「やらされている」習慣が続かないのはなぜ? 自分で選んだ理由(自律的な動機)と習慣の研究で調べた

医者にすすめられた運動、家族に言われた減量、会社の健康目標。始めはしたのに、いつの間にか止まってしまう。それは意志が弱いからとは限りません。研究では、続けている理由が「言われたから」ではなく「自分にとって大事」「やっていて楽しい」である人ほど、運動が長く続き、習慣としても強い傾向がありました。
3行でわかる
- 心理学では、行動の理由を「自分で価値を感じている(自律的)」と「外から言われた・罪悪感から(統制的)」に分けて考えます。
- 66の研究のレビューでは、自律的な理由は運動の多さと安定して関連し、「言われたから」の理由は関連しないか、運動の少なさと関連していました。
- 自分で選んだ理由で続けている人ほど、くり返しが習慣に変わりやすいという研究もあります。ただし追試では、この点ははっきりしませんでした。
01 悩みの正体「やらされている」習慣は、なぜ続かない?
続ける力が自分の外にあるからです。「怒られないため」「ごほうびのため」という理由は、見張る人やごほうびがなくなると弱まります。研究では、この種の理由は運動を続ける力になりにくい傾向がありました。
行動の理由は、1つではありません。心理学の「自己決定理論」では、理由を次の4つに分けて考えます。上の2つは自分の外から来る理由、下の2つは自分の中から来る理由です。
| 理由の種類 | 心の中の声の例 | 運動との関連(66の研究のレビュー) |
|---|---|---|
| 外からの理由 | 「言われたから」「怒られたくない」 | 関連なし 57%、運動が少ないと関連 43% |
| 罪悪感からの理由 | 「やらないと自分がだめな気がする」 | 関連なし 65%、運動が多いと関連 30% |
| 自分にとって大事 | 「体のために大事だと思う」 | 運動が多いと関連 74% |
| やっていて楽しい | 「体を動かすのが好き」 | 運動が多いと関連 62% |
この表は、Teixeiraら(2012)のレビュー[1]にある、複数の要因を同時に調べた分析の割合を、このサイトで並べたものです。割合は、その結びつきが見つかった研究(標本)の割合です。
同じ「医者に言われた運動」でも、本人の中で「自分にとって大事」に変わっていれば、表の下の段に移ります。始めたきっかけより、続けている今の理由が問題なのです。
習慣が考えなくても動く仕組みは習慣が「自動」で動く研究で、始めても三日で止まる理由は三日坊主の研究で紹介しています。
02 科学的にわかっていること自分で選んだ理由があると、習慣は続きやすい?
続きやすい傾向があります。複数のレビューとメタ分析で、自律的な理由は運動や健康行動の多さと関連していました。ただし多くは相関の研究で、効果の大きさは控えめです。
Teixeiraら(2012)[1]
運動の動機を調べた66の研究(72の標本)のシステマティックレビューです。自律的な理由は運動の多さと一貫して関連していました。「自分にとって大事」という理由は始めたばかりの時期に、「楽しい」という理由は長く続けることに、より強く関連する傾向がありました。
対象: 66の研究。標本の97%が欧米の文化圏 / 限界: 多くが一時点の調査で、運動量も78%の標本が自己申告でした。
Ngら(2012)[2]
医療や健康づくりの場面で自己決定理論を使った184のデータセットのメタ分析です。自律的な理由と、心理的な欲求(自分で選べる・できる・つながっている感覚)が満たされることは、心と体の健康のよい結果と関連していました。
対象: 184のデータセット / 限界: 相関の分析が中心で、理由を変えれば健康がよくなると直接確かめたものではありません。
Gardner・Lally(2013)[3]
18〜30歳の192人で、運動の理由と「習慣の強さ」の関係を調べました。自分で選んだ理由で運動している人ほど、これまでの運動のくり返しが、習慣の強さとより強く結びついていました。くり返しとは別に、自律的な理由そのものも習慣の強さと関連していました。
対象: 18〜30歳の192人 / 限界: 質問紙による相関の研究で、どちらが原因かは区別できません。
Maltagliatiら(2021)[4]
2020年春のコロナ禍のロックダウンの前・最中・終わりの運動習慣を、フランスとスイスの283人で追いました。生活の変化で運動の習慣は弱まりましたが、自律的な理由が強い人ほど習慣も強い関係がありました。一方で、「自律的な理由があると、くり返しが習慣に変わりやすい」という結びつきは確認されませんでした。
対象: 283人 / 限界: 3つの時点の運動と習慣を自己申告で答えたオンライン調査です。上のGardner・Lallyの結果の一部は、ここでは再現されませんでした。
Ntoumanisら(2021)[5]
自己決定理論にもとづく健康づくりの介入を調べた73の研究のメタ分析です。介入は、健康行動を小さい〜中くらいの大きさで改善し、その効果は追跡時点でも見られました。健康行動の改善と関連していたのは、周りの支えと自律的な理由の高まりでした。外からの理由や罪悪感からの理由(統制的な理由)の変化は、関連していませんでした。
対象: 73の実験的な研究 / 限界: 効果は控えめで、研究によるばらつきも大きいとされています。
03 今日からできる小さな一歩言われて始めた習慣を、自分の習慣にするには?
