決められずに先延ばししてしまうのはなぜ?「選べない」「後悔したくない」決断の保留を研究で調べた

引っ越し先、買い替えるスマホ、受ける講座。どれにするか決めればすぐ進むのに、「もう少し考えてから」と保留したまま何週間もたってしまう。そんな経験はありませんか。決めることを後回しにするのは、意志が弱いからとは限りません。研究では、決断の保留が起きやすい条件がいくつもわかっています。その仕組みを整理します。
3行でわかる
- 決断を保留する理由として、研究のまとめでは「損得の計算」「予想される後悔」「選びにくさ」の3つが中心に挙げられています。
- 312人の実験では、締め切りまで余裕があると24%が決断を保留し、締め切りが迫っていると2%でした。選びにくいと感じる人や、もともと迷いやすい人も保留しやすくなりました。
- 「保留すれば後悔しない」とは言い切れません。13本の論文のメタ分析では、決断を先送りしても後悔が減るかははっきりしませんでした。
01 悩みの正体決められずに後回しにするのはなぜ?
決められずに先延ばしするのは、どれを選ぶか比べるのが難しい、選んで後悔したくない、急いで決める理由がない、といった条件が重なるためです。迷いやすい性格や完璧主義も関わります。
決断を先延ばしすることは、心理学では「選択の保留」と呼ばれます。決めないまま今の状態を続ける、何もしない、といった行動の仲間です [1]。
決めることは、それ自体が負担です。比べる手間がかかり、選ばなかった方を失い、外れたときに後悔するかもしれません。保留すれば、その負担をひとまず先に送れます。だから、決めにくい場面ほど保留が増えます。
| 保留が起きやすい条件 | 研究で見られたこと |
|---|---|
| 急いで決める理由がない | 締め切りに余裕があると保留24%、迫っていると2% [2] |
| 選びにくい | 選びにくいと感じるほど保留しやすい [2] |
| もともと迷いやすい | 優柔不断な人ほど保留しやすい [2]。完璧主義とも関連 [5] |
| 後悔したくない | 保留の大きな理由とされる [1]。ただし保留で後悔が減るかははっきりしない [3] |
| 選択肢が多すぎる | 保留が増える実験もあるが、起きるのは条件しだい [4] |
02 科学的にわかっていること決断の先延ばしはどんなときに起きる?
決断の保留は、締め切りに余裕があるとき、選びにくいとき、迷いやすい人で起きやすいことが示されています。選択肢の多さの影響は条件しだいで、保留で後悔が減るともいえません。
Anderson(2003)[1]
人が決断を避ける理由を、いくつもの分野の研究から整理したレビューです。決断を先に延ばす、今のままにする、行動しない、一度逃した機会をその後も見送り続ける、という4つの「決断の回避」をまとめました。共通する理由として、損得の計算、予想される後悔、選びにくさの3つを中心に置いたモデルを示しています。決める前の不安や、自分の好みがはっきりしないことも、これらを通して回避を強めるとしています。
対象: 複数の分野の研究 / 限界: 研究を整理したレビューで、数字をまとめる分析はしていない。
Berens・Funke(2020)[2]
ドイツの大学生を中心とする312人に、授業選びなど学生生活の8つの場面を読んでもらい、「決める」「保留する」「どちらも選ばない」から選んでもらいました。締め切りに余裕がある場面では24%が保留し、締め切りが迫っている場面では2%でした。選びにくいと感じた人や、ふだんから優柔不断な人も、保留を選びやすくなりました。情報が足りないかどうかは、全体としては保留にほとんど影響しませんでした。
対象: 312人(平均23.8歳、93.6%が学生) / 限界: 文章で読んだ場面での回答で、実際の決断を観察したものではない。
Hanら(2023)[3]
決断を避けると後悔が減るのかを、13本の論文・59の結果からまとめたメタ分析です。全体では、避けた方が後悔が少ない傾向はあったものの、はっきりした差ではありませんでした。はっきり後悔が減ったのは「今のままにする」場合だけで、決断を保留する場合の効果はよくわかりませんでした。前に同じ選び方で悪い結果になっていた場合は、避けるとかえって後悔が強くなりました。
対象: 13本の論文の59の結果 / 限界: 研究の数が少なく、保留だけを調べた研究はさらに限られる。
Misuracaら(2024)[4]
「選択肢が多すぎると選べなくなる」現象の研究を整理したレビューです。有名なスーパーの実験では、24種類のジャムを並べた売り場に足を止めた人の3%しか買わず、6種類の売り場では30%が買いました。ただしその後のメタ分析で、この現象は特定の条件でしか起きないことがわかってきました。選択肢の複雑さ、決める作業の難しさ、自分の好みがはっきりしているか、などで変わるとしています。
対象: 選択肢の多さに関する研究 / 限界: 研究を言葉で整理したレビューで、条件ごとの効果の大きさは示していない。
Niら(2026)[5]
ネットでの買い物について、中国の611人にアンケートをとりました。完璧主義の傾向が強い人ほど、買う決断を保留しやすい関係がありました。その間には「よいものを逃したくない」という不安が入っていて、自分より上の人と比べがちな人ほど、この関係が強くなりました。
対象: 中国の611人(主に21〜30歳) / 限界: 一度のアンケートで関係を見たもので、完璧主義が保留を引き起こすとまでは言えない。
03 今日からできる小さな一歩決められない状態から抜けるには?
