咳にはちみつは効く? 子どもの夜の咳を調べた研究と「1歳未満はだめ」の理由

かぜをひいた子どもが夜に咳きこんで眠れない。そんなとき「はちみつがいい」と聞いたことのある人は多いはずです。研究の答えは「1歳以上の子どものかぜの咳なら、何もしないより少し楽になる」です。効果は市販の咳止めの成分と同じくらいでした。ただし多くは1晩だけの試験で、1歳未満の赤ちゃんには与えません。
3行でわかる
- 子ども899人・6試験をまとめたコクラン・レビューでは、はちみつは何もしない場合や偽物(プラセボ)より、咳の回数を減らす可能性が高いと判定されました。
- 咳止めの成分デキストロメトルファンとは、ほとんど差がありませんでした。2026年のまとめでも、薬との比べ合わせはほとんどの項目で差が出ていません。
- 1歳未満には与えません。世界の調査で、はちみつの4%(4,310検体中173検体)から乳児ボツリヌス症の原因菌が見つかっています。
01 悩みの正体なぜ「咳にはちみつ」と言われるの?
はちみつは昔から咳の民間療法として使われてきました。かぜの咳はほとんどがウイルスによるもので、抗生物質は効きません。そのため、手軽に咳を和らげる方法として研究されてきました。
かぜなどによる咳の多くは、ウイルスが原因です [1]。夜の咳は、子どもだけでなく、そばで眠る親の睡眠も削ります [1]。
一方で、市販の咳止めは子どもへの効果がはっきりせず、まれに重い副作用も報告されています [1]。そこで「家にある、安いもの」として、はちみつが研究の対象になりました。はちみつには、菌の増殖を抑える働きや炎症を抑える働きがあると考えられています [1]。
ただし、試験管で菌が減ることと、飲んで咳が楽になることは別の話です。ここからは、実際に子どもに飲んでもらった試験を見ていきます。
02 科学的にわかっていることはちみつで子どもの咳は本当に楽になる?
1歳以上の子どものかぜの咳では、何もしない場合や偽物より楽になる可能性が高いです。咳止めの成分とはほぼ同じでした。効果は、ほとんどが1晩だけの試験で確かめられています。
| 比べた相手 | 咳の回数(7段階の点数) | 判定 |
|---|---|---|
| 何もしない(2試験・154人) | はちみつで1.05点低い [1] | はちみつのほうが楽 |
| 偽物(2試験・402人) | はちみつで1.62点低い [1] | はちみつのほうが楽 |
| 咳止めの成分デキストロメトルファン(2試験・149人) | 差は0.07点 [1] | ほぼ同じ |
Oduwoleら(2018、コクラン・レビュー)[1]
1歳から18歳の子ども899人が参加した6つの試験をまとめました。はちみつは、何もしない場合や偽物より咳の回数を減らす可能性が高いと判定されています(確かさは「中程度」)。抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンより良い可能性もありました。咳止めの成分デキストロメトルファンとは、ほとんど差がない可能性があります。
対象: イラン・イスラエル・米国・ブラジル・ケニアの6試験 / 限界: ほとんどの子どもは1晩だけの投与でした。3日を超えると、偽物などとの差はなくなりました。胃腸の症状を訴えた子は、はちみつ群34人(12%)、偽物群13人(11%)でした。
Cohenら(2012、イスラエル)[5]
1〜5歳の子ども300人に、寝る前30分以内に3種類のはちみつのどれか、または見た目と味の似たデーツのシロップ(偽物)を10g与えました。どのグループも前の晩より咳は軽くなりました。それでも、はちみつのグループのほうが改善は大きく、親の評価も高くなりました。
対象: 6つの小児科診療所に来た、咳が7日以内の子ども / 限界: 1晩だけの試験です。研究費の一部はイスラエルのはちみつ協会から出ています。
Paulら(2007、米国)[4]
2〜18歳の子ども105人に、寝る前30分にそばのはちみつ、はちみつ味の咳止め、何もなしのどれかを1回与えました。親の評価では、はちみつがいちばん良く、何もなしがいちばん悪い結果でした。咳止めは、何もなしと比べてどの項目でも差が出ませんでした。
対象: 1つの小児科に来た子ども / 限界: 「何もなし」のグループは自分がどれかを知っていました。研究費は米国のはちみつ業界団体から出ています。
Brunら(2026、ブラジル)[3]
はちみつと咳の薬を比べた7つの試験をまとめ、576人分を分析しました。すべての試験を合わせると、ほとんどの項目で差は出ませんでした。子どもの睡眠への影響だけは、はちみつのほうが小さくなりました。結果を大きくゆらしていた1試験を外すと、すべての項目ではちみつが上回りました。
対象: 平均3〜5歳の子ども、観察は最長3日 / 限界: 1試験を外す分析は後から決めたもので、著者らは「仮説を立てる材料」と位置づけています。
Abuelgasimら(2021、英国)[2]
かぜなど上気道の感染症に対するはちみつの14研究をまとめました。ふだんの治療だけより、咳の回数(8研究)と咳の強さ(5研究)が軽くなりました。一方、偽物と比べた2研究をまとめると、はっきりした差は出ませんでした。
対象: 子どもと大人の研究のまとめ(はちみつ入りシロップの研究も含む) / 限界: 研究の偏りのリスクは「中程度」で、著者らは偽物と比べる質の高い試験がもっと必要だとしています。
まとめると、はちみつは「何もしないよりは少し楽」「市販の咳止めの成分と同じくらい」と言えます。ただし、親が評価する点数での比較で、多くは1晩だけの結果です。咳が早く治るかどうかは、まだはっきりしていません。
03 今日からできる小さな一歩はちみつはいつ、どのくらい試せばいい?
