食べものがのどに詰まって、せきで取れないときは? 背中をたたく・お腹を突き上げる効果を研究で調べた

食べものがのどに詰まって、せきをしても取れない。目の前の家族が苦しそうなのに、何をすればいいのかわからない。そんなときは、背中を強くたたき、取れなければお腹を突き上げて、取れるまでくり返します。日本の救急患者を調べた研究では、まわりの人がこのどちらかをした場合のほうが、後遺症なく回復した割合が高めでした。
3行でわかる
- せきで取れないときは、背中を5回強くたたき、だめならお腹を5回突き上げます。取れるまで、この2つをくり返します。
- 日本の25病院の研究(407人)では、最初の方法1つで取れたのは3割ほどでした。1回で取れなくても、あきらめずに続けることが大切です。
- 詰まっている時間が1分のびるごとに、助かる見込みは下がっていました。「少し様子を見る」より、すぐに手を動かすほうがよいと考えられます。
01 悩みの正体のどに詰まった食べもの、なぜせきで取れない?
食べものが空気の通り道をふさぐと、せきに必要な空気を吸えなくなります。声もせきも出ない状態は、自分の力では出せない重い詰まりのサインです。
せきは、肺の空気をいきおいよく吐き出して、異物を押し出す仕組みです。ところが食べものが気道(空気の通り道)をふさぐと、肺に空気が入りません。押し出す力が足りなくなります。
日本では、気道に物が詰まって亡くなる人が年に8,000人を超えます。不慮の事故による死亡の2番目に多い原因です [1]。日本の研究で詰まった食べものは、ご飯が24%、肉が17%、お餅が16%の順でした [1]。お餅だけでなく、ふだんの食事でも起きています。お餅で詰まった例は、ふだん自立して暮らしている人が多く、正月に家で起きることが目立ちました [5]。
救急車が着くまでには、ふつう数分かかります。その間にまわりの人が取り除けるかどうかが、その後を大きく左右します [1]。
02 科学的にわかっていること背中をたたく・お腹の突き上げは本当に効く?
日本の救急患者407人の研究では、背中をたたいた人、お腹を突き上げた人のどちらも、何もしなかった場合より後遺症なく回復した割合が高めでした。
| まわりの人が最初にしたこと | 30日後に後遺症なく回復した割合(調整後) |
|---|---|
| 背中をたたく(76人) | 31%(何もしないと16%)。生存率も高め [1] |
| お腹を突き上げる(24人) | 38%(何もしないと15%)。生存率の差ははっきりせず [1] |
| 何もしなかった(175人) | 15〜16% [1] |
後遺症なく回復: 30日後に、ひとりで日常生活を送れる程度に回復していたこと。最初の1つの方法だけで比べています。
Igarashiら(2025)[1]
日本の25病院に救急車で運ばれた、18歳以上の窒息の患者を調べました。背中をたたいた場合は、後遺症なく回復した割合が31%、お腹を突き上げた場合は38%でした。何もしなかった場合は15〜16%です。ただし、最初の方法1つで詰まりが取れたのは、お腹の突き上げで30%、背中たたきで27%でした。
対象: 2020〜2023年の407人、年齢の中央値81歳 / 限界: 観察研究で、条件のちがいを統計で調整しても、すべては消せません。救急車を呼ばずに済んだ軽い例は含まれていません。
Noriiら(2024)[2]
同じ登録データで、まわりの人が何か手当てをしたかどうかを比べました。手当てをした場合は、1か月後に生きている見込みが高く(ハザード比0.55)、後遺症なく回復する見込みも高くなっていました(オッズ比2.18)。それでも、目撃された窒息のうち手当てがされたのは54.5%だけでした。
対象: 407人、年齢の中央値82歳 / 限界: 観察研究で、因果関係は断定できません。
Igarashiら(2026)[3]
気道が詰まっていた時間と、その後の経過を調べました。詰まった時間が1分のびるごとに、30日後に生きている見込みは下がっていました(オッズ比0.86)。「この時間までなら安全」という区切りは見つかりませんでした。
対象: 詰まっていた時間が0〜25分だった229人 / 限界: 時間は救急隊などの記録にもとづく推定です。
Couperら(2020)[6]
世界の研究69本をまとめた、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)の系統的レビューです。背中をたたく、お腹の突き上げ、口の中から取り出すなどの方法には、詰まりを取る効果が報告されていました。一方で、どの方法にも体を傷めた報告がありました。見えないまま指を口に入れてかき出す方法も、その1つです。
限界: ほとんどが症例報告や小さな調査で、証拠の確かさはすべて「非常に低い」と評価されています。
03 今日からできる小さな一歩せきで取れないとき、何をどの順番でする?
