夕方にうたた寝すると、夜に眠れなくなるのはなぜ?「眠気のたまり方(睡眠圧)」の研究で調べた

夕方にソファでうとうとしたら、夜になって目がさえて眠れない。そんな経験はありませんか。原因の1つは、起きている間にたまる「眠気のもと(睡眠圧)」が、うたた寝で使われてしまうことです。夜の寝つきが悪くなるのは、意志や性格の問題ではなく、眠りを調整する仕組みどおりの反応だと考えられています。
3行でわかる
- 眠気は、起きている時間が長いほど強くなり、眠ると減る。この「睡眠圧」が、夜に眠りに入る力のもとになる。
- 夕方に仮眠をとった若い男性の実験では、その夜は寝つくまでの時間が長くなり、深い眠りの脳波も弱まった。夕方の仮眠で睡眠圧が減ったためと説明されている。
- 62人を8日間記録した研究では、夜の睡眠の7時間以内にとった「遅い仮眠」が、寝つきの悪さや夜中の目覚めの多さと関係していた。15時までに終わる昼寝では、夜の睡眠に差が出なかった実験もある。
01 悩みの正体夕方のうたた寝で夜眠れないのはなぜ?
起きている間にたまった睡眠圧が、夕方のうたた寝で一部解消されるためです。夜の寝る時刻になっても眠気が足りず、寝つくまでに時間がかかります。
眠りのタイミングは、主に2つの仕組みで決まると考えられています。これは「2過程モデル」と呼ばれ、約30年にわたって睡眠研究の土台になってきました[1]。
| 仕組み | どう働く? |
|---|---|
| 睡眠圧(プロセスS) | 起きている時間が長いほどたまり、眠ると減っていく「眠気のもと」[1] |
| 体内時計(プロセスC) | 1日のリズムで、眠りやすい時間帯と目がさえる時間帯をつくる[1] |
朝起きてから夜まで、睡眠圧は少しずつたまっていきます。ふつうは寝る時刻にちょうど強くなり、すっと眠りに入れます。ところが夕方にうたた寝をすると、そこで睡眠圧が減ってしまいます。いわば、夜のために貯めておいた眠気を先に使ってしまう状態です。
夜は体内時計の働きもあって、もともと目がさえやすい時間帯があります。早く寝ようとしても眠れない仕組みは「睡眠禁止帯」の研究で紹介しています。
02 科学的にわかっていること夕方の仮眠は、夜の眠りをどう変える?
夕方に仮眠をとった夜は、寝つくまでの時間が長くなり、深い眠りの脳波が弱まりました。夜に近い時間の仮眠ほど、夜の眠りの質の低さと関係していました。
Werthら(1996)[2]
健康な若い男性が夕方の早い時間に仮眠をとり、その夜の睡眠を脳波で記録しました。仮眠をとらなかった夜とくらべると、仮眠の後の夜は寝つくまでの時間が長くなりました。深い眠りで強く出る脳波(徐波活動)も、眠りの前半で弱まりました。著者らは、こうした変化は仮眠で睡眠圧が減ったことでほぼ説明できると結論づけています。
対象: 健康な若い男性 / 限界: 実験室での研究で、女性や年齢の高い人はふくまれていません。
Porkka-Heiskanenら(1997)[3]
睡眠圧の正体の候補として、脳内の物質アデノシンを調べました。ネコの脳で測ると、アデノシンは起きている間に増え、起き続けるとさらに増え、その後の眠りの間にゆっくり減りました。
対象: ネコ / 限界: 動物の実験です。人の睡眠圧がすべてアデノシンで説明できるわけではありません。
7時間以内
夜の睡眠までの間隔がこれより短い「遅い仮眠」は、夜の眠りの質の低さと関係していた(62人の8日間の記録)[4]
Mograssら(2022)[4]
健康な若い大人62人(平均23.5歳)の睡眠を、手首につける機器で8日間記録しました。夜の睡眠の7時間以内にとった「遅い仮眠」は、7時間以上前の仮眠にくらべ、夜の睡眠の質の低さと関係していました。8日間に3回以上仮眠をとった人は、夜の眠りが細かく途切れやすい傾向もありました。仮眠の長さ(60分以下か、それより長いか)では、差は出ませんでした。
対象: 健康な若い大人62人 / 限界: 観察研究のため、仮眠が原因で夜の眠りが悪くなったのか、夜によく眠れない人が仮眠をとるのかは区別できません。
Boukhrisら(2026)[5]
大学生アスリート14人が、仮眠なし、25分の仮眠(14:35〜15:00)、90分の仮眠(13:30〜15:00)の3条件を順番に試しました。どの条件でも、その夜の寝る時刻、起きる時刻、睡眠時間、夜中の目覚めに差は出ませんでした。夜の睡眠時間の平均は、仮眠なしで7時間13分、25分の仮眠で7時間5分、90分の仮眠で7時間1分でした。
対象: 大学生アスリート14人(平均23歳) / 限界: 少人数で、よく体を動かす人が対象です。著者らも、ほかの人や夕方の仮眠に当てはまるかは、さらに調べる必要があるとしています。
03 今日からできる小さな一歩夕方に眠くなったら、どうすればいい?