「言われたから」の横に、自分にとっての理由を書き足します。次に、やり方のうち1つを自分で選び直します。楽しめる部分を1つ見つけると、長く続く理由になりやすいとされています。
自分にとっての理由を1行書く
「医者に言われたから」の下に、「孫と公園で遊べる体でいたい」のように、自分が大事にしたいことを書きます。「自分にとって大事」という理由は、レビューで74%の研究が運動の多さと関連していました[1]。
所要 3分
やり方を1つ、自分で選び直す
時間帯・場所・種目のうち1つを、自分の好みで決め直します。「自分で選んでいる」感覚と周りの支えが高まった人ほど、健康行動がよく変わっていたためです[5]。研究から考えた工夫です。
所要 5分
楽しい瞬間を1つメモする
終わったあと「景色がよかった」「音楽が聞けた」など、楽しかったことを1つ書きます。「楽しい」という理由は、長く続けることにより強く関連する傾向がありました[1]。
所要 1分
04 続けるためのコツ罪悪感で続けるのは、よくない?
悪いわけではありませんが、長く続く支えにはなりにくいとされています。罪悪感の理由は、研究によって運動と関連したりしなかったりで、結果が一定しませんでした。
- 「できた」に目を向ける: 「自分はできる」という感覚は、レビューで複数の要因を同時に調べた研究の56%、単純な相関では92%の研究で、運動の多さと関連していました[1]。
- ごほうびだけに頼らない: ごほうびの効き方と限界は小さなご褒美の研究にまとめています。
- 周りの人は、選択肢を渡す: 命令より「どれにする?」と聞くほうが、自分で選んでいる感覚を守りやすいと考えられています[5]。
- どうしても理由が見つからないとき: その目標が今の生活に合っていないこともあります。手放し方は目標を手放す研究で紹介しています。
05よくある質問
人に言われて始めた習慣は、続かない?
続かないとは限りません。始めたきっかけより、続けている今の理由が大事です。66の研究のレビューでは、「言われたから」「ごほうびのため」という理由は、運動の量と関連しないか、むしろ少ないことと関連していました。一方で「自分にとって大事」「楽しい」という理由は、運動が多いことと安定して関連していました。
「やらないと罪悪感がある」という理由でも、続けられる?
短い間は続けられることがあります。罪悪感や「ちゃんとした人でいたい」という理由は、レビューでは運動と関連する研究が30%、関連しない研究が65%で、結果が一定しませんでした。研究者は、この理由は長く続く支えになりにくいと考えています。
家族に運動を続けてほしいとき、どう声をかければいい?
命令より、選択肢を渡すほうが研究に沿っています。73の介入研究のメタ分析では、周りの支えと自分で選んでいる感覚が高まった人ほど、健康行動もよく変わっていました。「いつ・何をするかはあなたが決めていい」と伝えるのが一つの方法です。
出典
- Teixeira, P. J., Carraça, E. V., Markland, D., Silva, M. N., & Ryan, R. M. (2012). Exercise, physical activity, and self-determination theory: A systematic review. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 9, 78. https://doi.org/10.1186/1479-5868-9-78
- Ng, J. Y. Y., Ntoumanis, N., Thøgersen-Ntoumani, C., Deci, E. L., Ryan, R. M., Duda, J. L., & Williams, G. C. (2012). Self-determination theory applied to health contexts: A meta-analysis. Perspectives on Psychological Science, 7(4), 325–340. https://doi.org/10.1177/1745691612447309
- Gardner, B., & Lally, P. (2013). Does intrinsic motivation strengthen physical activity habit? Modeling relationships between self-determination, past behaviour, and habit strength. Journal of Behavioral Medicine, 36(5), 488–497. https://doi.org/10.1007/s10865-012-9442-0
- Maltagliati, S., Rebar, A., Fessler, L., Forestier, C., Sarrazin, P., Chalabaev, A., et al. (2021). Evolution of physical activity habits after a context change: The case of COVID-19 lockdown. British Journal of Health Psychology, 26(4), 1135–1154. https://doi.org/10.1111/bjhp.12524
- Ntoumanis, N., Ng, J. Y. Y., Prestwich, A., Quested, E., Hancox, J. E., Thøgersen-Ntoumani, C., et al. (2021). A meta-analysis of self-determination theory-informed intervention studies in the health domain: Effects on motivation, health behavior, physical, and psychological health. Health Psychology Review, 15(2), 214–244. https://doi.org/10.1080/17437199.2020.1718529


