コーヒーは水分補給にならない?「利尿作用で脱水になる」を研究で調べた

「コーヒーは利尿作用があるから、飲んだ分より水分が出ていく」。そう聞いて、コーヒーを飲むたびに水も足している人は少なくありません。研究の答えは「ふだん飲む人が、ふだんの量を飲むなら、水とほぼ同じように水分になる」です。尿がはっきり増えたのは、一度に500mgほどのカフェインをとったときなど、限られた条件でした。
3行でわかる
- コーヒーを1日3〜6杯飲む男性50人の試験では、1日4杯のコーヒーと同じ量の水で、体の水分量も24時間の尿の量(2,409mLと2,428mL)も変わりませんでした。
- 16の研究をまとめたメタ分析では、カフェインで尿は平均109mL増えましたが、運動中は差がなくなりました。著者らは「小さな利尿作用」と結論づけています。
- 尿がはっきり増えたのは、一度にカフェイン約537mg(体重1kgあたり6mg)をとった試験でした。ふだんの量なら、水を別に足す必要を示す根拠は見当たりません。
01 悩みの正体コーヒーで脱水になると言われるのはなぜ?
カフェインには、腎臓でナトリウムが体に戻るのを弱め、尿を増やす働きがあるからです。ただし、この働きがはっきり出るのは大量にとったときで、ふだん飲む量では小さいことがわかっています。
カフェインは、腎臓の「アデノシン受容体」という部分の働きを止めます。すると、尿からナトリウムが体に戻りにくくなり、水も一緒に尿に出ていきます。これが「利尿作用」です [1]。
この働き自体は本当にあります。問題は量です。80年以上前から研究されていて、利尿作用がはっきり出たのは、500mg以上のような大量のカフェインをとった試験だと整理されています [1]。
もう一つのポイントは「慣れ」です。毎日コーヒーを飲む人は、カフェインの利尿作用に強い耐性ができ、尿が増えにくくなると報告されています [4]。「コーヒーで脱水」という話は、この量と慣れの条件が抜け落ちたまま広まったと考えられます。
02 科学的にわかっていることコーヒーは本当に水分補給にならない?
ふだん飲む量なら、水とほぼ同じように水分になります。体の水分量・尿の量を水と比べた試験で差は出ませんでした。尿が増えたのは、一度に500mgほどの大量のカフェインをとったときでした。
| 飲み方 | 尿の量(水と比べて) | 判定 |
|---|---|---|
| ふだん飲む人が1日4杯(体重1kgあたり4mg) | 差なし(24時間)[1] | 水と同じく水分になる |
| 一度に約269mg(体重1kgあたり3mg) | 差なし(3時間)[5] | 水と同じく水分になる |
| 一度に約537mg(体重1kgあたり6mg) | 613mL対356mLと多い(3時間)[5] | 一時的に尿が増える |
Killer, Blannin & Jeukendrup(2014、英国)[1]
コーヒーを毎日3〜6杯飲む男性50人が、3日間ずつ2回の試験に参加しました。一方では200mLのコーヒーを1日4杯(カフェインは体重1kgあたり4mg)、もう一方では同じ量の水を飲みました。体の水分量は51.5kgと51.4kgで、24時間の尿の量も2,409mLと2,428mLで差がありませんでした。血液や尿のどの指標でも違いは出ませんでした。
対象: コーヒーを飲み慣れた男性50人。女性は月経周期の影響を避けるため除外 / 限界: 研究費はコーヒーと健康の研究を支援する非営利団体(ISIC)から出ています。著者の1人は飲料メーカーの社員です。
Maughanら(2016、英国)[2]
72人の男性に、水を含む13種類の身近な飲みものを30分で1L飲んでもらい、その後4時間の尿を集めました。コーヒー、温かい紅茶、アイスティー、コーラ、オレンジジュースなどは、尿の量が水と変わりませんでした。尿が水より少なく、体に長く残ったのは、経口補水液と牛乳(普通・低脂肪)でした。
対象: 体の水分が足りている、空腹の男性72人 / 限界: 1回だけ飲んだときの4時間の比較です。暑さや運動で汗をかいたあとの状態ではありません。
Zhangら(2015、メタ分析)[3]
健康な大人でカフェインと尿の量を調べた16の研究(28の比較)をまとめました。カフェインの量の中央値は300mgで、尿はカフェインなしより平均109mL(16%)増えました。ただし運動中は差がなくなり、安静時に増えていました。女性では増えやすく、男性でははっきりした差が出ませんでした。著者らは「カフェインの利尿作用は小さく、運動で打ち消される」と結論づけています。
限界: カフェインは錠剤など、コーヒー以外の形でとった研究も含みます。研究ごとの結果のばらつきは大きめでした。
Seal ら(2017、ギリシャ・米国)[5]
コーヒーを1日1〜3杯飲む10人(男性8人・女性2人、平均27歳)が、200mLの水、カフェイン少なめのコーヒー(体重1kgあたり3mg、約269mg)、カフェイン多めのコーヒー(6mg、約537mg)を別の日に飲みました。3時間の尿は、水356mL、少なめ316mLでほぼ同じでした。多めのときだけ613mLに増えました。
対象: 健康な大人10人。安静にした状態の朝9時に試験 / 限界: 人数が少なく、1回飲んだあとの3時間だけを見ています。
03 今日からできる小さな一歩コーヒー好きは、水分をどうとればいい?
