩加減は、主にふだんの食事の塩の量で決まると整理されています [2]。塩の多い食事を続けている人ほど、濃い味を好む傾向があります。
つまり、薄味が物足りないのは意志が弱いからではありません。舌と脳の「ものさし」が、今までの食事に合わせて決まっているだけです。逆に言えば、食事が変わればものさしも少しずつ動きます。
02 科学的にわかっていること薄味に慣れるには、どのくらいかかる?
塩を控えた食事を続けた研究では、好みの塩加減が下がり始めたのは約2〜3か月後でした。一つの食べものだけなら、数回〜数週間くり返し食べることで好きになったという報告もあります。
| やり方 | 好みの変化 | かかった期間 |
|---|---|---|
| 食事全体の塩を控える(5か月) | 好みの塩加減が下がった [1][2] | 約2か月後から |
| 食事全体の塩を控える(12か月、2研究) | 好みの塩加減が下がった [2] | 約3か月後から/24週で54%低下 |
| 減塩のトマトジュースを飲み続ける | 減塩ジュースが好きになった [3] | 16週間 |
| 塩分半分+食卓の塩は自由 | 変わらなかった [2] | ― |
Bertino, Beauchamp & Engelman(1982、米国)[1]
若い大人に、自分で塩を控えた食事を5か月続けてもらいました。塩水・スープ・クラッカーで味の感じ方を調べると、クラッカーの塩味をより強く感じるようになりました。いちばんおいしいと感じるスープとクラッカーの塩加減も下がりました。ふだんどおりに食べた組では変わりませんでした。
対象: 若い大人のグループと、比べるための組 / 限界: 古い研究で、減塩の食事は本人が自分で続ける方式でした。好みの変化がはっきり出たのは約2か月後からです [2]。
Bobowski(2015、レビュー)[2]
塩の好みが変わるかを調べた研究をまとめたレビューです。12か月塩を控えた研究では、好みのスープの塩分が24週で0.76%から0.33%に下がりました(54%の違い)。別の12か月の研究でも、約3か月後からクラッカーの好みの塩加減が下がりました。著者は、研究によって差はあるものの「少なくとも数週間は必要」とまとめています。
一方で、塩分を半分にしても食卓の塩を自由に使えた研究では、好みが変わりませんでした。足した塩は減らした分の20%ほどでしたが、表面にかけた塩で塩味を強く感じ続けたためと考えられています。
Bobowski, Rendahl & Vickers(2015、米国)[3]
83人が16週間、トマトジュースを飲み続けました。一方の組は4週目に塩分を一気に減らし、もう一方は12%ずつ少しずつ減らして14週目に同じ低さにしました。最後のおいしさは両方の組で同じでした。ただ、一気に減らした組は途中でおいしさが大きく落ち、少しずつの組は保たれました。
限界: ジュース1品で調べた研究です。塩味を強く好む人は、どちらのやり方でも途中で減塩ジュースを嫌がる時期がありました。
Riisら(2020、デンマーク)[4]
89家族(215人)を3組に分けて4か月調べました。塩を少しずつ減らしたパン、同じパンに食事の相談を加えた組、ふつうのパンの組です。パンと相談の両方を受けた組では、塩味に気づける最低の濃さが18%下がり、塩をかなり減らしたパン(100gあたり0.4g)を、ふつうのパンの組より好むようになりました。
限界: 3組の間で、塩味に気づける濃さそのものの差は出ませんでした。変化がはっきりしたのは、パンと食事の相談を組み合わせた組だけです。
03 今日からできる小さな一歩薄味に慣れるには、どう減らせばいい?
