習慣

良い習慣をがんばった日ほど「今日くらいいいか」と崩してしまうのはなぜ? 自分に許可を出す心理の研究で調べた

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ショーケースに並んだ色とりどりのフルーツタルト
Photo: PattayaPatrol / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

運動をした日や、仕事をがんばった日にかぎって、甘いものや夜ふかしに手が伸びる。それは意志が弱いからではなく、「がんばったから、いいよね」と自分に許可を出す理由がそろうからです。研究では、この許可の理由が、決意の強い人ほど決意を崩しやすいことが示されています。

3行でわかる

  1. 「がんばったから」「今日は特別」など、ゆるむ理由を自分で用意すると、良い決意が行動になりにくい(セルフ・ライセンシング)。
  2. 実験では、理由を思い浮かべた人ほどお菓子を多く食べ、その影響は「減らすぞ」と強く決めていた人ほど大きかった。
  3. ただし、事前に決めた範囲のゆるみは、間食が少ないことと結びついていた。悪いのは「その場の言い訳」のほう。

01 悩みの正体がんばった日ほど崩れるのはなぜ?

がんばった事実が「ゆるんでいい理由」に変わるからです。理由があると、誘惑に負けることへの迷いが小さくなります。

心理学では、ゆるむ理由を自分で用意してから誘惑に乗ることをセルフ・ライセンシングと呼びます。ライセンスは「許可証」のことです。

ふだんなら「食べたいけど、やめておこう」と心の中で引っぱり合いが起きます。ところが「今日はがんばった」という理由があると、この引っぱり合いが弱まります。迷わずに手が伸びるので、自分では崩したことに気づきにくいのです。

イギリスの研究では、人がゆるむときの理由が、次の6種類にまとめられました[1]。

「がんばった日に崩れる」のは、このうち1つ目の理由がいちばん手に入りやすい日だからです。

02 科学的にわかっていること自分への言い訳で行動は変わる?

変わります。複数の実験で、ゆるむ理由を与えられた人は食べる量が増えました。一方で「いいことの後に悪いことをする」一般の効果は、再現が揺らいでいます。

Taylorら(2014)[1]

ゆるむ理由を使うと、「高脂肪の食べ物を半分にする」という強い決意が守られにくくなった。理由を思い浮かべさせると、試食でのチョコレートの量も増えた。

対象: 3つの研究(理由の分類・日常での記録・試食の実験) / 限界: 影響が大きかったのは決意が強い人で、決意が弱い人では差が見られなかった。

Prinsenら(2019)[2]

「ゆるんでいい理由」を示された人は、3つの研究すべてで、食べたお菓子や選んだ軽食のカロリーが高かった。

対象: 女子学生 85人・95人(実験室)、110人(テイクアウトの店) / 限界: 参加者は女子学生だけで、効果の大きさは要旨に書かれていない。

Prinsenら(2018)[3]

日常で多かった許可の理由は「順調だった」(11.3%)と「ベストを尽くした」(8.9%)。許可の理由が多い場面では、誘惑が強くても迷いが小さかった。

対象: 食事の目標があるオランダの女性136人。1週間、1日8回スマホで回答し、誘惑は1,612回、そのうち83.2%で誘惑に乗った / 限界: 原因と結果の向きまではわからない。

Foxら(2026)[5]

「あとで健康的なことをすれば帳消し」と考える人ほど、体に良くない行動を多くしていた(相関 r=0.18)。「取り返すつもり」は強かったが(r=0.21)、実際に取り返す行動とのつながりははっきりしなかった。

対象: 59集団・約1万3,760人のメタ分析(12〜79歳、約7割が大学の参加者) / 限界: ほとんどが相関の研究で、研究ごとのばらつきが大きい。

「いいことの後は悪いことをしやすい」は話が別です。道徳的な行動の後に手を抜く「モラル・ライセンシング」は、91件・7,397人の分析で小さな効果(d=0.31)とされました[6]。しかし大人数での追試では再現しない例が続きました。2026年に115件の実験・2万1,770人をまとめた分析では、出版の偏りを補正すると、人に見られていない場面の効果はほぼゼロでした[7]。

つまり「良い行動をすると自動的に悪い行動が出る」とまでは言えません。崩れの引き金になりやすいのは、自分で用意した「ゆるんでいい理由」のほうです。

03 今日からできる小さな一歩「今日くらい」に気づくには?