ふだんの量のコーヒーは、1日の水分に数えて大丈夫です。一度に何杯も続けて飲む日や、カフェインをしばらく断っていた日だけ、水も一緒にとると安心です。
ふだんの量なら、コーヒーも水分に数える
試験で水と差がなかったのは、慣れている人の1日4杯(体重60kgの人でカフェイン約240mg)でした。この範囲なら「コーヒー1杯ごとに水1杯」を義務にしなくてかまいません。
所要 0分
一度にたくさん飲む日は、水も足す
尿が増えたのは、一度に約537mgをとったときでした。濃いコーヒーを続けて何杯も飲む日は、間に水やお茶をはさみます。
所要 1杯ごとに10秒
久しぶりに飲むときは量を控えめに
カフェインに慣れていない人ほど尿が増えやすいとされています。しばらく飲んでいなかった人は、1〜2杯から始めます。
所要 0分
04 続けるためのコツ水分補給でコーヒーより気をつけたいことは?
利尿作用よりも、飲む時間帯と量のほうが気をつけどころです。寝る前のカフェインは睡眠を浅くし、暑い日や汗をかいた日は、のどの渇きに合わせてこまめに飲むことが大切です。
- 寝る前の数時間はカフェインを避ける: 利尿作用より睡眠への影響のほうが問題になりやすいです。寝る何時間前までならいいかも研究で調べています。
- 汗をかく日は量を足す: 研究の多くは体の水分が足りている状態で行われています。暑い日や運動のあとは、コーヒーだけに頼らず水も飲みます。
- のどの渇きを放っておかない: 軽い脱水でも集中しにくくなることがあります。のどが渇くと集中できない理由もあわせてどうぞ。
- トイレが近いのは別の理由のことも: コーヒーを飲むと大腸が動いて便意が出ることがあります。コーヒーでトイレに行きたくなる仕組みで調べています。
05よくある質問
コーヒーは1日の水分量に数えていいの?
ふだんコーヒーを飲む人が適量を飲むなら、数えてよいと考えられます。1日3〜6杯飲む男性50人の試験では、1日4杯(体重1kgあたりカフェイン4mg)のコーヒーと同じ量の水で、体の水分量も24時間の尿の量も変わりませんでした。
コーヒー1杯につき水を1杯飲むべき?
研究からは、ふだんの量でその必要を示す根拠は見当たりません。1Lを飲んで4時間の尿を比べた試験で、コーヒーの尿の量は水と差がありませんでした。ただし、一度に500mgほどのカフェインをとった試験では尿が増えたため、大量に飲む日は水も一緒にとると安心です。
緑茶や紅茶も水分補給になる?
72人の男性に水を含む13種類の飲みものを1Lずつ飲んでもらった試験では、温かい紅茶もアイスティーも、4時間の尿の量は水と差がありませんでした。ふだん飲む量のお茶は、水と同じように水分になると考えられます。
カフェインで尿が増えやすい人はいる?
いくつかの条件で増えやすいと報告されています。16の研究のメタ分析では、安静にしているとき、そして女性で尿が増えやすい傾向がありました。数日以上カフェインを断っていた人が急に多くとった場合も、短時間だけ尿が増えるとされています。
出典
- Killer SC, Blannin AK, Jeukendrup AE (2014). No evidence of dehydration with moderate daily coffee intake: a counterbalanced cross-over study in a free-living population. PLoS One, 9(1), e84154. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0084154
- Maughan RJ, Watson P, Cordery PA, et al. (2016). A randomized trial to assess the potential of different beverages to affect hydration status: development of a beverage hydration index. American Journal of Clinical Nutrition, 103(3), 717-723. https://doi.org/10.3945/ajcn.115.114769
- Zhang Y, Coca A, Casa DJ, et al. (2015). Caffeine and diuresis during rest and exercise: A meta-analysis. Journal of Science and Medicine in Sport, 18(5), 569-574. https://doi.org/10.1016/j.jsams.2014.07.017
- Maughan RJ, Griffin J (2003). Caffeine ingestion and fluid balance: a review. Journal of Human Nutrition and Dietetics, 16(6), 411-420. https://doi.org/10.1046/j.1365-277X.2003.00477.x
- Seal AD, Bardis CN, Gavrieli A, et al. (2017). Coffee with High but Not Low Caffeine Content Augments Fluid and Electrolyte Excretion at Rest. Frontiers in Nutrition, 4, 40. https://doi.org/10.3389/fnut.2017.00040


