勉強の後に運動すると覚えやすい? 何時間後に・どれくらい動けばいいかを研究で調べた

勉強や暗記のあと、運動するのはいつがいいのでしょうか。研究をまとめると、覚えている最中ではなく、覚え終わった後に少し強めの運動をすると、記憶が残りやすくなる傾向があります。覚えて4時間後に35分運動した組が、2日後によく覚えていた実験もあります。ただし、その根拠になる研究はまだ多くありません。
3行でわかる
- 25本の論文をまとめたメタ分析では、覚えた後4時間以内の運動で記憶がよくなった(効果の大きさd=0.47)。覚えている最中の運動は、わずかに逆効果だった(d=−0.12)。
- 72人の実験では、覚えて4時間後に35分自転車をこいだ組だけが、2日後のテストで運動しない組より多く覚えていた。直後に運動した組では差が出なかった。
- やり方の目安は「覚える時間は座って集中、終わってから数時間以内に20〜35分、息がはずむ運動」。4時間後の効果を調べた研究は2本だけで、確かめる研究がまだ必要。
01 悩みの正体勉強の後の運動で、なぜ記憶が変わる?
覚えたことは、覚えた後の数時間から数日をかけて脳に固まっていきます。運動はこの「固める時間」に働く物質を増やすため、覚えた後の運動が記憶を助けると考えられています。
覚えたばかりの記憶は、まだ不安定です。その後、時間をかけて長く残る形に変わっていきます。これを記憶の「定着(固定化)」と呼びます。
定着には、ドーパミンやノルアドレナリン、脳由来神経栄養因子(BDNF)といった物質がかかわると考えられています。運動をすると、これらの物質が一時的に増えます。そこで研究者たちは、「覚えた後に運動すれば、定着を後押しできるのでは」と考えて実験してきました[3]。
研究では、運動のタイミングを次の4つに分けて調べています[1]。
- 覚える前に運動する
- 覚えている最中に運動する(歩きながら覚える、など)
- 覚えた後、4時間以内に運動する
- 覚えた後、4時間以上たってから運動する
勉強の前の運動で集中力を上げる話は、勉強の前の運動の研究で紹介しています。この記事では「覚えた後」に注目します。
02 科学的にわかっていること運動は、覚えた後の何時間後がいい?
2つのメタ分析で、覚えた後の運動は記憶をよくし、覚えている最中の運動は効果がないか、わずかに逆効果でした。4時間後に運動した実験では、2日後の記憶がよくなりました。
d=0.47
覚えた後4時間以内に運動したときの、記憶への効果の大きさ(25本の論文のメタ分析。中くらいの効果)[1]
Loprinziら(2019)[1]
1回の運動と記憶を調べた25本の論文をまとめました。覚えた後4時間以内の運動は記憶をよくし(d=0.47)、4時間以上後の運動はさらに大きな効果でした(d=1.05)。覚える前の運動ははっきりした差になりませんでした(d=0.11)。覚えている最中の運動は、わずかに記憶を下げました(d=−0.12)。
対象: 実験研究25本(多くは若い成人) / 限界: 4時間以上後の結果は2本の研究だけにもとづき、出版バイアス(よい結果ほど発表されやすい偏り)の兆候も見られました。軽い運動を覚えた直後にした場合は、記憶が下がった分析もあります(d=−0.59)。
Qaziら(2024)[2]
42件の実験をまとめた、より新しいメタ分析です。覚えた後の運動は記憶をよくし(d=0.33)、覚える前の運動もよくしました(d=0.23)。覚えている最中の運動は、記憶に影響しませんでした(d=−0.04)。覚えた後の運動は、見たことがあるかを選ぶテスト(再認)で特に効果が大きくなりました(d=0.62)。
対象: 5歳以上の人を対象にした42件の実験 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、年齢や運動の種類で効果が変わりました。覚える前の運動では、60歳を超える人で記憶が下がった分析もあります。
van Dongenら(2016)[3]
72人が約40分かけて、90組の「絵と画面上の場所」の組み合わせを覚えました。その後、無作為に3組に分け、直後に運動する組、4時間後に運動する組、運動しない組をくらべました。運動は、エアロバイクでのインターバル運動を35分(最大心拍数の80%まで)。2日後のテストで、4時間後に運動した組だけが、運動しない組より多く覚えていました。直後に運動した組では、差は出ませんでした。
対象: 成人72人 / 限界: 1つの実験室での1回の実験です。4時間後の運動の効果を確かめた研究はまだ少なく、大きな追試は見つかりませんでした。
Roigら(2012)[4]
若い48人が、画面の線を手首の力でなぞる運動のスキルを練習しました。練習の前に強めの自転車こぎを20分した組と、練習の直後に20分した組は、休んだ組より、1日後と7日後によく覚えていました。7日後には、練習の後に運動した組が、前に運動した組を上回りました。
対象: 若い成人48人 / 限界: 体の動きのスキルの記憶です。単語や知識の暗記とは仕組みが違う可能性があり、直後の運動が効かなかった実験[3]とは結果が分かれています。
| 運動のタイミング | 研究でわかったこと |
|---|---|
| 覚える前 | はっきりしない〜少しよい(d=0.11〜0.23)[1][2] |
| 覚えている最中 | 効果なし〜わずかに逆効果(d=−0.04〜−0.12)[1][2] |
| 覚えた後4時間以内 | よくなる(d=0.47)[1]。直後の運動で差が出なかった実験もある[3] |
| 覚えた後4時間以上 | よくなる(d=1.05)。ただし研究は2本だけ[1][3] |
03 今日からできる小さな一歩勉強の後の運動は、どうやればいい?
