床に落とした食べもの、「3秒ルール」なら大丈夫? 細菌がうつる速さを研究で調べた

おやつを床に落として、思わず「3秒ルール!」と拾った経験はありませんか。研究の答えは「当てにならない」です。細菌は1秒未満でも食べものに移っていました。時間が長いほど移る量が増えるのは本当ですが、それ以上に、食べものが湿っているか、床がどんな素材かで結果が大きく変わります。
3行でわかる
- 2,560回の測定をした2016年の研究では、1秒未満でも細菌が食べものに移っていました。著者らは3秒(5秒)ルールを「大きすぎる単純化」と結論づけています。
- 移る量を大きく左右したのは、時間より食べものの湿り気と床の素材でした。スイカは最大約97%、グミは最大約62%。カーペットからはあまり移りませんでした。
- サルモネラ菌は乾いた床でも最大4週間生き残りました。濡れた食べものや、汚れていそうな床に落ちたものは、秒数にかかわらず捨てるのが無難です。
01 悩みの正体「3秒ルール」は、なぜ信じられている?
3秒ルールは「細菌が食べものに移るには時間がかかる」という思い込みから生まれた言い伝えです。英語圏では「5秒ルール」と呼ばれ、研究もこの名前で行われています。
床に落ちたものをすぐ拾えば、汚れはまだ付いていない。そう考えるのは自然です。目に見えるほこりは、すぐ拾えばあまり付きません。
ただ、食中毒の原因になる細菌は目に見えません。2016年の論文によると、アメリカでは食中毒の集団発生のおよそ12%に、調理台などの表面からの「うつり」がかかわっていました。表面から食べものへ細菌が移るのは、それだけよくある経路です。
では、何秒で移るのでしょうか。これを本格的に確かめた研究は、意外に少ししかありません。
02 科学的にわかっていること3秒以内に拾えば、細菌は付かない?
3秒以内でも細菌は付きます。2016年の研究では1秒未満でも移っていました。時間が長いほど移る量は増えますが、食べものの湿り気と床の素材のほうが、同じかそれ以上に効いていました。
| 落としたもの | 床から移った細菌の割合(条件しだいの幅) |
|---|---|
| スイカ(切ったもの) | 約0.2〜97%。最も多く移った [1] |
| 食パン | 約0.02〜94% [1] |
| バターを塗った食パン | 約0.02〜82% [1] |
| グミ | 約0.1〜62%。最も少なかった [1] |
幅が大きいのは、床の素材と落ちていた時間で結果が変わるからです。ステンレス・タイル・木の床からは多く移り、カーペットからは少ししか移りませんでした。
Miranda & Schaffner(2016、米ラトガース大学)[1]
床の素材4種(ステンレス・タイル・木・カーペット)、食べもの4種、時間4通り(1秒未満・5秒・30秒・300秒)を組み合わせ、各20回、計2,560回測りました。1秒未満でも細菌は移っていました。時間が長いほど移る量は増えましたが、スイカは時間によらず多く移りました。著者らは5秒ルールを「実際に起きていることの大きすぎる単純化」と結論づけています。
条件: 病気を起こさない細菌を、5cm四方の床材に約1,000万個付けて5時間乾かし、12.5cmの高さから食べものを落としました / 限界: 実験室の結果で、ふつうの家の床よりずっと多い菌を付けています。
Dawsonら(2007、米クレムソン大学)[2]
サルモネラ菌は、乾いたタイルの上でも28日後まで、食べものに移るのに十分な数が残っていました。タイルにソーセージ(ボローニャ)を5秒置くと、99%を超える菌が移りました。カーペットからは0.5%未満で、木やタイル(5〜68%)よりずっと少なかったです。
限界: 置いた時間(5・30・60秒)で移る量が増えたのは、菌を付けてから8時間以上たった床だけでした [1]。条件によっては時間の差が出ない、ということです。
Jensenら(2013)[3]
菌が付いたばかりの台の上に切った野菜や果物を置くと、ほぼ毎回90%を超える菌が移りました。1時間乾かした台でも、ニンジンとスイカでは中央値で90%を超えて移りました。セロリとレタスでは1%未満〜約70%でした。著者らは、移る量を最も左右するのは「表面の湿り気」だとまとめています。
対象: 陶器・ステンレス・ガラス・プラスチックの台。床に落とす実験ではありません。
03 今日からできる小さな一歩床に落とした食べものは、どう判断すればいい?