保留が起きやすい条件を1つずつ減らします。決める日を先に決め、比べるポイントを2〜3個にしぼり、「前に保留してどうだったか」を思い出してから選びます。
「いつまでに決めるか」を先に決める
締め切りが迫っている場面では、保留はわずか2%でした [2]。カレンダーに「〇日までに決める」と書きます。自分で決めた締め切りの研究は自分で締め切りを決めると先延ばしは減るかの記事にまとめています。
所要 1分
比べるポイントを2〜3個にしぼる
選びにくいと感じるほど保留が増えました [2]。「値段」「通いやすさ」など、本当に大事なポイントだけを紙に書き、それ以外は比べないことにします。
所要 5分
前に保留したときどうなったかを思い出す
前に同じ避け方で悪い結果になっていると、避けたときの後悔はかえって強くなりました [3]。「前に迷って先送りしたとき、得をしたか」を1つ思い出してから決めます。
所要 2分
04 続けるためのコツ迷いやすい自分とどうつきあう?
迷いやすさは性格の傾向の1つで、責める必要はありません。保留がすべて悪いわけでもないので、「情報を待つための保留」と「決めるのが怖いだけの保留」を分けて考えます。
- 保留には期限をつける: 保留そのものは悪くありません。ただし「いつ見直すか」を決めない保留は、ずるずる続きやすくなります。
- 「完璧な選択」を探しすぎない: 完璧主義と保留の関係が見られました [5]。完璧主義と先延ばしの研究は完璧主義は先延ばしを悪化させるかの記事で書いています。
- 大きな作業の先延ばしとは分けて考える: 決めたあとの作業そのものが進まないときは、先延ばしと感情の研究の記事も参考になります。
- 迷いが生活に支障をきたすときは相談する: 小さなことも決められない状態が長く続き、つらさが強いときは、専門家に相談してください。
05よくある質問
決められないのは優柔不断な性格のせい?
性格も関わりますが、それだけではありません。312人の実験では、優柔不断な人ほど保留しやすい一方で、締め切りに余裕があるかどうかの影響がとても大きく、余裕があると24%、迫っていると2%が保留しました。場面の条件を変えれば、保留は減らせます。
選択肢が多いと決められなくなるのは本当?
条件しだいです。24種類のジャム売り場では買った人が3%、6種類では30%だった有名な実験があります。ただしその後の研究のまとめでは、選択肢の多さで決められなくなるのは、比べるのが難しいときや、自分の好みがはっきりしないときなど、特定の条件に限られることがわかってきました。
決断を先延ばしすれば、後悔しなくてすむ?
そうとは言い切れません。13本の論文をまとめたメタ分析では、決断を避けて後悔がはっきり減ったのは「今のままにする」場合だけでした。保留の効果ははっきりせず、前に同じ避け方で悪い結果になっていると、後悔はかえって強くなりました。
出典
- Anderson, C. J. (2003). The psychology of doing nothing: Forms of decision avoidance result from reason and emotion. Psychological Bulletin, 129(1), 139-167. https://doi.org/10.1037/0033-2909.129.1.139
- Berens, S., & Funke, J. (2020). A vignette study of option refusal and decision deferral as two forms of decision avoidance: Situational and personal predictors. PLoS ONE, 15(10), e0241182. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0241182
- Han, Q., Quadflieg, S., & Ludwig, C. J. H. (2023). Decision avoidance and post-decision regret: A systematic review and meta-analysis. PLoS ONE, 18(10), e0292857. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0292857
- Misuraca, R., Nixon, A. E., Miceli, S., Di Stefano, G., & Scaffidi Abbate, C. (2024). On the advantages and disadvantages of choice: Future research directions in choice overload and its moderators. Frontiers in Psychology, 15, 1290359. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1290359
- Ni, Y., Cao, Y., Lin, H., Guo, T., & Wen, X. (2026). Perfectionism and choice deferral in online shopping: A moderated mediation model of fear of missing out and upward social comparison. Frontiers in Psychology, 17, 1809532. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1809532


