記憶・学習

勉強の後に運動すると覚えやすい? 何時間後に・どれくらい動けばいいかを研究で調べた

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鉄柵に掛けられた白いロードバイク
Photo: Robert Lamb / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

勉強や暗記のあと、運動するのはいつがいいのでしょうか。研究をまとめると、覚えている最中ではなく、覚え終わった後に少し強めの運動をすると、記憶が残りやすくなる傾向があります。覚えて4時間後に35分運動した組が、2日後によく覚えていた実験もあります。ただし、その根拠になる研究はまだ多くありません。

3行でわかる

  1. 25本の論文をまとめたメタ分析では、覚えた後4時間以内の運動で記憶がよくなった(効果の大きさd=0.47)。覚えている最中の運動は、わずかに逆効果だった(d=−0.12)。
  2. 72人の実験では、覚えて4時間後に35分自転車をこいだ組だけが、2日後のテストで運動しない組より多く覚えていた。直後に運動した組では差が出なかった。
  3. やり方の目安は「覚える時間は座って集中、終わってから数時間以内に20〜35分、息がはずむ運動」。4時間後の効果を調べた研究は2本だけで、確かめる研究がまだ必要。

01 悩みの正体勉強の後の運動で、なぜ記憶が変わる?

覚えたことは、覚えた後の数時間から数日をかけて脳に固まっていきます。運動はこの「固める時間」に働く物質を増やすため、覚えた後の運動が記憶を助けると考えられています。

覚えたばかりの記憶は、まだ不安定です。その後、時間をかけて長く残る形に変わっていきます。これを記憶の「定着(固定化)」と呼びます。

定着には、ドーパミンやノルアドレナリン、脳由来神経栄養因子(BDNF)といった物質がかかわると考えられています。運動をすると、これらの物質が一時的に増えます。そこで研究者たちは、「覚えた後に運動すれば、定着を後押しできるのでは」と考えて実験してきました[3]。

研究では、運動のタイミングを次の4つに分けて調べています[1]。

勉強の前の運動で集中力を上げる話は、勉強の前の運動の研究で紹介しています。この記事では「覚えた後」に注目します。

02 科学的にわかっていること運動は、覚えた後の何時間後がいい?

2つのメタ分析で、覚えた後の運動は記憶をよくし、覚えている最中の運動は効果がないか、わずかに逆効果でした。4時間後に運動した実験では、2日後の記憶がよくなりました。

d=0.47

覚えた後4時間以内に運動したときの、記憶への効果の大きさ(25本の論文のメタ分析。中くらいの効果)[1]

Loprinziら(2019)[1]

1回の運動と記憶を調べた25本の論文をまとめました。覚えた後4時間以内の運動は記憶をよくし(d=0.47)、4時間以上後の運動はさらに大きな効果でした(d=1.05)。覚える前の運動ははっきりした差になりませんでした(d=0.11)。覚えている最中の運動は、わずかに記憶を下げました(d=−0.12)。

対象: 実験研究25本(多くは若い成人) / 限界: 4時間以上後の結果は2本の研究だけにもとづき、出版バイアス(よい結果ほど発表されやすい偏り)の兆候も見られました。軽い運動を覚えた直後にした場合は、記憶が下がった分析もあります(d=−0.59)。

Qaziら(2024)[2]

42件の実験をまとめた、より新しいメタ分析です。覚えた後の運動は記憶をよくし(d=0.33)、覚える前の運動もよくしました(d=0.23)。覚えている最中の運動は、記憶に影響しませんでした(d=−0.04)。覚えた後の運動は、見たことがあるかを選ぶテスト(再認)で特に効果が大きくなりました(d=0.62)。

対象: 5歳以上の人を対象にした42件の実験 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、年齢や運動の種類で効果が変わりました。覚える前の運動では、60歳を超える人で記憶が下がった分析もあります。

van Dongenら(2016)[3]

72人が約40分かけて、90組の「絵と画面上の場所」の組み合わせを覚えました。その後、無作為に3組に分け、直後に運動する組、4時間後に運動する組、運動しない組をくらべました。運動は、エアロバイクでのインターバル運動を35分(最大心拍数の80%まで)。2日後のテストで、4時間後に運動した組だけが、運動しない組より多く覚えていました。直後に運動した組では、差は出ませんでした。

対象: 成人72人 / 限界: 1つの実験室での1回の実験です。4時間後の運動の効果を確かめた研究はまだ少なく、大きな追試は見つかりませんでした。

Roigら(2012)[4]