料理に入れる塩を1〜2割ずつ減らし、食べるときに塩やしょうゆを足さないようにします。慣れるまで2〜3か月かかる前提で、物足りない時期をやり過ごす工夫を用意しておきます。
いつもの量から1割ちょっと減らす
研究では12%ずつ減らすと、おいしさが保たれました。みそ汁のみそ、煮物のしょうゆなど、よく作る料理から始めます。
所要 0分(計量スプーンで量るだけ)
1〜2週間なれたら、もう一段減らす
変わったことに気づかない程度の幅で、段階を踏みます。一気に半分にすると途中で「おいしくない」が強くなりやすいです。
所要 週に1回、見直し5分
食卓の塩としょうゆを見えない場所に置く
表面にかけた塩は強く感じるため、好みが変わりにくくなります。足したくなったら、こしょう・酢・香味野菜で味を足します。
所要 1分
04 続けるためのコツ物足りない時期をどう乗り切る?
2か月ほどは物足りなさが残るのがふつうです。同じ減塩の料理をくり返し食べる、家族と一緒に取り組むなど、慣れる時間をかせぐ工夫が役に立ちます。
- 同じ減塩料理をくり返す: 減塩スープを毎日のように8回食べた研究では、3回目でおいしさが上がり始めました [2]。毎回メニューを変えるより、定番を作ります。
- カレンダーに「2か月後」を書く: 変化が出たのは約2か月後からでした。1〜2週間で「やっぱり無理」と判断しないための目印にします。
- 家族や同居人と一緒にやる: デンマークの研究では、減塩のパンと食事の相談を家族単位で組み合わせた組で変化がはっきり出ました。
- 苦手な味に慣れる仕組みは同じ: 苦手な食べものを一口ずつ食べて慣れる研究も、くり返しが鍵でした。風邪で味がしない理由では、味の感じ方の仕組みを調べています。
05よくある質問
薄味に慣れるまで何日かかる?
数日では難しく、数週間〜数か月が目安です。塩を控えた食事を5か月続けた研究では、好みの塩加減がはっきり下がり始めたのは約2か月後でした。12か月続けた別の研究では、約3か月後から変化が出ています。
減塩は一気にするのと少しずつ、どっちがいい?
少しずつのほうが続けやすいと考えられます。83人がトマトジュースで比べた16週間の研究では、最後の好みはどちらも同じでしたが、一気に減らした組は途中で「おいしい」と感じる度合いが大きく下がりました。1回の減らし幅は12%ほどにしています。
薄味の料理に、食べるときに塩やしょうゆを足してもいい?
慣れたいなら、なるべく足さないほうがよさそうです。塩分を半分に減らし、食卓の塩は自由に使えた研究では、好みの塩加減が変わりませんでした。研究者は、表面にかけた塩で塩味を強く感じ続けたことが理由と考えています。
子どもも薄味に慣れる?
研究は少なく、結果ははっきりしていません。6〜14歳の39人が減塩シリアルを8週間食べた試験では、好みの塩加減は変わりませんでした。ただし、減塩シリアルは最後まで問題なく食べられていました。
血圧や腎臓の治療で塩分の量を指示されている人は、主治医や管理栄養士の指示を優先してください。
出典
- Bertino M, Beauchamp GK, Engelman K (1982). Long-term reduction in dietary sodium alters the taste of salt. American Journal of Clinical Nutrition, 36(6), 1134-1144. https://doi.org/10.1093/ajcn/36.6.1134
- Bobowski N (2015). Shifting human salty taste preference: Potential opportunities and challenges in reducing dietary salt intake of Americans. Chemosensory Perception, 8(3), 112-116. https://doi.org/10.1007/s12078-015-9179-6
- Bobowski N, Rendahl A, Vickers Z (2015). A longitudinal comparison of two salt reduction strategies: Acceptability of a low sodium food depends on the consumer. Food Quality and Preference, 40, 270-278. https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2014.07.019
- Riis NL, Bjoernsbo KS, Toft U, et al. (2020). Impact of salt reduction interventions on salt taste sensitivity and liking, a cluster randomized controlled trial. Food Quality and Preference, 87, 104059. https://doi.org/10.1016/j.foodqual.2020.104059
- Bobowski N, Mennella JA (2019). Repeated Exposure to Low-Sodium Cereal Affects Acceptance but Does not Shift Taste Preferences or Detection Thresholds of Children in a Randomized Clinical Trial. Journal of Nutrition, 149(5), 870-876. https://doi.org/10.1093/jn/nxz014