秒数ではなく「何が・どこに落ちたか」で判断します。濡れたもの・べたつくものが硬い床に落ちたら、すぐ拾っても捨てるのが無難です。床の汚れがわからないときも、捨てる側に倒します。
秒数を数えるのをやめる
1秒未満でも移ることがわかっています。「3秒以内だから大丈夫」という判断の根拠にはなりません。
所要 0秒
湿ったもの・切った果物は捨てる
スイカのように水分の多いものには、ほぼ全部の菌が移ることがありました。ソースやバターが付いた面も同じです。
所要 5秒
落ちた場所を思い浮かべる
生の肉や魚の汁が落ちたかもしれない台所の床、靴で歩く玄関や屋外は避けます。乾いた菌でも何日も残ることがあるからです。
所要 5秒
迷ったら捨てる。食べる人によっては特に
小さな子ども、高齢の人、妊娠中の人、病気で抵抗力が落ちている人が食べるものは、迷ったら捨てるほうが安心です。
所要 5秒
04 続けるためのコツ落としても慌てないために、ふだんできることは?
落としたものを救う方法より、落ちる場所をきれいにしておくほうが確実です。調理台や台所の床は、乾いて見えても菌が数日残ることがあります。
- 台所の床と調理台をこまめにふく: ステンレスの台の上では、黄色ブドウ球菌が少なくとも4日残っていました。菌が多い台からキュウリや鶏肉には、20〜100%が移りました [4]。
- 生の肉を扱ったあとは、まわりもふく: 汁が床や台に落ちていると、あとで落とした食べものに移ります。
- おやつは皿や袋の上で: 床に直接落ちる回数そのものが減ります。
- 食べものの安全の関連記事: カレーを一晩おくときの冷まし方、お腹を壊したあとの食事と水分、賞味期限が切れたチョコも研究で調べています。
05よくある質問
3秒ルールは本当? 嘘?
当てにならない、が研究の答えです。2016年の研究では1秒未満でも細菌が食べものに移っていました。時間が長いほど多く移るのは本当ですが、食べものの湿り気と床の素材のほうが同じかそれ以上に影響していました。
カーペットに落としたものなら食べても大丈夫?
カーペットからは細菌があまり移りませんでした。2007年の研究では0.5%未満、2016年の研究でも最も少ない床でした。ただしゼロではなく、カーペットに付いた菌は掃除で取りにくいとも書かれています。安全と言い切れる根拠にはなりません。
落とした食べものを水で洗えば食べられる?
今回調べた範囲では、床に落とした食べものを洗うと菌がどれだけ減るかを確かめた研究は見当たりませんでした。切った果物や濡れたものは、洗うより捨てるほうが確実です。
床に落ちたお菓子を食べてしまったら、病気になる?
必ず病気になるわけではありません。どれだけ危ないかは、床にどんな菌がどれだけいたかで決まります。研究で使われたのは、ふつうの床よりずっと多い量の菌です。吐き気や下痢などが出たら、水分をとって様子を見て、つらい場合は医療機関に相談してください。
出典
- Miranda RC, Schaffner DW (2016). Longer Contact Times Increase Cross-Contamination of Enterobacter aerogenes from Surfaces to Food. Applied and Environmental Microbiology, 82(21), 6490-6496. https://doi.org/10.1128/AEM.01838-16
- Dawson P, Han I, Cox M, Black C, Simmons L (2007). Residence time and food contact time effects on transfer of Salmonella Typhimurium from tile, wood and carpet: testing the five-second rule. Journal of Applied Microbiology, 102(4), 945-953. https://doi.org/10.1111/j.1365-2672.2006.03171.x
- Jensen DA, Friedrich LM, Harris LJ, Danyluk MD, Schaffner DW (2013). Quantifying transfer rates of Salmonella and Escherichia coli O157:H7 between fresh-cut produce and common kitchen surfaces. Journal of Food Protection, 76(9), 1530-1538. https://doi.org/10.4315/0362-028X.JFP-13-098
- Kusumaningrum HD, Riboldi G, Hazeleger WC, Beumer RR (2003). Survival of foodborne pathogens on stainless steel surfaces and cross-contamination to foods. International Journal of Food Microbiology, 85(3), 227-236. https://doi.org/10.1016/S0168-1605(02)00540-8