若い48人が、画面の線を手首の力でなぞる運動のスキルを練習しました。練習の前に強めの自転車こぎを20分した組と、練習の直後に20分した組は、休んだ組より、1日後と7日後によく覚えていました。7日後には、練習の後に運動した組が、前に運動した組を上回りました。

対象: 若い成人48人 / 限界: 体の動きのスキルの記憶です。単語や知識の暗記とは仕組みが違う可能性があり、直後の運動が効かなかった実験[3]とは結果が分かれています。

運動のタイミング研究でわかったこと
覚える前はっきりしない〜少しよい(d=0.11〜0.23)[1][2]
覚えている最中効果なし〜わずかに逆効果(d=−0.04〜−0.12)[1][2]
覚えた後4時間以内よくなる(d=0.47)[1]。直後の運動で差が出なかった実験もある[3]
覚えた後4時間以上よくなる(d=1.05)。ただし研究は2本だけ[1][3]

03 今日からできる小さな一歩勉強の後の運動は、どうやればいい?

覚える時間は座って集中し、終わってから数時間以内に、息がはずむくらいの運動を20〜35分します。夜に勉強した日は、無理に運動せず、翌日の勉強の後に回します。

1

覚える時間は、座って集中する

歩きながらやエアロバイクをこぎながら覚えるのは、研究では効果がないか、わずかに逆効果でした[1][2]。覚える作業と運動は分けます。

所要 いつもの勉強時間

2

運動する時間を、勉強の後に決めておく

たとえば午後に暗記をしたら、夕方の早い時間に運動を入れます。研究で効果があったのは、覚えた後4時間以内と、4時間後でした[1][3]。

所要 1分(予定を書くだけ)

3

息がはずむくらいの運動を20〜35分する

研究で使われたのは、20分の強めの自転車こぎや、35分のインターバル運動でした[3][4]。早歩きの合間に小走りを入れるなど、会話が少しきつい程度が目安です(研究の条件をもとにした目安です)。覚えた直後の軽い運動では、かえって記憶が下がった分析があります[1]。

所要 20〜35分

4

翌日以降に、思い出すテストをする

研究では、1日後・2日後・7日後のテストで効果が見られました[3][4]。翌日以降に教材を見ずに思い出すと、自分の覚え具合がわかり、記憶もさらに残ります(テスト効果の研究)。

所要 5〜10分

持病がある人や、ふだん運動をしていない人は、強い運動を急に始めないでください。不安があるときは医師に相談してから始めましょう。

04 続けるためのコツ勉強と運動の時間が合わない日はどうする?

運動は記憶を後押しする「おまけ」です。できない日があっても、復習や睡眠など、効果の大きい方法を優先すれば十分です。

05よくある質問

勉強の後、すぐに運動しても記憶に効果はありますか?

25本の論文のメタ分析では、覚えた後4時間以内の運動で記憶がよくなりました(d=0.47)。ただし、覚えた直後に35分運動した組では、2日後の記憶に差が出なかった実験もあり、直後がよいかははっきりしていません。

歩きながら暗記すると覚えやすいですか?

研究をまとめると、覚えている最中の運動は記憶に効果がないか(d=−0.04)、わずかに逆効果でした(d=−0.12)。覚える時間は座って集中し、運動は覚えた後にするほうが研究の結果に合っています。

どれくらいの強さの運動をすればいいですか?

研究で効果があったのは、20分の強めの自転車こぎや、最大心拍数の80%までのインターバル運動35分でした。覚えた直後の軽い運動では、記憶が下がった分析もあります。持病がある人は無理をしないでください。

出典

  1. Loprinzi, P. D., Blough, J., Crawford, L., Ryu, S., Zou, L., & Li, H. (2019). The temporal effects of acute exercise on episodic memory function: Systematic review with meta-analysis. Brain Sciences, 9(4), 87. https://doi.org/10.3390/brainsci9040087
  2. Qazi, A. S., Schmid, D., Gridley, N., Lambourne, K., Daly-Smith, A. J., & Tomporowski, P. D. (2024). The effects of acute exercise on long-term episodic memory: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Cognition, 3, 1367569. https://doi.org/10.3389/fcogn.2024.1367569
  3. van Dongen, E. V., Kersten, I. H. P., Wagner, I. C., Morris, R. G. M., & Fernández, G. (2016). Physical exercise performed four hours after learning improves memory retention and increases hippocampal pattern similarity during retrieval. Current Biology, 26(13), 1722-1727. https://doi.org/10.1016/j.cub.2016.04.071
  4. Roig, M., Skriver, K., Lundbye-Jensen, J., Kiens, B., & Nielsen, J. B. (2012). A single bout of exercise improves motor memory. PLoS ONE, 7(9), e44594. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0044594