夕方の眠気は、座ったままにせず体を動かしてやり過ごします。どうしても仮眠するなら、早い午後に短くとります。うたた寝してしまった夜は、眠くなるまで布団に入らないようにします。
夕方に眠くなったら、立って体を動かす
ソファに座ったままだと、うとうとしやすくなります。食器を洗う、少し歩くなど、立ってできる用事を先に入れます(研究の結果をもとにした目安です)。
所要 5〜10分
仮眠をとるなら、早い午後にする
15時までに終わる昼寝では、夜の睡眠に差が出なかった実験があります[5]。夜の睡眠まで7時間以上あけるのが1つの目安です[4]。昼寝の長さは昼寝は何分がいいかの研究を参考にしてください。
所要 10〜25分
うたた寝した夜は、眠くなってから布団に入る
睡眠圧が減っている夜に、いつもの時刻に布団で待つと、眠れずに焦りやすくなります。眠気が来るまで、明るすぎない部屋で静かに過ごします。布団で眠れないときの対処は眠れないときに布団を出る研究で紹介しています。
所要 その日の眠気しだい
翌朝は、いつもの時刻に起きる
寝つきが遅れた分を朝寝坊で取り戻すと、次の夜の睡眠圧がまた足りなくなります。起きる時刻をそろえると、その日の夜に眠気がたまりやすくなります。
所要 0分(目覚ましをそのままに)
04 続けるためのコツ夕方に眠くならないためには?
夕方の強い眠気は、夜の睡眠不足のサインのことがあります。夜の睡眠時間を確保し、夕方以降のカフェインは控えめにします。
- 夕方に毎日のように眠くなるなら、夜の睡眠時間が足りていないか見直す。
- 眠気覚ましのコーヒーは夕方遅くに飲まない。カフェインは、アデノシンの働きを妨げることで眠気を感じにくくすると考えられています。何時間前までなら大丈夫かはカフェインの研究を参考にしてください。
- 昼食後の眠気の仕組みは昼の眠気の研究で紹介しています。昼に眠いときと夕方に眠いときでは、対処が違います。
- 夜に眠れない日が長く続く、日中の眠気が強すぎて生活に困るときは、睡眠の専門の医療機関に相談してください。
05よくある質問
夕方にうたた寝すると、なぜ夜眠れなくなるのですか?
起きている間にたまる「睡眠圧」が、うたた寝で減ってしまうためです。Werthら(1996)の実験では、夕方に仮眠をとった夜は寝つくまでの時間が長くなり、深い眠りの脳波も弱まりました。
何時までの昼寝なら、夜の睡眠に影響しにくいですか?
大学生アスリート14人の実験では、15時までに終わる25分や90分の昼寝で、その夜の睡眠に差は出ませんでした。62人の記録では、夜の睡眠の7時間以内にとる仮眠が、夜の眠りの質の低さと関係していました。
夕方に寝てしまった日は、早めに布団に入ったほうがいいですか?
睡眠圧が減っているため、早く布団に入っても眠れない可能性があります。眠気が来てから布団に入り、翌朝はいつもの時刻に起きると、次の夜に眠気がたまりやすくなります。
出典
- Borbély, A. A., Daan, S., Wirz-Justice, A., & Deboer, T. (2016). The two-process model of sleep regulation: a reappraisal. Journal of Sleep Research, 25(2), 131-143. https://doi.org/10.1111/jsr.12371
- Werth, E., Dijk, D. J., Achermann, P., & Borbély, A. A. (1996). Dynamics of the sleep EEG after an early evening nap: experimental data and simulations. American Journal of Physiology, 271(3), R501-R510. https://doi.org/10.1152/ajpregu.1996.271.3.r501
- Porkka-Heiskanen, T., Strecker, R. E., Thakkar, M., Bjorkum, A. A., Greene, R. W., & McCarley, R. W. (1997). Adenosine: a mediator of the sleep-inducing effects of prolonged wakefulness. Science, 276(5316), 1265-1268. https://doi.org/10.1126/science.276.5316.1265
- Mograss, M., Abi-Jaoude, J., Frimpong, E., Chalati, D., Moretto, U., Tarelli, L., Lim, A., & Dang-Vu, T. T. (2022). The effects of napping on night-time sleep in healthy young adults. Journal of Sleep Research, 31(5), e13578. https://doi.org/10.1111/jsr.13578
- Boukhris, O., Suppiah, H., & Driller, M. (2026). The influence of 25- and 90-min afternoon nap opportunities on subsequent nighttime sleep in student athletes. Journal of Sleep Research, 35(1), e70120. https://doi.org/10.1111/jsr.70120