覚える時間は座って集中し、終わってから数時間以内に、息がはずむくらいの運動を20〜35分します。夜に勉強した日は、無理に運動せず、翌日の勉強の後に回します。
覚える時間は、座って集中する
歩きながらやエアロバイクをこぎながら覚えるのは、研究では効果がないか、わずかに逆効果でした[1][2]。覚える作業と運動は分けます。
所要 いつもの勉強時間
運動する時間を、勉強の後に決めておく
たとえば午後に暗記をしたら、夕方の早い時間に運動を入れます。研究で効果があったのは、覚えた後4時間以内と、4時間後でした[1][3]。
所要 1分(予定を書くだけ)
息がはずむくらいの運動を20〜35分する
研究で使われたのは、20分の強めの自転車こぎや、35分のインターバル運動でした[3][4]。早歩きの合間に小走りを入れるなど、会話が少しきつい程度が目安です(研究の条件をもとにした目安です)。覚えた直後の軽い運動では、かえって記憶が下がった分析があります[1]。
所要 20〜35分
翌日以降に、思い出すテストをする
研究では、1日後・2日後・7日後のテストで効果が見られました[3][4]。翌日以降に教材を見ずに思い出すと、自分の覚え具合がわかり、記憶もさらに残ります(テスト効果の研究)。
所要 5〜10分
持病がある人や、ふだん運動をしていない人は、強い運動を急に始めないでください。不安があるときは医師に相談してから始めましょう。
04 続けるためのコツ勉強と運動の時間が合わない日はどうする?
運動は記憶を後押しする「おまけ」です。できない日があっても、復習や睡眠など、効果の大きい方法を優先すれば十分です。
- 夜遅くの勉強の後は、運動より睡眠を優先する。覚えた後の睡眠も記憶の定着を助けます(学習後の睡眠の研究)。寝る直前の激しい運動については夜の運動と睡眠の研究が参考になります。
- 通学や通勤の帰りに一駅分を早歩きするなど、すでにある移動を「勉強の後の運動」に使う。
- 運動だけに頼らない。記憶を残すには、日をあけた復習の効果が大きいとわかっています(復習のタイミングの研究)。
- 4時間後の効果は、まだ研究が少ない段階です。「数時間以内のどこかで動ければよい」くらいに考えます。
05よくある質問
勉強の後、すぐに運動しても記憶に効果はありますか?
25本の論文のメタ分析では、覚えた後4時間以内の運動で記憶がよくなりました(d=0.47)。ただし、覚えた直後に35分運動した組では、2日後の記憶に差が出なかった実験もあり、直後がよいかははっきりしていません。
歩きながら暗記すると覚えやすいですか?
研究をまとめると、覚えている最中の運動は記憶に効果がないか(d=−0.04)、わずかに逆効果でした(d=−0.12)。覚える時間は座って集中し、運動は覚えた後にするほうが研究の結果に合っています。
どれくらいの強さの運動をすればいいですか?
研究で効果があったのは、20分の強めの自転車こぎや、最大心拍数の80%までのインターバル運動35分でした。覚えた直後の軽い運動では、記憶が下がった分析もあります。持病がある人は無理をしないでください。
出典
- Loprinzi, P. D., Blough, J., Crawford, L., Ryu, S., Zou, L., & Li, H. (2019). The temporal effects of acute exercise on episodic memory function: Systematic review with meta-analysis. Brain Sciences, 9(4), 87. https://doi.org/10.3390/brainsci9040087
- Qazi, A. S., Schmid, D., Gridley, N., Lambourne, K., Daly-Smith, A. J., & Tomporowski, P. D. (2024). The effects of acute exercise on long-term episodic memory: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Cognition, 3, 1367569. https://doi.org/10.3389/fcogn.2024.1367569
- van Dongen, E. V., Kersten, I. H. P., Wagner, I. C., Morris, R. G. M., & Fernández, G. (2016). Physical exercise performed four hours after learning improves memory retention and increases hippocampal pattern similarity during retrieval. Current Biology, 26(13), 1722-1727. https://doi.org/10.1016/j.cub.2016.04.071
- Roig, M., Skriver, K., Lundbye-Jensen, J., Kiens, B., & Nielsen, J. B. (2012). A single bout of exercise improves motor memory. PLoS ONE, 7(9), e44594. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0044594