研究と同じなら、1歳以上の子どもに寝る前30分以内、1回2.5〜10mL程度です。1歳未満には与えず、苦しそうなときや長引くときは受診を優先します。
まず年齢を確かめる
1歳未満の赤ちゃんには与えません。はちみつ入りのお菓子や飲みものも同じです [6]。
所要 数秒
寝る前30分以内に1回
多くの試験は、寝る前に1回だけ与えています。量は試験によって1回2.5〜10mLで、小さい子ほど少なめでした [3]。そのままでも、カフェインのない飲みものに混ぜてもかまいません [1]。
所要 1分
歯をみがいてから寝る
はちみつは糖分です。寝る前に与えたら、口をゆすぐか歯みがきをしてから寝かせます。
所要 3分
04 続けるためのコツはちみつで気をつけることは?
気をつけたいのは、1歳未満に与えないこと、何日も続けすぎないことです。はちみつに頼りきらず、咳以外の様子も見ます。
- 1歳未満は絶対に与えない: 米国小児科学会が1981年に乳児へのはちみつを控えるよう呼びかけてから、はちみつによる乳児ボツリヌス症は大きく減りました [6]。
- 効果が見えるのは最初の数日: 3日を超えると、偽物などとの差はなくなりました [1]。長引く咳は、はちみつでなく受診を考える合図です。
- 胃腸の様子を見る: 胃腸の症状を訴えた子は、偽物よりはちみつのほうがやや多い結果でした [1]。
- 体を休めて水分をとる: 胃腸のかぜのときの水分のとり方は、胃腸炎のあとの水分と食事の記事にまとめています。
寝る前の温かい飲みものについては、カモミールティーで眠れるかを調べた記事もあります。
05よくある質問
赤ちゃんの咳にはちみつをあげてもいい?
1歳未満の赤ちゃんには与えません。はちみつには、乳児ボツリヌス症の原因になる菌の芽胞(種のようなもの)が混じっていることがあります。世界の調査では、はちみつ4,310検体のうち173検体(4%)から見つかりました [6]。咳の研究も1歳以上の子どもだけを対象にしています [1]。
はちみつはどのくらい、いつ飲ませた研究?
多くの試験は、寝る前30分以内に1回だけ与えています。量は試験によって1回2.5〜10mLで、年齢で量を変えた試験もありました [3]。300人の試験では10gを1回与えています [5]。
大人の咳にもはちみつは効く?
大人も含めたかぜなどの14研究のまとめでは、ふだんの治療だけより咳の回数と強さが軽くなりました。ただし、偽物(プラセボ)と比べた2研究では、はっきりした差は出ていません [2]。
はちみつは市販の咳止めの代わりになる?
子どもの試験のまとめでは、咳止めの成分デキストロメトルファンとの差はほとんどありませんでした [1]。2026年のまとめでも、薬との比べ合わせはほとんどの項目で差がありませんでした [3]。薬を飲んでいるときや症状が重いときは、医師や薬剤師に相談してください。
出典
- Oduwole O, Udoh EE, Oyo-Ita A, Meremikwu MM (2018). Honey for acute cough in children. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD007094. https://doi.org/10.1002/14651858.CD007094.pub5
- Abuelgasim H, Albury C, Lee J (2021). Effectiveness of honey for symptomatic relief in upper respiratory tract infections: a systematic review and meta-analysis. BMJ Evidence-Based Medicine, 26(2), 57-64. https://doi.org/10.1136/bmjebm-2020-111336
- Brun MT, Braga MCAV, Grunewald STF (2026). Honey vs. pharmacological treatment for acute cough in children: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. European Journal of Pediatrics, 185. https://doi.org/10.1007/s00431-026-07348-w
- Paul IM, Beiler J, McMonagle A, et al. (2007). Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine, 161(12), 1140-1146. https://doi.org/10.1001/archpedi.161.12.1140
- Cohen HA, Rozen J, Kristal H, et al. (2012). Effect of honey on nocturnal cough and sleep quality: a double-blind, randomized, placebo-controlled study. Pediatrics, 130(3), 465-471. https://doi.org/10.1542/peds.2011-3075
- Harris RA, Dabritz HA (2024). Infant Botulism: In Search of Clostridium botulinum Spores. Current Microbiology, 81, 306.(カナダ保健省・カリフォルニア州公衆衛生局の研究者によるレビュー) https://doi.org/10.1007/s00284-024-03828-0