せきが出るうちはせきを続けてもらい、出なければ背中を5回、だめならお腹を5回。取れるまでくり返し、反応がなくなったら心臓マッサージに切りかえます。
「詰まった?」と聞き、せきを続けてもらう
声やせきが出るなら、できるだけ強くせきをするよう声をかけます。声もせきも出ず、うなずくだけなら重い詰まりです。まわりの人に119番を頼みます。
所要 数秒
前かがみにして、背中を5回強くたたく
後ろに立ち、片手で胸かお腹を支えて前かがみにさせます。もう片方の手のひらの付け根で、左右の肩甲骨の間を5回、すばやく強くたたきます [7]。
所要 10秒ほど
取れなければ、お腹を5回突き上げる
後ろから腕を回し、握りこぶしをおへそより少し上、みぞおちより下に当てます。もう片方の手でこぶしを包み、内側・上向きにすばやく引き上げます。妊娠中の人や、腕が回らない人は、胸の真ん中を押す方法にします [7]。
所要 10秒ほど
取れるまで「背中5回・お腹5回」をくり返す
1回で取れなくても、それがふつうです。反応がなくなったら床に寝かせ、心臓マッサージを始めます [7]。救急車が着くまで続けます。
所要 救急隊が着くまで
04 続けるためのコツうまくできなかったとき、次にどう備える?
日本の研究では、手当てがされなかった例は、家の外や、目撃した人が高齢のときに多めでした。手順を一度声に出して練習しておくと、いざというときに手が動きやすくなります。
- 目撃された窒息325件のうち、手当てがされなかったのは41%でした。手当てがされた割合は、介護施設で82%、家で52%、外の店などで43%です [4]。
- 目撃した人の年齢が10歳上がるごとに、手当てがされにくくなっていました(オッズ比1.39) [4]。高齢の家族と暮らす人は、家族どうしで手順を確かめておくとよいでしょう。
- 手当てのあとは、取れても受診します。お腹を突き上げた24人のうち1人に、肺の空気もれ(気胸)が起きていました [1]。
- 予防も大切です。ひと口を小さくして、ゆっくりかむ食べ方は早食いを直す研究の記事にまとめています。
- ペットがチョコを食べた、お腹を壊したなど、食べもののあとの困りごとは犬がチョコを食べたときの記事や吐いた・下痢したあとの記事も参考にしてください。
05よくある質問
背中を何回たたいても取れないときは、どうする?
5回たたいても取れなければ、お腹の突き上げを5回します。それでも取れなければ、背中5回とお腹5回をくり返します。日本の研究では、最初の方法1つで取れたのは3割ほどでした。1回で取れなくても、くり返すのがふつうです。
お腹を突き上げたあと、病院に行ったほうがいい?
行ったほうが安心です。お腹の突き上げや背中をたたく方法では、体を傷めた報告がまれにあります。日本の研究では、お腹を突き上げた24人のうち1人に肺の空気もれ(気胸)が起きていました。取れたあとも、したことを救急隊や医師に伝えてください。
詰まった人がせきをできているときは、背中をたたく?
せきや声が出ているうちは、まず強くせきをするよう声をかけます。シンガポールの蘇生ガイドラインでも、せきや会話ができるならせきを続けてもらい、声もせきも出ないときに背中をたたく手順になっています。
お餅だけが特別に危ない?
日本の研究では、お餅で詰まった人は全体の約16%でした。ほかの食べものと比べて、1か月後に生きていた割合に統計的な差は見られませんでした。ただし推定の幅は広く、お餅は正月に家で詰まる例が多いと報告されています。
出典
- Igarashi Y, Norii T, Nakae R, Tagami T, Sklar DP, Yokobori S (2025). Efficacy of abdominal thrusts and back blows for patients with foreign body airway obstruction: MOCHI registry analysis. Resuscitation Plus, 25, 101016. https://doi.org/10.1016/j.resplu.2025.101016
- Norii T, Igarashi Y, Yoshino Y, et al. (2024). The effects of bystander interventions for foreign body airway obstruction on survival and neurological outcomes: Findings of the MOCHI registry. Resuscitation, 199, 110198. https://doi.org/10.1016/j.resuscitation.2024.110198
- Igarashi Y, Norii T, Nakanishi H, et al. (2026). Airway obstruction time and outcomes after foreign body airway obstruction: a nationwide prospective cohort study from the MOCHI registry. Resuscitation, 220, 111002. https://doi.org/10.1016/j.resuscitation.2026.111002
- Igarashi Y, et al. (2026). Determinants of bystander removal attempts in witnessed foreign body airway obstruction: a prospective nationwide multicenter observational study from the MOCHI registry. Resuscitation Plus, 29, 101342. https://doi.org/10.1016/j.resplu.2026.101342
- Igarashi Y, Norii T, Nakanishi H, et al. (2026). Mochi-related vs other food-related foreign body airway obstruction: outcomes from the MOCHI registry. Resuscitation Plus, 28, 101257. https://doi.org/10.1016/j.resplu.2026.101257
- Couper K, Abu Hassan A, Ohri V, et al. (2020). Removal of foreign body airway obstruction: A systematic review of interventions. Resuscitation, 156, 174-181. https://doi.org/10.1016/j.resuscitation.2020.09.007
- Lim SH, Leong BSH, et al. (2026). Singapore Basic Cardiac Life Support and Automated External Defibrillation Guidelines 2026. Singapore Medical Journal, 67(7), 406-413. https://doi.org/10.4103/singaporemedj.SMJ-2026-319


