気分・ストレス

作り笑いでも気分は上がるのか。
138件の研究から読み解く笑顔の効果

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Interior of Theatro Circo, Braga, Portugal.
Photo: Joseolgon / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

気持ちが落ち込んでいるとき、「とりあえず笑ってみて」と言われても、作り笑いなんて意味がないと感じるかもしれません。笑顔が先か、気分が先か。この問いは100年以上、研究者の間で議論されてきました。公開された研究をたどると、作った表情にも気分を動かす力はあるものの、その大きさと条件には注意が必要だとわかります。

3行でわかる

  1. 11,000人以上を対象にした138件の研究をまとめた2019年の分析で、表情を作るだけでも気分が動くことが確認されました。ただし効果は小さめです。
  2. 2016年に17の研究室が同じ実験をやり直したところ、最初の研究ほど大きな効果は再現されませんでした。
  3. 目元まで動く「本物に近い笑顔」は、気分を上げたりストレスから早く回復したりする効果がより安定して見られています。

01「笑う→楽しくなる」のか、「楽しい→笑う」のか

表情が感情を後から動かすという考え方を「顔面フィードバック仮説」と呼びます。作り笑いにも、小さいながら気分を動かす力があるとされています。

気分が落ち込むと、自然に顔の表情も沈みます。この順番は当たり前に思えますが、心理学では逆方向、つまり「表情が先にあると、感情も後からそれに引っ張られる」という考え方が議論されてきました。これを顔面フィードバック仮説(かおの表情が感情に影響するという考え方)と呼びます。

1988年には、ペンを歯でくわえて笑顔に近い状態を作ったグループが、くちびるでくわえて笑えない状態を作ったグループより、同じ漫画をより面白く感じたという実験結果が報告されました。この研究は長く「表情が感情を作る」証拠として紹介されてきましたが、後の検証でその大きさが見直されることになります。

02科学的にわかっていること

138件の研究をまとめた分析では、表情を作る効果は「小さいが確かにある」とされました。再現実験では効果がはっきり出ない場合もありました。

Coles, Larsen, Lench(2019)[1]

138件の研究・計286通りの比較データをまとめたところ、表情を作る効果は統計的に意味のある差として確認されましたが、大きさは小さく、研究によって結果にばらつきがありました。

対象: 138件の研究・11,000人以上のデータをまとめた分析 / 限界: 効果の大きさは研究ごとに差があり、「表情を作れば誰でも同じだけ楽になる」とは言えない

Wagenmakerら(2016)[2]

1988年の元の実験を17の研究室が同じ手順でやり直したところ、元の研究で報告された評価の差(10点満点中0.82点)に対し、まとめた結果はわずか0.03点(95%の確率で-0.11〜0.16点の範囲)でした。

対象: 17の研究室による再現実験 / 限界: ペンをくわえる方法では「本当に笑顔になっているか」を確認しにくく、効果が薄れた可能性も指摘されている

Soussignan(2002)[3]

目元の筋肉まで動く「本物に近い笑顔」を作れた人は、楽しい場面やコミカルな映像を見たときに、より強いポジティブな感情を報告しました。

対象: 若い成人を対象にした実験 / 限界: 単純な作り笑いより、目元まで動く笑顔の方が効果が出やすいことを示す一方、誰でも意図的に再現できるとは限らない

Kraft と Pressman(2012)[4]

170人を対象にした実験で、ストレスのかかる作業中に表情(本物に近い笑顔・ふつうの笑顔・無表情)を変えてもらったところ、笑顔のグループは無表情のグループより、作業後の心拍数の回復が早いという結果でした。

対象: 大学生170人 / 限界: 心拍数という身体の指標での結果であり、本人が「楽になった」と感じたかどうかとは別の指標

03今日からできる小さな一歩

口元だけでなく、頬や目元も一緒に上げるように笑うと、気分を動かす効果が出やすいとされています。無理に笑えない日は休んでかまいません。

1

鏡の前で笑ってみる

口角だけでなく、頬を持ち上げて目を少し細めるように。本物の笑顔に近い形を探す練習です。

所要 30秒

2

ストレスを感じた作業の後に笑顔を保つ

Kraft と Pressman(2012)の実験に近い形で、作業の合間に笑顔を続けてみる。心拍数が落ち着く助けになるとされています。

所要 1分

3

笑えない日は、笑うことを目標にしない

効果は小さく、個人差もあります。笑えない日に無理をする必要はありません。散歩や深呼吸など別の方法に切り替えましょう。

所要 0分

04続けるためのコツ

「笑えば必ず楽になる」と期待しすぎないこと。小さな効果の積み重ねとして捉えると続けやすくなります。

05よくある質問

作り笑いだけで元気になれますか?

2019年に138件の研究をまとめた分析では、表情を作ることで気分が動く効果が確認されましたが、大きさは小さいものでした。作り笑いだけに頼るのではなく、他の気分の整え方と組み合わせるのが現実的です。

「笑う→楽しくなる」という実験は本当に正しいのですか?

1988年の実験では効果がありましたが、2016年に17の研究室が同じ方法でやり直したところ、最初の研究ほど大きな差は見られませんでした。笑顔が気分に与える効果は、方法や状況によって変わると考えられています。

どんな笑い方が効果的ですか?

口角だけでなく、頬や目元まで動く「本物に近い笑顔」の方が、気分を上げたりストレスから回復したりする効果がより安定して見られています。

この記事は一般的な情報で、診断や治療の代わりではありません。気分の落ち込みが長く続くときは、医師や相談機関に相談してください。

出典

  1. Coles NA, Larsen JT, Lench HC. (2019). A meta-analysis of the facial feedback literature: Effects of facial feedback on emotional experience are small and variable. Psychological Bulletin, 145(6), 610-651. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30973236/
  2. Wagenmakers EJ, et al. (2016). Registered Replication Report: Strack, Martin, & Stepper (1988). Perspectives on Psychological Science, 11(6), 917-928. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27784749/
  3. Soussignan R. (2002). Duchenne smile, emotional experience, and autonomic reactivity: A test of the facial feedback hypothesis. Emotion, 2(1), 52-74. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12899366/
  4. Kraft TL, Pressman SD. (2012). Grin and bear it: The influence of manipulated facial expression on the stress response. Psychological Science, 23(11), 1372-1378. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23012270/