口ぐせになっている理由を先に書き出し、その場の言い訳を「前もって決めたゆるみ」に置きかえます。

1

自分の「今日くらい」を3つ書く

上の6種類から、自分がよく使う理由を選んでメモします。名前がつくと、その場で「あ、いつもの理由だ」と気づけます。

所要 3分

2

ゆるむ日と量を先に決める

「金曜の夜はデザートを1つ」のように、目標の範囲で決めておきます。研究では、目標を守るために使う計画的なゆるみは、間食が少ないことと結びついていました[4]。

所要 5分(週1回)

3

ごほうびを習慣と別のものにする

運動のごほうびを甘いものにすると、がんばるほど崩れる理由が増えます。好きな音楽、入浴、短い読書など、目標とぶつからないものを選びます。

所要 1分

ごほうびの選び方は小さなごほうびと習慣の研究、前もって行動を決める方法は「もし〜したら」計画の記事でも整理しています。

04 続けるためのコツ崩れてしまった日はどうする?

1回のゆるみで習慣は終わりません。責めずに次の機会に戻ることが、次の誘惑への備えになります。

続けて崩れたときの立て直し方は、「1回の失敗で全部やめてしまう」心理の記事と連続記録が途切れたときの記事にまとめています。

05よくある質問

がんばった日のごほうびは、やめたほうがいいの?

やめる必要はありません。研究では、あらかじめ決めておき、目標の範囲におさまる「計画したゆるみ」は、間食が少ないことと結びついていました。問題になりやすいのは、その場で思いついた「今日くらい」という言い訳のほうです。

「いいことをすると、そのあと悪いことをしやすい」は本当?

はっきりしていません。91件の分析では小さな効果が出ましたが、追試で再現しない例があり、115件の実験をまとめた2026年の分析では、出版の偏りを補正すると、人に見られていない場面の効果はほぼゼロでした。食べ物や習慣での「自分への言い訳」の実験とは分けて考えるのが安全です。

「あとで取り返せばいい」と考えるのは悪いこと?

59集団・約1万3千人をまとめた分析では、「あとで健康的なことをすれば帳消しにできる」と考える人ほど、体に良くない行動を多くしている関係がありました(相関 r=0.18)。ただし取り返す行動そのものとのつながりははっきりせず、原因か結果かもわかっていません。

出典

  1. Taylor, C., Webb, T. L., & Sheeran, P. (2014). 'I deserve a treat!': Justifications for indulgence undermine the translation of intentions into action. British Journal of Social Psychology, 53(4), 501-520. https://doi.org/10.1111/bjso.12043
  2. Prinsen, S., Evers, C., & de Ridder, D. T. D. (2019). Justified indulgence: self-licensing effects on caloric consumption. Psychology & Health, 34(1), 24-43. https://doi.org/10.1080/08870446.2018.1508683
  3. Prinsen, S., Evers, C., Wijngaards, L., van Vliet, R., & de Ridder, D. (2018). Does Self-Licensing Benefit Self-Regulation Over Time? An Ecological Momentary Assessment Study of Food Temptations. Personality and Social Psychology Bulletin, 44(6), 914-927. https://doi.org/10.1177/0146167218754509
  4. Prinsen, S., Dohle, S., Evers, C., de Ridder, D. T. D., & Hofmann, W. (2019). Introducing functional and dysfunctional self-licensing: Associations with indices of (un)successful dietary regulation. Journal of Personality, 87(5), 934-947. https://doi.org/10.1111/jopy.12445
  5. Fox, G. Q., Luong, M. Q., Kimmel, A., & Napper, L. E. (2026). Vices and vegetables: a systematic review and series of meta-analyses examining the relationships among compensatory health beliefs with health-related intentions and behaviors. Annals of Behavioral Medicine, 60, kaag013. https://doi.org/10.1093/abm/kaag013
  6. Blanken, I., van de Ven, N., & Zeelenberg, M. (2015). A meta-analytic review of moral licensing. Personality and Social Psychology Bulletin, 41(4), 540-558. https://doi.org/10.1177/0146167215572134
  7. Rotella, A., Jung, J., Chinn, C., & Barclay, P. (2026). Observation Moderates the Moral Licensing Effect: A Meta-Analytic Test of Interpersonal and Intrapsychic Mechanisms. Personality and Social Psychology Bulletin, 52, 2792-2808. https://doi.org/10.1177/01461672251345512